DE&Iとは、「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」の頭文字を取った略称。これは、個々の違いやニーズに応じて、公平な機会と待遇を提供することを目指す組織的なフレームワークとなっている。


企業経営において「社員それぞれが持つ多様な個性が最大限に生きることがより高い価値の創出につながる」ということを背景に、DE&Iを意識する企業が増えている。

サンリオでは、「サンリオで働くみんなの笑顔を支えるDE&I」の方針を制定し、社員一人ひとりの心身を支える制度の充実化に挑戦している。

今回は、2025年4月から始まった「SRHR休暇」の取り組みを中心に、常務執行役員 人事本部長 三好加奈子氏、人事本部 組織開発部ゼネラルマネージャー 中川恒之氏、人事本部 人事企画部 稲葉結衣氏(取材当時の役職)の3人に話を聞いた。

働くみんなの「笑顔」をつくる制度

サンリオでは、「One World, Connecting Smiles.」のビジョンの実現に向けて、DE&I推進の観点から、一人ひとりが自分らしさを活かしながら成長を実感し、制約を感じることなく働き続けることができる職場づくりに取り組んできたという。

そして今回、2024年に実施した社内アンケートで寄せられた「ライフステージの変化に応じた柔軟な働き方を実現したい」という多くの声を受け、「サンリオで働くみんな」が「みんな元気に、みんな笑顔に」いられるよう方針を見直す挑戦を行った。

「サンリオで働くみんなの笑顔を支えるDE&I」として、同社が重要視している「笑顔の要素」は以下の3つ。
○笑顔の要素1 ありのままの自分が受け容れられ、尊重される職場環境がある(I)

自らの特性や特徴を保ちながら、働くことをサポートするインフラがある(ハード)
自らの特性や価値観が受け容れられ、尊重される組織風土(ソフト)

○笑顔の要素2 自分らしさを活かしながら、成⻑を実感する機会がある(D)

自分の強みを伸ばし、自らが成長を続けられる配置・研修(育成機会)
キャリアを通して自身のありたい姿を実現し、会社のビジョンの実現につなげる(キャリア開発)

○笑顔の要素3 制約を感じることなく「働く」を支える制度がある(E)

多様な働き方を許容出来る(既にある働き方の制約を解消)
ライフイベントが生じた際も、必要なサポートが得られる(未来に起こりえる制約を解消)

「性」と「生き方」を尊重する休暇 「SRHR休暇」って?

そして今回新たに開始されたのが、不妊治療や卵子凍結にも使える「SRHR休暇」を導入する取り組みだ。

「SRHR休暇」とは、「Sexual and Reproductive Health and Rights」の略で、「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、すべての人の「性」と「生き方」を尊重するもの。

既存だった「生理休暇」の仕組みに加えて、不妊治療や卵子凍結、更年期症状など、さまざまな場面で活用できるようになったという。

「これまでも生理休暇の取得は可能でしたが、取得する社員が少なくあまり活用されていないという課題がありました。この理由として、『月経症状でしか利用できない』という制度の性質上、周囲に取得の理由が明確に分かってしまうことにあると考えました。また、月経症状以外にも更年期症状など体の不調がありますが、それに対応する休みが通常の有給休暇しかないことも課題に感じていました」(稲葉氏)

今回の新制度の一番の特徴は「性別を問わず活用できる」という点。
無給休暇ではあるものの、不妊治療などでも利用できるように幅を広げたことで、女性だけでなく男性でも活用できるようになった。

また申請に際して取得理由の報告は必須ではないため、プライバシーを守りながら社員の生活に寄り添うことができるため、稲葉氏も「ぜひ今後、生理休暇の時よりも社内で普及していってほしい」と語っていた。
育児短時間勤務制度を延長

さらに、「SRHR休暇」導入のタイミングに合わせて、育児短時間勤務制度を「小学校6年生」まで延長する制度も開始された。

「これまで、育児短時間勤務制度を利用可能な子の年齢は『小学校3年生修了まで』と定められていました。しかし、これを2025年4月から『小学校6年生修了まで』と期間を延長しました」(三好氏)

この改定の理由には、「小4の壁」に関わる課題意識があったという。

「小4の壁」とは、「9歳の壁」「10歳の壁」とも呼ばれるもので、子ども自身の成長段階による自我の目覚めや、学童保育のサポートがなくなることで生じる放課後の子どもの居場所の問題などが原因で、保護者や子どもにストレスのかかる状態のことを指す。

社内でもこの現象に悩まされている社員は多く、「育児短時間勤務制度をもう少し長く取得したい」という声が多く挙がっていたという。

サンリオでは、定期的にエンゲージサーベイを取り、社員が安心して働ける環境づくりに邁進しているが、2024年には「なぜサンリオで働くのか」と題した単発のアンケートを実施した。その中で、「仕事の継続のしやすさにつながると思う制度は何か」、「どのような制度があると仕事を継続しやすいか」という質問を盛り込んだという。

今回「育児短時間勤務制度の延長」に踏み切ったのも、このような社員の声を制度に反映させた形だ。
社内から世界へ 幸せの輪を広げていく

サンリオでは、今回のDE&Iに関する制度改定を通じて、同社で働く「すべての人が笑顔になれる職場づくり」を目指していきたい考えだという。

中川氏は、サンリオがDE&Iに取り組む意義として、「人々の笑顔を作るサンリオだからこそ、まずは社内に笑顔が絶えないようにすることが必要不可欠」と説明してくれた。


「すべての人が笑顔になれる職場づくり」を進めることで、安心して社員が働ける環境を整え、そこから世界中一人でも多くの人を笑顔にし、幸せの輪を広げていきたい構えだという。

今後サンリオは、自社の企業文化の醸成やVMV浸透を後押しする、サンリオならではの福利厚生の導入を進めていく方針。それを通じて、社員が家族の笑顔も守りながら、互いにサポートし合い、安心して働き続けることができる状態を目指していく。

最後に今後の展望について三好氏は、以下のように語った。

「まずは、社内で『こんな制度がある』ということを普及させて、制度の意義を理解した上で活用できる環境づくりをしていくことと、サンリオで働く一人ひとりにとって必要な制度の活用を後押しできるように、管理職の意識やマインドセットを高めることが重要だと思っています。誰もが無理をしながら働くのではなく、サステナブルで自然体に働ける、笑顔溢れるサンリオらしい環境作りを続けていきたいです」(三好氏)
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