「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は、KPMGジャパン Web3.0推進支援部の部長で、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)ではユースケース部会の部会長もされている保木健次氏にお話を伺いました。
国内外の金融機関にてファンドマネジメント業務等を経験した後、2003年に金融庁に入庁。証券取引等監視委員会特別調査課、米国商品先物取引委員会(CFTC)、金融庁総務企画局市場課、経済協力開発機構(OECD)、金融庁総務企画局総務課国際室にて勤務。2014年にあずさ監査法人入所。Fintech/Web3.0関連アドバイザリーの責任者として、暗号資産交換業、金融サービス仲介業及び電子決済等代行業を含むFinTech関連規制対応やセキュリティトークン、ステーブルコイン及びDAO(分散型自律組織)を含むWeb3.0推進支援等のアドバイザリー業務に従事。QUICK仮想通貨ベンチマーク研究会事務局や日本暗号資産ビジネス協会のアドバイザーやユースケース部会長、カストディ部会長など業界の発展にも貢献。
「Web3.0はわかりにくい」から始まる地方創生の壁
――本日は、ありがとうございます。早速ですが、不動産やアート作品、工芸品などの現実資産(実物資産)をトークン化したRWAトークンの利活用には、どのような課題があるのでしょうか?
保木健次氏(以下、保木氏):一番の大きな壁は、RWAトークンやNFT、Web3.0の一般的な理解がまだまだ進んでいないことです。RWAトークンやWeb3.0という言葉を聞いたことがあっても、実際にどのように使われるのか、その具体的なイメージを持っている方は少ないのが現状です。
行政機関や地域企業の中でも、決裁権限を持つ立場の方々が仕組みや活用するメリット、事例などを理解していないと、良いプロジェクトであってもなかなか前に進みません。さらに、ブロックチェーンのウォレットや秘密鍵の管理など、技術面でもユーザーにとっての障壁が高く、導入が進みにくい状況です。
制度の不透明さを乗り越えるための“地図”としてのガイドライン
――そのような現状に対して、保木さんも関わられた「RWAトークンの利活用に関するガイドライン」が策定され、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)から発表されたわけですね。
保木氏:ガイドラインは、RWAトークンをめぐる法的論点を明らかにし、実務における“道しるべ”となることを目的としています。特に、法制度のグレーゾーンをどう捉えるか、どのような留意点があるのかを整理することで、事業者がより安心して取り組める環境づくりを目指しました。
ガイドラインの第1章では、ガイドラインの概要や実際の事例紹介を。第2章では、トークンの移転を当該トークンに紐づく現実資産等の移転とみなすための論点整理を。第3章では、現実資産等が紐づくトークンの権利義務関係に関する論点整理を。第4章では、中長期的な課題の取りまとめをしました。
例えば、あるトークンが金融商品に該当するかどうか、資金決済法との整合性が取れているかなど、法律的な判断を求められる場面は多くあります。こうした論点を共有することで、業界全体でのナレッジの蓄積が進み、新規参入のハードルも下がると考えています。
“地域資源×トークン化”が拓く経済圏
――RWAトークンと地方創生の相性については、保木さんはどのようにお考えでしょうか?
保木氏:RWAトークンは、日本の各地域に眠る「リアルな価値ある資産」をデジタル化し、広く発信・流通させるための有効な手段です。例えば、地域限定の宿泊券や体験プラン、伝統工芸品といった資産をトークンとして発行し、インバウンド向けや都市部のファンに届けることができます。
こうした仕組みによって、地域の資産が“投機対象”ではなく“共感を軸にした購買対象”として評価され、地域経済に新たな循環が生まれるのではないでしょうか。さらに、地域金融機関が決済トークンを発行し、ブロックチェーン上で完結する決済システムを導入すれば、地元に根ざした独自のエコシステムも形成できます。
当時はRWAトークンではなくNFTという言葉がよく使われていましたが、「Sake World NFT」は日本酒と引換え可能なNFT・酒チケットを活用していましたし、「NOT A HOTEL」は別荘の共有持分権をNFTとして販売するサービスとして知られています。
実証実験で終わらせないWeb3.0活用
――実際に、各地域ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?
保木氏:JCBAとして地方創生案件支援の公募をし、佐渡島では地域活性化を目的としたNFTコンテストを実施し、地元の文化資産を可視化・価値化する取り組みを行いました。また、長崎県の対馬ではDAO(分散型自律組織)の立ち上げを支援し、地元住民とWeb3.0プレイヤーの協働による自治モデルの実証を進めました。
こうした取り組みは、単なる「実証実験」ではなく、地域課題に対してテクノロジーをどう適応させるかという真剣なチャレンジです。JCBAのユースケース部会では、法律家・エンジニア・事業者などの各専門家が連携し、それぞれの地域と対話を重ねながらプロジェクトを進めました。幅広い領域の専門家がいることは、JCBAの強みであると思います。
地域資産とWeb3.0で持続可能な共創モデルを
――眠れる地域資産を再発見し、RWAトークンなどを活用して地域の外へ発信することは、地方創生においてもとても重要な活動になりそうですね。
保木氏:RWAトークンはあくまで「ツール」であり、重要なのは地域が持つ本質的な価値をどう掘り起こし、どのように届けていくかです。新しいツールやアイデアを組み合わせながら、地域社会に根差した持続可能なモデルの構築を進めていきたいですね。
RWAトークンは、リアルな資産をデジタルで再定義し、地域の内と外をつなぐ新たな経済循環を生み出す手段になり得ます。日本の各地域には、まだまだ知られざる魅力的な資産があるはずです。そういった魅力は、ずっとその地に暮らしている地域の方々は案外気がつきにくいものです。地域の内の人たちだけでなく、地域の外の人たちとも対話を重ねることで、地域資産の再発見につながります。
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中島宏明 なかじまひろあき 1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。 この著者の記事一覧はこちら