満塁本塁打で意地を見せた度会。9回の守備では涙も見えた(C)産経新聞社

 その目には熱い涙が光っていました。

 DeNAのドラフト1位ルーキー・度会隆輝外野手です。4月26日、横浜スタジアムでの巨人戦。8回、1点を勝ち越し、なおも二死満塁のチャンス。社会人野球・ENEOSの先輩となるサウスポー・高梨雄平投手から、打った瞬間それと判るグランドスラムを右翼席にたたき込みました。

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 9回、外野守備に就く度会の目は、確かに潤んでいました。打率は急降下し、ベイスターズファンの間でも「打てない1番打者」に対する容赦ない批判がSNS上に投稿されていました。

打順もこの日、8番に降格。そんな逆境での「一発回答」。情熱あふれる度会のこと、熱いものがこみ上げてきたのも理解できるところです。

 過去に目を転じてみれば、この「試合中の思わず涙」こそ、超一流の証明とも言えるのです。日本プロ野球史に残る涙、涙の名シーンを振り返ってみます。

【清原和博】
 1987年の日本シリーズ第6戦で、その名場面は生まれました。

 西武が3勝2敗で迎え、第6戦もリードしたまま9回2死と、日本一まで「あと1人」。その時、一塁の守備に就いていた高卒2年目の清原選手が泣いているのです。セカンドの辻発彦選手が清原選手に近寄り、声をかけるシーンは語りぐさです。

 1985年ドラフト会議で巨人からの指名を待ちわびながらも、その巨人は早大進学を公言していたチームメートの桑田真澄投手を1位指名した――そんな経緯もあり、清原も思わず感極まったのでしょう。日本シリーズがデーゲームで行われていたあの頃。所沢の夕焼けとともに、ファンの脳裏に焼き付いています。

【上原浩治】
 1999年10月5日、神宮でのヤクルト戦。巨人の黄金ルーキー・上原投手が20勝を成し遂げられるのか、球場は異様な興奮に包まれていました。すでに中日の優勝が決まっており、この夜は「消化試合」。しかし、ホームランキング争いは過熱しており、ヤクルトのペタジーニ選手が42本、松井秀喜選手が41本と1本差だったのです。

 松井選手を敬遠気味に歩かせるヤクルトベンチに対して、上原投手は第1打席、第2打席ともに勝負でノーヒットに封じていました。そんな中、第3打席に巨人ベンチからの指示は「敬遠」。

四球で歩かせた上原投手は涙を見せ、マウンドの土を蹴り、怒りと悔しさを露わにしたのでした。

 若き日の涙は、超一流への道への第一歩。度会選手の負けん気が人一倍であることからも、今後の進化がとても楽しみです。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]