第38期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦ほかが進行中。5月13日(火)には3局が行われました。
永瀬用意の対矢倉研究
16名のトーナメントで争われる2組ランキング戦、準決勝に当たる本局は本戦進出と1組昇級が懸かる大一番です。両者の対戦では昨年の王座戦挑戦者決定戦をはじめとして王位リーグ・棋聖戦本戦(ともに今年4月)など永瀬九段の白星が続いており、羽生九段の作戦にも注目が集まりました。振り駒が行われた本局は先手の羽生九段が矢倉を志向します。
対する後手の永瀬九段は積極的な作戦を用意していました。居玉のまま積極的に桂を跳ね出したのは先手の左銀に照準を合わせた速攻で、ノータイムの指し手からは研究の深さがうかがわれます。感想戦で昼食休憩ごろの局面(28手目)を振り返った羽生九段は「5筋の歩を突けないのでは自信がない」と作戦の失敗を認めるよりありませんでした。
序盤で勝負ありの一局
1時間半の長考に沈んだ羽生九段がひねり出した角上がりは9筋を守って総崩れを避ける意味ですが、受け一方の指し手で苦戦の感は否めません。ここからは永瀬九段の攻めが冴えわたる展開となりました。角を切り、手にした銀を7筋の拠点に打ち込んだのがわかりやすい攻め。この単純な数の攻めが厳しく、先手陣は一手一手の寄り形となっています。
なんとか反撃を見出したい羽生九段も手筋で応戦しますが、永瀬九段の対応は冷静でした。
勝った永瀬九段はこれで2組ランキング戦決勝に進出し、決勝トーナメント進出と1組昇級を確定させました。次戦では組優勝を懸けて高見泰地七段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)