いずれも2階級での4団体統一を果たした井上、クロフォード、ウシク。彼らの中から「最強」を決めるのは容易ではなく……。

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 誰もが認める「世界最強」を巡る議論が白熱している。キッカケとなったのは、現地時間5月18日にサウジアラビアの首都リヤドで行われたボクシングのヘビー級世界4団体統一戦だ。

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 サウジアラビアの王族で、娯楽庁の長官であるトゥルキ・アラルシク氏が主催した今興行のメインマッチとして組まれた一戦では、WBA・IBF・WBO統一王者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)が、WBC王者タイソン・フューリー(英国)に12回判定勝ち(2-1)。僅差判定の末に白熱の勝負は決していた。

 巷で「不死身」の異名で親しまれるフューリーに対し、9回に左フックからの猛ラッシュでダウンを奪ったウシク。この決定打で勝負にケリをつけた37歳は、男子ボクシング史上3人目の2階級での世界4団体統一という快挙を達成。

さらにヘビー級史上初の世界4団体統一王者という金字塔も打ち立てた。

 大半のラウンドで主導権を握った圧倒的なパフォーマンスでの勝利によって、世間ではウシクを評価する声が一気に高まった。それにより階級を超えた格付けランク「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」を巡る議論も白熱。

 これまで上位2強と見られていたWBAスーパー・WBC・WBOスーパー世界ウェルター級統一王者のテレンス・クロフォード(米国)と、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)の間、いや上にウシクを入れる意見が相次いだ。

 米ボクシング記者協会員で、専門メディア『Fight Hype』のショーン・ジッテル記者は、自身のXで「ああ、私はおそらくウシクよりクロフォードとイノウエを好んでいる。彼らのボクシングスタイルのほうが美しく、芸術的であると感じるからだ」と持論を披露。

そのうえで、こう断じている。

「でも、PFPはウシクが1位だ。クロフォードが階級を上げてカネロに、イノウエが階級を上げてタンクに勝つのと同等なことを彼は成し遂げたんだよ」

 ジッテル記者がそう論じるのには明確な理由がある。というのも、ウシクはフューリーに対して身長差15センチ、体重差は12.9キロという体格差があったのだ。いくらヘビー級とはいえ階級制スポーツにおいて両雄の差は小さいものではなく、ウシクがダウンをもぎ取ったのは凄まじい結果とも言える。

 また、ファン同士の議論も白熱する。

英スポーツ専門ラジオ『talk SPORT』のマイケル・ベンソン記者が自身のXに「ウシクはクロフォードとイノウエを抜いてボクシングのパウンド・フォー・パウンド・キングになったか」と投稿。これに「イノウエは最高の戦士だが、PFPはウシクが値する」「残念ながらこればっかりはウシクだ」「ウシクは少なくともイノウエに次ぐ2位ではある」「難しい。でも、決して意地悪でも何でもなく、クロフォードとイノウエはターミネーターだ」と様々な意見が相次いだ。

 甲乙つけがたい3人の“偉大なる王者”を中心にした「最強」を巡る論争。その余波はしばらく収まりそうにない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]