10月1日、「第78回広告電通賞」の贈賞式がグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールで開催された。総合賞にはサントリーホールディングスが選出され、同社は2年連続・通算27回目の総合賞受賞となった。
サントリーは「フィルム広告」「OOH広告」「エリアアクティビティ」の3部門で最高賞を獲得し、さらに2部門で金賞、4部門で銀賞に輝いた。

広告電通賞とは

広告電通賞は1947年(昭和22年)に創設された、日本で最も歴史のある総合広告賞で、「広告電通賞審議会」によって運営されている。

優れた広告コミュニケーションを実践した広告主を顕彰し、日本の産業・経済・文化の発展に資することを目的に、全国の広告主、媒体社、クリエイター、有識者ら約500人の選考委員により選定される。

第78回は2024年4月~2025年3月に実施された広告コミュニケーション作品(※一部部門は2024年3月開始)を対象に、応募総数1274作品から63点の入賞作品が決定した。

開会の挨拶

開会にあたり、広告電通賞審議会の三村明夫会長は、受賞各社への祝意とともに、「今は変革の時代。デジタル化やAIの進展で価値観が多様化する中、広告は生活者に真実をわかりやすく伝え、社会課題の解決や暮らしの向上に貢献する役割が求められている」と語った。

今回の入賞作品については、「消費者や生活者に向き合う姿勢や共感、多様性の尊重を示した作品が多く、リアルに生活者と接する場面での広告が特徴的だった」と紹介。さらに、広告の歴史的意義に触れ、広告電通賞が今後も日本の産業・経済・文化の発展に貢献していく姿勢を示した。
選考経過・審査報告

続いて、広告電通賞審議会の大平明理事長が選考経過と審査報告を行った。大平氏はまず、2024年の国内広告費が7兆6703億円に上り、3年連続で前年を上回ったことを紹介。

マスコミ4媒体の広告費も3年ぶりに前年を上回り、インターネット広告がさらに成長するなど、市場全体が成長・活性化している状況に触れた。

その上で「広告があるべき姿とは、広告主の思いをいかに正しく伝え、生活者に共感し体験してもらえるかにある」と述べ、今年の入賞作にもその工夫が随所に見られたと評価した。


大平氏はまた、受賞作を社会に共有し広めていく意向を示し、「今日の場を通じて新しいアイデアや取り組みに触れてほしい」と呼びかけた。

総合賞受賞挨拶

総合賞の受賞時には、サントリーホールディングスを代表し、執行役員 コミュニケーションデザイン本部長の鈴木あき子氏が登壇。「2年連続の受賞を心から嬉しく思うと同時に、この一年の取り組みが間違っていなかったと確認でき、ホッとした気持ちもあった」と心境を語った。

続いて、最高賞を獲得した自社の作品に触れた。フィルム広告部門とOOH広告部門で最高賞となった「天然水」については「大自然と命をつなぐブランドとして、次世代への想いや、美味しさを未来に届けるメッセージを託した」と紹介。

さらにエリアアクティビティ部門で最高賞を受賞した「Beサポーターズ!」については、人生100年時代をテーマに「体の健康だけでなく心の健康も含め、ウェルビーイングに寄り添う活動」と位置づけ、介護職員やJリーグと連携して進めてきた取り組みだと述べた。

また鈴木氏は「時代やAIなどのテクノロジーなどの背景から、広告の環境は変わってきているが、お客さまの心を動かすという本質は変わらない」と強調し、「広告は人生の応援歌であり続けたい」と今後への決意を示した。

閉会挨拶

閉会にあたり、電通の佐野傑 代表取締役 社長執行役員が登壇。総合賞や特別賞を含む受賞各社に祝意を表し、広告主、媒体社、プラットフォーマー、クリエイター、制作会社、選考委員、運営スタッフなど関係者すべてへの感謝を述べた。

受賞作については「環境保護や高齢化、家族、多様性といった現代の課題が浮かび上がると同時に、それに向き合い解決を試みる姿勢や深い洞察に基づくアイデアが感じられた」と振り返った。

さらに「広告は、クリエイティビティとコミュニケーションの力で社会へと貢献するものである」と信じているとし、クライアントと共に未来を創り開くことができるよう歩み続けていく姿勢を示して挨拶を締めくくった。

今回の贈賞式では、時代の変化を映し出す多様な広告が表彰された。
総合賞を受賞したサントリーをはじめ、各受賞作はいずれも生活者に寄り添い、新たな価値を提示するものだった。広告の力が社会の未来を形づくることを改めて示す場となった。

また主要カテゴリーの受賞(総合賞・最高賞・特別賞・SDGs特別賞)は以下の通り。なお受賞一覧は「広告主名・商品・サービス名/作品名」の順で表記(総合賞のみ広告主名)する。

総合賞:サントリーホールディングス

プリント広告 最高賞:ユニクロ「父の日プロモーション/3人のお父さんたち」

オーディオ広告 最高賞:味の素「企業広告/日本語教室篇」

フィルム広告 最高賞:サントリーホールディングス「天然水/大自然を味方に」

OOH広告 最高賞:サントリーホールディングス「天然水/大自然を味方に」

ブランドエクスペリエンス 最高賞:マイナビ「マイナビバイト/座ってイイッスPROJECT」

エリアアクティビティ 最高賞:サントリーホールディングス「Beサポーターズ!プロジェクト企画/Beサポーターズ!プロジェクト」

イノベーティブ・アプローチ 最高賞:長崎市「世界遺産(軍艦島)/PLAY THE PRESERVATION」

特別賞:特定非営利活動法人 八王子視覚障害者福祉協会「ENTOUCHABLE MUSEUM -超さわれる美術館-/ENTOUCHABLE MUSEUM -超さわれる美術館-」

SDGs特別賞:一般社団法人 あすには/国立大学法人 東北大学他40社「#2531年佐藤さん問題/Think Name Project」
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