俳優活動15周年を迎える高杉真宙が、2020年からスタートした雑誌『+act.』の連載「きり、とる。」に、自身が“いま一番行きたい場所”として挙げた長崎での旅を撮り下ろしたカットを加えたPhotobook『I/my(あいまい)』(ワニブックス)を8月7日に刊行。高杉が改めて連載を読み返して感じたことや、15年の俳優生活を通じて感じた気づきについて聞いた。
2年半の連載中、高杉は使い捨てカメラで心の向くままにシャッターを切り、言葉をつづった。連載がスタートしたときは「撮りたいものが全然見つからなくて、すごく時間が掛かった」と振り返るが、連載を重ねるにつれて高杉はあることに気づいたという。
「僕は何かを見つけるとき、耳を使っているんだと気づいたんです。イヤフォンをして歩いていても、何も心に響かない。目で見ることも大切ですが、聞いて感じることって多いんだなというのが発見でした」。
もう一つ、綴った文章を改めて読み返したとき、その時の心の思いが、すごく言葉に表れていることも感じたという。
「この2年半の間、僕は2度舞台をやっているのですが、そのときってどこか普段より熱いというか、いま読み返すとちょっと恥ずかしい気持ちが綴られていました。それだけ心で感じていたことがストレートに言葉として出ているんですよね」。
ある意味で、高杉自身の個人的な感情がストレートに出ている文章。そこには俳優・高杉真宙とは違う、素の高杉が投影されている。
「これまで俳優という職業において、自分を出す機会ってほとんどなかった。いまはSNS等で発信する方もいますが、僕はあまりやっていないので。
フォトブックのコンセプトは、読者との距離感。これまで雑誌等での露出は、どこか「決めている」ことが多かったという。しかし本書では、これまで以上にファンとの距離が近くなっている。普段だったら選ばないような写真も多く採用されているというのだ。俳優という職業にとって、プライベートを見せない方がいいという考えもある。
「僕の場合、あまり素の自分と俳優としての自分が違うタイプではないという自覚があります。そのなかでも、俳優を始めた頃よりは、少し自分を出してもいいのかな……という風には思うようになってきました」。
『I/my』は、高杉の俳優生活15周年のメモリアルフォトブックでもある。高杉にとって15年間という歳月で自身に変化はあったのだろうか――。
「自分というよりも、作品やモノ作りに対しての思いが強くなったような気がします。
こうした変化に対して、高杉は「誰かに影響を受けたということは全くないです」と断言する。高杉自身、人に何かを言われて自身が変化することはないという。あくまでも能動的に自分自身の気持ちが揺れ動くことによって、行動も変わっていく。
「20代前半ぐらいから、作品を良くするためはどうしたらいいのかということ第一に考える人たちと仕事をする機会が増えてきたんです。そういう環境のなかで、少しずつ自分も『こういう人たちと一緒に仕事がしたい』と思うようになっていき、自分をどう見せるのかではなく、良い作品になるために自分がどうすればいいのか――という発想になっていきました」。
「自分の欲を見つけることが課題」『光る君へ』出演で芽生えた欲は?
作品のために自分を捧げる――。そんなモチベーションで俳優業を続ける高杉。しかし一方で、「自らの欲」がなくなっていくことには、ほんの少しの危機感も抱く。
「自分ではなく作品を大事にすることで、自分のなかにある欲が薄れてきている気がします。作品のためにはとてもいいことだと思うのですが、向上心という意味では、やっぱりどこか自分の欲というものも必要だと思うんです。その意味で、自分の欲をしっかり見つけることが、今後の課題のような気がします」。
相反するような思いを抱えているという高杉。ベストは、自分の欲と作品がプラスになること。いまはそこを見つけることが、大きなモチベーションになっているという。
「自分が演じることで、作品が良いものになる。そんな役や作品に恵まれるためには、スキルを磨かなければいけないと思っています。それがいまの僕の大きな挑戦のような気がします。僕は歴史ものをやりたいと思っていて(現在放送中の大河ドラマ)『光る君へ』は2度目の大河ドラマ出演になるのですが、2回とも平安時代のお話だったので、他の時代を生きたいなという欲が出てきました。でもそれが作品のためにならなければ意味がないと思うので、その辺りが今後の課題です」。
高杉自身がこだわった長崎での撮り下ろしカットも満載のフォトブック。
「エッセイやフォトブックを出すとき、毎回自分の一部を切り取っているような感じがするんです。『I/my』というタイトルは自分と向き合うという意味と、フィルムカメラで撮った写真なので、現像していみないと分からないところや、未来への曖昧さみたいなものが含まれています。そういう部分を見ていただければ」。
■高杉真宙
1996年7月4日生まれ、福岡県出身。2009年に俳優デビュー。近年はNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(22~23)、ドラマ『わたしのお嫁くん』(23)、『わたしの一番最悪なともだち』(23)、『となりのナースエイド』(24)、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』(23)、舞台『ロミオとジュリエット』(23)などに出演。現在は大河ドラマ『光る君へ』に出演中。
ヘアメイク:堤紗也香 スタイリスト:菊池陽之介