第10期叡王戦五番勝負は、現在第三局まで進行中。伊藤匠叡王が2勝1敗と勝ち越しており、防衛に王手をかけています。
2025年5月2日に発売された『将棋世界 2025年6月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)では、挑戦者・斎藤慎太郎八段のインタビューを掲載しています。本稿では、同記事より一部を抜粋してお届けします。
(以下、抜粋)
○挑戦までの道のりを語る
―本日はよろしくお願いします。まずは、タイトル挑戦おめでとうございます。
「ありがとうございます」
―3年ぶりのタイトル挑戦となりました。現在の率直な気持ちをお聞かせください。
「タイトル戦には何度か出ていますが、番勝負の成績は芳しくありません。タイトル挑戦というのは、棋戦を戦ううえで目指すべき一つの地点ではありますが、獲得までいって初めて成就するものだと思っています。番勝負で勝つことの大変さはわかっているので、いまは満足するといった気持ちはありません。とはいえ、3年ほどタイトルに挑戦するチャンスもなかったので、一歩前進したというところです」
―今期の叡王戦を振り返ってみていかがでしたか?
「段位別予選は持ち時間が1時間ということもあって、攻めの姿勢で臨みました。序盤から強気に勝負に出たのがいい結果につながったと思います。
(中略)
○平常心でいい将棋を
―今回、タイトルに挑戦できた要因は何かありますか?
「決勝もそうでしたが、普段なら長考してしまいそうなところで読みを打ち切って決断よく指したのがよかったと思います。私はあまり器用ではないので、これまではただ目の前の好手を探していただけでした。ですが、終盤に時間を残しておくといった勝負におけるうまさはほかの棋士から感じていましたし、私もそういう戦い上手な部分というのを出せるに越したことはないと思うようになりました。
今回の叡王戦ではその辺りを意識したことがいい結果につながったと考えています。あと、全く別の話になりますが、将棋会館が新しくなったことで気分よく対局に臨めた、ということもあったかもしれません。私は新会館になってからのほうが調子はよくて、何となくですが、『元気にやれている』という感覚があります」
(中略)
―では最後に、タイトル戦の意気込みをお願いします。
「これまでのタイトル戦ではいい将棋を見せなければ、という意識が強すぎて伸び伸びと指せなかった反省があります。年齢を重ねて少しは落ち着いてきたと思うので、平常心で臨めればと思っています。叡王戦はタイトル戦の中では持ち時間が短いので、本戦のときと同様、ある程度は割り切って決断よく指したいです。藤井さんがいなくても見てみようと皆さんに思っていただけるように、まずは第1局でいい将棋を指したいと思います」
(叡王挑戦!斎藤慎太郎八段インタビュー「タイトル戦にリベンジを」 記/島田修二)