井上の破壊力抜群のパンチを身をもって味わっているモロニーが、その衝撃を振り返っている。(C)Getty Images

 5月6日に迫る世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)と元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)のタイトルマッチに対する関心は日増しに高まっている。

 舞台となるのは、東京ドーム。同会場でボクシングの世界戦が行われるのは、1990年2月11日にマイク・タイソンとジェームス・ダグラス(ともに米国)がヘビー級王座戦を繰り広げて以来、34年ぶり。そんな世界的に見ても歴史的な興行で、「モンスター」と称される日本人チャンプがメインを張るのだから娯楽性は尽きない。

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 もっとも、下馬評は井上の断然優位という見方が強い。プロキャリア26戦無敗、23KOと図抜けた戦績を残す31歳は、パワー、スピード、メンタルなどありとあらゆる面で充実。敵なしの王者に挑むというプレッシャーに苛まれるネリが付け込む隙はないと見られている。

 井上優位の評価は今興行に参戦する名手も口にする。WBO世界バンタム級10位の武居由樹(大橋)との防衛戦に挑むWBO同級王者ジェイソン・モロニー(オーストラリア)だ。

 自身にとっても大一番が迫るなか、米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』のインタビューに応じた33歳は「すごい戦いになる」と指摘。「ネリは生き残るための戦い方をしない。絶対に勝ちにいこうとするからだ。彼はワイルドで、かなり強い。

日本で王者を破った経験もある」と前置きしたうえで、こう断じた。

「ネリがイノウエを攻める瞬間はあるかもしれないけど、時点でスーパーバンタム級にイノウエに勝てる選手は誰もいない。僕は彼に別次元の圧倒的なパフォーマンスを期待しているからね。今まさに絶好調だし、ますます良くなっている。イノウエはフルトン戦でも印象的だったが、タパレス戦ではもっと印象的だった。ネリも止めるさ」

 怪物の凄みは、身をもって体感している。

2020年11月に米ラスベガスで井上と対峙したモロニーは、7回に強烈な右カウンターを頭部に被弾。「耳の中で何かが揺らいでいるのが分かった」と膝から崩れ落ちていた。

 だからこそ、「打ち合いでイノウエに勝てる選手はいない」と断言するモロニーは、「一瞬でネリを捕まえる」と続ける。

「ネリもいいパンチを打つし、フェザー級に上がる前のイノウエと対戦できる限られた選手ではある。だが、イノウエには及ばない。僕はその一発がどんな感じかを身をもって知っている。

決していいもんじゃないよ」

 井上の怖さを熟知するモロニーの言葉は、果たして現実のものとなるのか。世界が熱視線を注ぐ一戦に対する緊張感が高まってきている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]