ECサイト構築サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ」を活用し、ネットショップでの販路拡大や事業成長に取り組む事業者をご紹介します。
今回ご紹介するのは長野県長野市の「ヤマとカワ珈琲店」です。
コーヒー豆に拘り、世界各地から厳選した8種類のコーヒー豆を販売。「いつもの日が、ちょっとよくなるコーヒータイムを。」をコンセプトに、記事やSNS、ライブ配信でコーヒーの淹れ方を伝えるコンテンツを発信しています。もともと会社員だった店主の川下康太さんが、コーヒー店を営むにいたった経緯やECでの販売のきっかけを伺いました。
○27歳で迎えた転機、自営業への挑戦を決めた理由
川下さんに転機が訪れたのは27歳の時でした。
建築資材メーカーで会社員として働いていた頃、会社の売上構造に疑問を感じるようになったといいます。
「たとえば東京でオリンピックをやるとなったら建物が建ち、それで自社の資材が売れて、たまたまその時期東京にいた営業マンが表彰される。『それって自分の実力とは全然関係ないよな』って疑問を感じるようになったんです。」
自分の人生をどう生きたいかを考えたとき、「雇われるよりも自分の力で商売をする方が向いているのでは」と思い立ったことが独立のきっかけでした。
「会社を辞めて『自営業をするなら何をしようか』と考えたタイミングで、ちょうどコーヒーにハマっていたんです。これなら長く続けられるかもしれないと思いました」
○長野へ移住しての開業。順調だったカフェを閉鎖した訳
コーヒー店開業を決意した後、当初は地元の大阪での開業を考えていましたが、知り合いから長野市の情報を聞き、状況が変わります。
「長野市で古い空き家を改装してお店にしている人たちが増えてきているよ、という話を聞いて。登山が好きだったので長野県には親しみがありましたし、地域の古い空き家をリーズナブルに借りられるのも魅力でした。」
自己資金だけで低リスクで始められる点に魅力を感じ、2014年に長野でコーヒー店を開業。
当初は豆販売をメインに考えていたものの、店内にカフェスペースも設けていました。
しかし3年後の2017年、川下さんは大きな決断を下します。カフェスペースをなくし、豆販売に専念することにしたのです。
「カフェとしての知名度が上がって人気になったことで、『(カフェが)忙しそうだから、適当でいいよ』と豆を買いに来た方が遠慮して帰ってしまう状況だったんです。」
本来は時間をかけて接客しコーヒー豆を販売するスタイルを想定していた川下さん。このままでは本当に届けたいお客様と向き合えないと考え、カフェスペースを閉鎖しました。
○豆販売へと原点回帰し、ECを開設
カフェスペースを無くすと一時的に売上は下がりましたが、この時期に販路拡大の一環としてECサイトを始めます。
「最初はWordPressで作成したホームページにカート機能を追加し、銀行振込のみで販売を開始しました。制作会社に依頼せず、自分の手で構築したのは『まずはやってみたい』という気持ちからでした。」
ECサイトを運営し始めてみたものの、注文が増えるにつれ、顧客の購入体験を改善する必要性を感じた川下さんは、サイトのリニューアルを決意します。
具体的には、決済方法が充実しており商品ページのカスタマイズ性が高い「カラーミーショップ」を導入し、テキストとテキストの間にも写真を入れたり、多くの写真を掲載したりと、商品ページを作り込んでいきました。
カラーミーショップでの運営を開始すると、充実したコンテンツのおかげもあり、徐々に売上が伸びていきました。そして大きな転換点となったのが、2020年のコロナ禍。
自宅需要の高まりがちょうどサイトの全面リニューアルと重なったこともあり、お客さんが一気に増えたといいます。
○顧客と"近い関係性"をLINEとライブで築く
ヤマとカワ珈琲店の成功の秘訣は、SNSでの顧客との密なコミュニケーションにあります。
2019年から運用を開始しているLINEでは、基本的にはコーヒーに関するお役立ち情報と新しい豆の入荷情報を配信していますが、「定期販売の変更リクエスト」「淹れ方についての質問」など、顧客との1対1の密接なやり取りも多いそう。
