パナソニック ホールディングス(HD)が7月31日に発表した2025年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算(国際会計基準)は純利益が前年同期比65%減の706億円だった。2023年3月末に事業を停止したパナソニック液晶ディスプレイの解散に伴う法人税費用の減少によって、前年同期は純利益が大幅にかさ上げされたが、その反動が出た。


売上高は5%増の2兆1217億円と、産業分野の生成AI関連などが好調で増収となった。一方で、生活家電や法人向けシステム、車載電池事業の減益により、営業利益は7%減の838億円、調整後営業利益は9%減の843億円と、いずれも減益となった。

同日の決算発表会に登壇した代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は「産業向け事業が好調。特に、コンデンサや多層基板材料といった生成AIサーバ向け製品が好調だった」と説明した。

車載電池事業に対する米国インフレ抑制法(IRA)に係る補助金の計上が、4~6月期の営業利益を162億円押し上げた。IRAは、米国における過度なインフレ抑制とエネルギー安全保障や気候変動対策の迅速な推進を目的に、米国でのエネルギー政策の産業振興を推進している企業に補助金を適用する法律のこと。

IRA補助金の現金化手段は、「法人税の還付」、「直接給付」、「第三者への権利売却」の3つがあるが、同社は2023年度は「直接給付」の選択を想定し会計処理をしてきた。ところが今回、2024年7月に2023年度分の補助金の大半を「第三者へ権利売却」することを決定。それに伴い、権利売却の資金化コスト55億円を4~6月期の決算で計上した。資金化の時期を、当初想定よりも約2年前倒しするという。

パナソニックHDは、補助金を社会から預かった資金とみなして、米国のEV(電気自動車)普及のために、車載電池事業の投資に充当していく考えだ。米国カンザス州に新工場の建設を決定しており、2024年度中に米テスラ向け電池の量産開始を目指す。


また同社は31日、傘下の法人向けシステム事業を手掛けるパナソニック コネクトが業務用プロジェクター事業をオリックスに売却すると発表した。譲渡価額は1185億円で、供給網管理システムといった投資領域に充てるとしている。オリックスが80%、パナソニック コネクトが20%の株式を保有する新会社を2025年4月1日に設立する予定だ。

プロジェクター事業の2023年度の売上高は約770億円だった。なお、資本提携後もパナソニックブランドは継続する予定で、新会社も当面の間パナソニックを冠した社名が付けられる。

「新会社の株式を2割保有することで、引き続き事業にしっかりと関与していく。今後の大きな成長を(オリックスと)ともに成し遂げていく」と梅田氏は説明した。

なお、2025年3月期通期の連結業績見通しは据え置いた。売上高は前期比1%増の8兆6000億円、営業利益は5%増の3800億円、純利益は30%減の3100億円を見込む。
編集部おすすめ