一級品の守備を武器に、田中はどこまで飛躍できるだろうか(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext

 開幕から健闘を続ける中日で欠かせないピースのひとりが背番号2・田中幹也だ。

 かつての名二塁手・荒木雅博氏の番号を背負う2年目内野手は、開幕からセカンドのポジションを保持。

走攻守全てで高いレベルのプレーを見せているが、特に守備は絶品。持ち味のスピードを活かしたフットワークの軽さと反応の良さで、あらゆる打球をさばき、アウトの山を築く。

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 人呼んで「令和の忍者」。NPBの二塁守備において、2010年代は菊池涼介(広島)の時代だったが、2020年代は田中幹也が時代を切り開く可能性を秘めている。

■魅力が凝縮された東京ドームでの活躍

 4月25日の巨人戦(東京ドーム)は、田中の魅力が凝縮されていた。

 守備では序盤に好守連発。

初回に坂本勇人、2回は丸佳浩の打球をアウトに仕留めた。

 前者はマウンドでバウンドが変わったところを回り込みながら処理、身体をよじりながらのジャンピングスローを披露。後者は正面を襲う打球を後ろに引きつつ倒れ込んでの捕球。躍動感に溢れ、いわゆる「映える」守備を見せた。

 打撃では4回先頭でレフト線への二塁打。毎年手を焼いている相手先発・菅野智之を攻略する一端を担った。

 圧巻は二塁打を放った直後の走塁。1死後、中田翔が三塁を強襲する打球を放つと、一度はライナーバックした田中が再度ギアを上げて三進。三塁を守る坂本勇人も反応よくグラブを弾き、ボールが転がったのは数メートルだろうか。それでも田中は進むのをやめず、三塁ベースを勝ち取った。

 常人では考えられない判断と脚力でチャンス拡大――。これも大きな武器だ。

■新人王&GG賞に必要なのは「チームへの貢献度」

 大学時代に潰瘍性大腸炎を患い、大腸を摘出。ルーキーイヤーには右肩脱臼と、田中は多くの試練を乗り越えてきた。今も体調面を考慮され定期的に休養日が設けられている(※直近では4月29日のDeNA戦に設けられた)が、本人や首脳陣の本音は「毎試合出場」だろう。

 攻撃面では、田中が上位打線で引っかき回して中軸が返す。守備面ではセンターラインの一員として、一つでも多くアウトを取る。少ない得点を守り切る野球の中日においては、田中がいるかいないかでチームが大きく変わるほどの存在感となっている。

 もしこのまま年間通しての出場を続けられれば、新人王やゴールデン・グラブ賞の受賞も夢ではない。そのためには個人の成績はもちろん、チームの上位進出も必須になるだろう。打率や本塁打といった分かりやすい数字で勝負する選手ではないため、チームへの貢献度が最大のアピールポイントになると考えられるためだ。

 実力は十分に見せている。あとは身体がどれだけ持つか。田中幹也の今後は、本人の体調管理と首脳陣のマネジメントにかかっている。

[文:尾張はじめ]