モロニーを強打で打ちのめした武居。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 大舞台で王者の牙城を打ち崩した。

 5月6日、東京ドームでボクシングWBO世界バンタム級12回戦が行われ、WBO世界同級10位の武居由樹(大橋)が、王者のジェイソン・モロニー(豪州)を判定で撃破。4万人を超える観客が詰めかけた会場を沸かせた。

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 経験豊富な王者に対して「バチっと倒して勝ちたい」と意気込んだ武居。この元K-1王者に「彼のキックボクサーとしてのスキルはボクシングでも活かされている。かなりトリッキー」と警戒を強める33歳の王者にも堂々と挑んだ。

 序盤こそ独特の間合いから放つ低位置からのボディーが2回途中にローブローで減点を取られるアクシデントはあった。

それでも武居は怯まずに攻勢を強めていく。すると、後手に回ったモロニーは、警戒していたはずの変則的な攻撃に苦戦。中盤以降も付け入る隙も見出せずに、主導権を握られ続けた。

 KO勝利とはいかなかった。それでも5回途中の左フックや6回終盤の右フックなど決定打を繰り出してポイントを稼いだ武居は、最終回の残り20秒で、粘るモロニーとの打ち合いとなったが、気力で粘って判定勝ち。K-1から転向して約4年。

ボクシングでは全8戦KO勝利と流石のポテンシャルを発揮してきた若武者は、初めて挑んだ世界タイトルマッチで結果を出した。

 警戒心を強く保ちながらも、終盤には焦燥感から粗さを見せたモロニー。米メディア『Sporting News』のトム・グレイ記者が「パワーとレフティーの不自然なスタンスがモロニーに悪夢をもたらした」と指摘したように33歳のチャンプは、武居のトリッキーさに翻弄された。この文字通りの完敗にリング上での表情は曇ったままだった。

 これでバンタム級は主要4団体全てで日本人が世界王者となった。WBCは3階級制覇の中谷潤人(M・T)で、WBAは井上拓真(大橋)、IBFは今月4日に名手エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を破った西田凌佑(六島)だ。

 日本人王者たちがひしめくバンタム級戦線で、異彩の放つ武居の快進撃はどこまで続くのか。今後の統一戦の行方に楽しみは増すばかりである。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]