「コロナが流行った時に、当然仕事も撮影も全部ストップしてやることがなくなり……」

俳優・向井理がそう語るのは、ただの自粛期間の回顧ではない。華やかな現場を離れた時間に手に取ったのは、昔買っていた演劇メソッド本だった。


○「同じ本なのに全く違うスピードで読めた」

イメージキャラクターを務めるスーツブランド「D'URBAN」(ダーバン)の55周年記念新TVCM「スーツが似合う人」編に出演した向井。撮影後のインタビューで、コロナ禍の変化を振り返った。

「買った時には全く気づかなかった、いろんな舞台上のことだったり、舞台に上がるまでのメンタリティーだったり、自分ひとりでできるレッスンだったりとか、いろんなことが書いてあって。20代では全然分からなかったものが、すごくクリアに見えて、同じ本なのに全く違うスピードで読めて」

コロナ禍の自粛期間中、手に取った演劇メソッド本。読み返すうちに、演技への向き合い方が少しずつ変わっていった。それは、年齢と経験を重ねたからこそ得られる深みだったのかもしれない。

生活の中でも、ちょっとした変化があった。最近では、味噌や梅干しを手作りしている。

「手前味噌と言いますけど、やっぱり自分たちで作った味噌はおいしいなと思いますし。梅干しも梅シロップも作っているので、夏はそれを飲んで乗り切ろうと思っています。僕、海外に仕事に行く時に絶対梅干しを持っていくんですけど、今年も何カ国か行って、やっぱりお腹が壊れないと思う。勝手に僕の中ではですけど、あとは疲労回復もしますし、梅干しは必需品ですね」

ささいな変化を楽しみながら、自分の輪郭を見つめ直す。
「D'URBAN」のキャッチコピー「見える世界が変わっていく」は、向井の実感としても自然に重なる。

最近、“ある人”に誘われて旅に出た。たった1日の温泉街への旅。それでも、初めての体験が、心を軽くしてくれた。

「そういう初めての体験をすると、その場所の匂いとかも覚えていますし、何食べたなとか。自分は普段しないような行動様式を持ってる人に誘ってもらうのは、新しい世界が見られますよね。断ることは簡単なんですけど、ちょっと忙しいとか言えば……でもそういう誘いはなるべくこれから乗っかっていこうと思うようになりましたね。旅行自体は好きですけど、そんなに頻繁に行くとかではなかったですね。だから急に『1泊あそこ行こう』と言われて、『なんで?』と思いながらも行ってみたらすごく楽しかったりして。初めての体験でしたね」

役者・向井理が、そんな“静かな変化”をまとって再び映像の世界に立つ。スーツブランド「D'URBAN」の新TVCMでは、成熟した品格と静けさをたたえた男のたたずまいを、美しい映像で描いている。

【編集部MEMO】
「スーツが似合う人」と題して制作された「D'URBAN」55周年記念CM。
ニュージーランド産の高品質メリノウールを用いたスーツをまとう向井理が、隠れ家バーでのひとときを静かに演じている。
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