2022年に日本でサービスを開始した「Uber Direct (ウーバー ダイレクト)」は、あらゆる加盟店が注文者に商品を直接届けることが可能となるサービスだ。Uber Directは日本社会にどのようなインパクトを与えるのか、Uber Direct 事業統括本部長に伺った。
○小売店と注文者のラストワンマイルを繋げるUber Direct
2020年4月、コロナ禍直後に顧客のニーズを受けてアメリカでローンチされた「Uber Direct (ウーバー ダイレクト)」。その成功を受け、Uber Eats Japanも2022年に日本でサービス提供を開始した。
Uber Eatsが消費者向けのサービスだとすると、Uber Directは事業者向けのサービスといえる。消費者が直接意識することは少ないが、実は飲食店に限らずあらゆる小売店と注文者のラストワンマイルを繋げる革新的なサービスだ。
Uber Directを利用するパートナー企業は、店舗としてUber Eatsのマーケットプレイスに加盟している・していないに関わらずアクティブな配達パートナー約10万人が参加するデリバリープラットフォームを活用し、平均30分で注文者のもとに商品を届けることが可能。もちろん、顧客データは加盟店側で管理・運用できる。
加盟店、配達パートナー、注文者にとってUber Directはどのようなメリットがあるのか、そしてUber Eatsは、Uber Directを通じて社会にどんな変革をもたらしたいのか。Uber Eats Japan Uber Direct 事業部 事業統括本部長のレスリー・レビット氏に伺った。
○小売業界の経験を活かして日本でUber Directを広めたい
レスリー・レビット氏は、20年以上に渡る小売業界の経験を持つプロフェッショナルだ。日本に来る以前は、アメリカの百貨店「メイシーズ」で戦略やイノベーションを、オーストラリアの食料品店「ウールワース」で顧客体験の創造に携わってきた。そんな同氏がUber Eats Japanに入社したきっかけは、夫の来日だったという。
「東京で実際に生活を始めてみたら、『もっと日本の文化を知りたい』『日本の方々と一緒に仕事をしてみたい』と思うようになったのです。
私は、前職でも新しいソリューションを導入していくという仕事に情熱を覚えていました。Uber Directのローンチは、Uber Eatsの持つテクノロジーが加盟店に絶好のチャンスをもたらすと感じましたし、お客さまに魔法のような顧客体験をもたらしたいなと思って、入社を決めました」(レビット氏)
Uberの事業はテクノロジーをベースとしており、日進月歩で革命が起こる世界だ。そして小売業界もまた顧客からのニーズが目まぐるしく変化し、日々刻々と変革が訪れる。レビット氏はそんなところに共通性を感じており、Uber Directが提供する価値に惹かれたそうだ。
「私には小売業界での経験があります。加盟店さまが直面している課題を理解することができますし、労働力不足の問題にも貢献できると思いました」(レビット氏)
○Uber Directはサプライチェーンにどのような影響を与えるか?
レビット氏は、Uber Directがサプライチェーンに与えるメリットを次のように語る。
加盟店にとっての最大のメリットは、注文者に対して迅速な配送を行えるということだ。同時に、加盟店自らで配送をする必要がなくなるため、配送者を抱え込む手間とコストを削減できる。
レビット氏は「加盟店さまには柔軟性のあるオプションが増えることになります。その利点は大きく3点あります。ビジネスの拡張性、生産性・効率性・収益性の向上、既存のキャパシティを超える受注の獲得です」と述べ、Uber Directを採用し、ビジネスを成功させた加盟店の導入事例を紹介する。
1例目は、セブン‐イレブン・ジャパンが2023年に立ち上げた「7NOW(セブンナウ)」事業。
同社は一刻も早く47都道府県にサービスを拡張したいという意向があった。それを叶える唯一のパートナーがUber Directだった。
2例目は、「ガスト」や「バーミヤン」を展開するすかいらーくグループ。同社はUber Directを採用することでデリバリー事業の収益率・効率性の向上を目指しており、さらに利用する店舗を増やすことを検討しているという。
3例目は、スーパーマーケットのマックスバリュ関東の事例。日用品や食品を扱っている同社は、配達コストを下げることに成功しているそうだ。
4例目は、宅配ピザチェーンのドミノ・ピザ ジャパン。同社は自社で配達パートナーを抱えているが、繁忙期にはUber Directを併用することで繁忙期の需要に対応しているという。
5例目は、フードデリバリー・テイクアウトのプラットフォームを開発しているtacoms(タコムス)だ。同社はUber DirectとAPI連携することで飲食業界向けデリバリーサイト構築のサービス提供と飲食店の販売店のチャネル拡大の手助けをしている。
