遊びを通して子どもの成長を支えるボーネルンドは8月8日、東京・渋谷でプレスセミナー「教育における子どものウェルビーイングを考える」を開催した。

登壇したのは、武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司氏や、同社が運営する複合施設「プレイキューブ」の関係者たち。
会場では「次世代の教育」を軸に熱い議論が交わされた。
○▼不登校児は約34.6万人、毎年5万人ペースで増加中

文部科学省の調査によると、令和5年度の不登校の小中学生は全国で約34万6,000人。特にコロナ禍以降は、毎年およそ5万人ずつ増え続けている。

プレイキューブのプロジェクトリーダー・池田健二氏は、「多様性が尊重される時代になりつつある一方で、子どもたちの学びの選択肢は依然として“学校”一択。しかも学校教育そのものが社会の変化に十分対応できていない」と指摘する。

こうした現状を受け、ボーネルンドは大阪・うめきた公園内のプレイキューブで2025年4月、「次世代型フリースクール」を開校。ミッションには「遊びを原動力にして、『成功』より『幸せ』な人生を」と掲げた。

一般的な学校が決められたゴールに向かって進むのに対し、プレイキューブは“遊びの中から自分だけのゴールを見つける”ことを大切にする。

たとえば、ポケモン好きの子がキャラクター名を書くためにカタカナを覚えるなど、学びは目標ではなく遊びの副産物として積み重なっていく。国語や算数、理科、社会などの教科横断的な知識に加え、実生活に直結する課題解決力も育まれるという。

岩﨑氏は「教育的関わり」を「目の前の命が輝くために、自分が何をできるかを考え、関わり続けること」と定義する。日々の記録を振り返り、子どもを変えようとするのではなく、自分が変わる姿勢を大事にしているそうだ。


開校からわずか4カ月だが、机に座らなかった子が仲間との会話を楽しむようになったり、水に触れられなかった子が遊びを通じて殻を破ったりするなど、変化は多く見られた。「正解や方法論ではなく、自分の心に嘘がないことが大切。誰かが言ってたからではなく、自分がそう思うからそうする。そういう選択こそが幸せにつながる」と岩﨑氏はまとめた。

続いて登壇した前野教授は、ウェルビーイングの定義が「精神的・身体的・社会的に良好な状態」であると説明したうえで、日本の教育の“遅れ”を指摘。例えば、デンマークなどでは20人いれば20通りの進み方で学ぶ仕組みが整っており、全員が成長実感を得られる。一方、日本は画一的な教育で、適合する子どもは一部に限られてしまうというのだ。

前野氏によると、社会人の場合、幸せな人は不幸せな人に比べて創造性が3倍高く、生産性も3割高い。これは子どもにも当てはまり、自己肯定感の高さが学びの質や成果に直結するそうだが、日本では小学校3年生頃から自己肯定感が低下し、そのまま大人になってしまうケースが多い。「いきいきワクワク学ぶことが創造性を高め、結果として学力やパフォーマンスも向上する」と前野氏は強調した。

さらに前野氏は、幸せには「地位財」と「非地位財」の2種類があると解説する。

地位財はお金や社会的地位など、他者との比較によって得られる幸せで、多くのドーパミンが放出されるが、長続きしない。
しかし、これこそまさに資本主義社会が過度に追い求めてきたものでもある。一方の非地位財は安全、健康、心の幸せなど、他者と比較できない幸せを指し、こちらは持続性が高く、ウェルビーイングの思想にも合致する。

プレイキューブがミッションに掲げる「『成功』より『幸せ』な人生を」は、まさにこの「地位財」から「非地位財」への価値観の転換を目指すものであり、前野氏はこれを高く評価した。
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