本作の原作は熱狂的な読者を世界に持つ安部公房が1973年に発表した同名小説。
今年2月に開催された第74回ベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映され、"今年1番クレイジーな映画"と言わしめた本作が初めて日本でお披露目されるとあって、多くの観客が詰めかけた同イベント。27年の歳月を経て本作の完成に辿り着いた石井監督は「本当に夢のようと言いますか、こんなに大勢のお客さんの前で出来たってことは私が箱の中に入って、箱の中で妄想を見る、夢を見ているような気分です」と語った。27年前、クランクイン前日に頓挫したことにも触れ、主演の永瀬が「監督がホテルの外を歩いて行かれる姿を偶然見てしまい、監督どうされるんだろうな? と思ったらこの映画を中止にしますと言われました。監督の後ろ姿は一生忘れられないですね」と赤裸々に明かした。
中止が決まってからドイツのスタッフが用意してくれたパーティーに参加したという永瀬と佐藤。永瀬が「その時に浩市さんからデートしようと言われ、あんなに緊張したデートは後先初めてだと思います。(パーティー会場から)離れたところでお話させていただき、浩市さんが『俺は棺桶に釘を打つ寸前だ。お前どうするんだ?』」と話し始めると、佐藤が「補足しますと、こういう形で映画がなくなった。自分の役を俺が棺桶に入れて埋めるよっていうニュアンスです。
27年前の『箱男』には参加してないものの、石井岳龍監督の多くの作品に出演している浅野。今回のオファーについては「当時監督たちがドイツに行って撮影しようとしていたのをお聞きしていたので、このタイミングでまた『箱男』があるというのは本当にビックリしました。皆さんの当時の辛い思いは抜きにして、この人たちだったら必ずやってくれるという安心感というか最初から完璧なものが用意された感じがしたので有り難かったです」と安心感があったという。
また、永瀬扮する"わたし"を誘惑する謎の女・葉子には、数百人のオーディションから白本が抜てきされた。「(受かった時は)絵に書いたようなガッツポーズと雄叫びを上げたのを覚えています。それからしばらくして沸々と実感が湧いてきて痺れるようなうれしさが込み上げてきました」と振り返った。日本を代表する名優たちに囲まれた現場では「私としては本当に恐縮しながら一緒にお芝居をさせていただくという気持ちでしたが、葉子を作っていく中で、これではダメだと感じ、私なりの葉子を監督と相談しながら作っていきました。それからは皆さんそれぞれの前で違う葉子として立てましたし、本当に違う刺激をいつも与えてくださる皆さんだったので、皆さんに活かしていただいたなと深く思っています」と永瀬らに感謝の言葉。すると石井監督は「期待以上の存在を示してくれたし、素晴らしい演技をしてくれました」と返していた。