一方、配達パートナーにとってUber Directは配送業務の機会拡大に繋がるだろう。単純に件数が増えるだけでなく、これまでとは異なるエリアでの依頼も生じるだろう。
また食事のタイミングに稼働が重なりがちなUber Eatsとは異なり、よりゆるやかに依頼が発生する。
そして、注文者にとってのメリットは言わずもがな、自宅まで商品を届けてもらえること。Uber Directが普及すれば、日々のさまざまな生活用品も届けてもらえるようになるだろう。
「この他、新たな可能性に向けた構築もどんどん進めています。ここ2年間は、処方薬をご自宅に届けたり、修理したいスマートフォンをピックアップしてお届けしたり、クリーニングを受け取って配送したりといったサービスも行っています。Uber Directは、加盟店さまには新しい事業の機会を、配達パートナーさまにはより多くの稼働の機会を、注文者さまには利便性の高いサービスを提供することができます」(レビット氏)
○競合に対しUber Directが持つアドバンテージ
Uber Eatsの成功以降、競合サービスが溢れたように、Uber Directにもすでに競合が出現している。Uber Directのアドバンテージはどのような点にあるのだろうか。
レビット氏は「Uberの最大のメリットはそのスケール感、そして高度なテクノロジープラットフォームです」とはっきり述べる。
Uber Eats Japanは日本において全国約10万人のアクティブな配達パートナーを抱えており、これは他社の追随を許さない。全世界で見ると23のマーケットでサービスを展開しており、他地域と連携することでニーズを集積し、グローパルな顧客体験を提供できるのも強み。そしてテクノロジーパートナーと強力なパートナーシップを確立しており、迅速にサービスを展開することが可能だ。
「Uber DirectはUber Eatsのコアテクノロジーを活用しております。
例えばリアルタイムのルート最適化、動的な料金設定(ダイナミックプライシング)、配達パートナーを確保できる広範囲なネットワークなどです。もちろん、注文者の顧客体験を向上させるトラッキングツールなども提供しています」(レビット氏)
Uber EatsとUber Directの連携はおもにAPIによって行われているが、より小規模な加盟店では、マニュアルダッシュボードと呼ばれる"手入力"も行える。アプリやシステムの連携なしに簡便に利用できるようにすることで、導入の間口を広げているというわけだ。
こうしたスケール感と高度なテクノロジープラットフォームが、同社の重視するカスタマーエクスペリエンスや信頼性につながっている。
「特に日本市場においては、『時間通りに届く』『在宅時に受け取れる』といった確実性や、スムーズな体験そのものが、顧客満足度に大きく影響すると認識しています。Uber Directでは、当社のスケール、つまり配達パートナーのネットワークやリアルタイムな最適化技術を活用し、そうした日本の消費者ニーズにも応えられる体制を構築しています」(レビット氏)
○Uber Directは「配達で社会貢献」を目指す
「私たちUber Eats Japanのチームがもっとも情熱を傾けているのは、日本社会になにかしらのインパクトを与えたいということです。配達パートナーのネットワークに対するアクセスをより多くのお客さまに拡大することで、日常生活をより利便性の高いものにしたいと思っています」(レビット氏)
日本固有の重要な社会課題として、労働者不足の深刻化が挙げられる。これは少子高齢化に端を発する問題であり、根本的な解決は当面の間、不可能だ。だからこそ、テクノロジーの力で社会を助けていきたいのだという。
「例えば、すでにレストランではスタッフが不足していて配達にまで手が回らない店舗も増えてきています。高齢者は増え、日々の生活品を購入したりお薬をもらいに行くのも大変になっています。病気の子どもを連れて薬局で長時間待ち続ける経験も、できればしたくありませんよね。
我々は、"信頼できる配達で必要なものをお届けする"という形で日本社会の役に立ちたいのです」(レビット氏)
レビット氏は最後に、配達パートナーに向けて感謝の言葉を述べる。
「配達パートナーのみなさまには感謝してもしきれません。日々、配送を行ってくれて本当にありがとうございます。Uber Directには、"配達パートナーが食事以外の時間でも稼げる機会を作る"という側面もあります。みなさまも効率よくどんどん依頼をこなしたいと思っているはずです。扱う製品を増やしていううえでチャレンジが必要な場面もありますが、配達機会を増やすことにも繋がりますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします」(レビット氏)
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