「気づいたときにすぐ返信しています。大変そうに感じるかもしれませんが、僕はあんまり苦じゃないですね。LINEでのやり取りはお客さまから喜んでもらえますし。」
LINE経由の売上も大きく、運用は欠かせないと川下さんは考えています。
もう一つの重要なツールがInstagramライブです。現在は週2回、朝の時間帯に配信を行っています。
「気合い入れてやると続かないかもと思って、自分が淹れながらついでに説明するくらいのノリで始めました。」
配信内容は事前に台本を用意するのではなく、LINEで受けた質問への回答や、リクエストされた淹れ方の実演など、顧客との日常的なコミュニケーションの延長として行っています。
この密なコミュニケーション戦略によって、ヤマとカワ珈琲店ではリピーターが圧倒的に多くなっています。
一度購入した顧客と長期的な関係を築くことが、同店の売上を支える大きな基盤となっているのです。
○経験を活かしてコーヒーの枠を超えた活動へ
コーヒー店経営とEC運営の経験を積んだ川下さんは、現在その知見を他の事業者にも還元する活動を始めています。
LINEやInstagramのフォロワーが増えたことで、「どうやって運営しているの?」と聞かれることが増えたのがきっかけでした。
自分の経験が他の人に喜ばれることに手応えを感じた川下さんは、個人として企業支援の仕事にも取り組み始めました。
「自分の目線で見てると当たり前になってしまってることも、外からの目線だと違って見える。他の企業の支援を行う中で『そういうやり方をしたらいいのか』と自分が学べることも絶対あるだろうなと思って。それ自体がお店にもいい影響になるはずです。」
○お客様や地域のため、今後の展望
現在、ヤマとカワ珈琲店はECサイトを中心に順調に売上を伸ばしていますが、川下さんの視線はさらにその先を見据えています。
「コンセプトは『コーヒーの時間を届ける』なので、おいしい豆をただ届けるだけではなく、コーヒーの時間そのものを楽しんでいただけるようなお手伝いをしたいんです。」
作家の手によるカップや、コーヒーを淹れる器具など、"時間を楽しむ道具"を集めた企画展など、まだ実現したいことは数多くあると語ります。さらに、地域のためにできることにも思いを巡らせています。
現在は長野市から車で3時間ほど離れた地域に暮らす川下さん。「人口減少の問題を考えると、この場所で少しでも雇用を生み出せたら」と話します。オンラインでの売上を伸ばし、発送量を増やすことで、地域の雇用創出につなげたいと考えています。
一方で、コーヒー業界の将来についても冷静な目を向けています。気候変動や国際情勢の影響で、コーヒー豆の安定的な確保が難しくなる可能性もあると言います。
「もしコーヒーが仕入れられなくなったら、パン屋をやってると思います」
○「コーヒーの時間」を届けるEC運営の本質
競合の多いコーヒー業界において、ヤマとカワ珈琲店が選んだのは「お客様一人ひとりと丁寧に向き合うこと」でした。
LINEでのやり取りやInstagramライブといった日常的な発信は、小さな積み重ねのようでいて、確かな信頼関係を生み、リピーターの増加と安定した成長へとつながっています。
さらに他業種への支援といった新たな挑戦も、すべては「コーヒーの時間を届けたい」という想いの延長線上にあります。
単なる豆の販売にとどまらず、体験と関係性を届けるEC運営こそが、ヤマとカワ珈琲店の強みであり、本質といえるでしょう。
次回はシリーズ最終回として、EC業界のトレンドや運営に欠かせないおすすめ機能をご紹介します。どうぞお楽しみに。
よむよむカラーミー編集部 よむよむカラーミーは、ECサイト構築サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ」の公式Webメディアです。ネットショップ運営に役立つノウハウや成功事例、最新トレンドをわかりやすくお届けします。https://shop-pro.jp/ この著者の記事一覧はこちら
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