マンガアプリ「サイコミ」で連載中の同名コミックを実写化したドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS、TBS/毎週火曜深夜)が「ドラマイズム」枠で放送スタート。4月12日(火)の深夜に放送された第1話では、19歳の女子大生でありながら、“レンタル彼女”としての顔を持つ雪(吉川愛)にフォーカス。
■雪の二面性を演じきった吉川愛の表現力
東京で生きる女子たちを、オムニバス形式で描く同ドラマ。第1話の主役は奨学金をもらいながら大学に通い、日々生き抜くために“レンタル彼女”として働いている大学生・雪(吉川愛)だ。
彼女のプロ意識の高さには、脱帽するものがある。客から「妹系のかわいい彼女と初々しいデートを」とリクエストされたときには、アイボリーに黒ドットのワンピースに、コルク調の素材が目を引くレースアップシューズを着用。卑屈な言葉を浴びせられても「そんなこと言わないで…? 彼女でしょ?」と消え入りそうな声で話し、うぶな女子を再現。見事に客の心をつかんだ。
その一方で、プロ彼女を演じていない時の雪の心は冷え切っている。親からネグレクトを受けた過去を「ただ、生きていくのに精一杯だったから」と回想するシーンでのナレーションは人前で振る舞う雪の声よりも1トーン以上低い。彼女の中にあるコンプレックスが簡単には拭えないこと、誰のことも信じられない冷めた部分と1人で生きていかなければと自分を守る“持ち合わせるしかなかった“強さを感じさせた。
さらに、雪が物語の中盤、レンタル彼女の雪を知る客・壮太と出くわすシーンは圧巻。顔の“痕”を隠さず深く帽子を被っていたこともあり、壮太から話しかけられた時に戸惑う雪。
第1話の中で、レンタル彼女としての雪と、コンプレックスだらけの雪を、さまざまな表情で見せた吉川。彼女の表現力の高さが、救いようのない闇を抱えたヒロイン、雪をコミックの中から現実のものにしたのだと感じた。
■歩み寄りたい壮太と、負のループに陥る雪
第1話を語る上で欠かせないのは、レンタル彼女のサービスを利用する壮太だろう。壮太は、「彼女ができた」とうそをついてしまい、友人とWデートに行くことになったのを理由にサービスを利用した新卒のサラリーマン。そこで雪と出会い、心が惹(ひ)かれていくという役どころなのだが、「本気?」と疑うほどにピュアすぎる男性なのだ。
その純真さは、時として残酷だ。デートの別れ際、壮太が「今日、1回も素で話していないよね?」と指摘するシーン。冷静に考えればわかる、誰かの彼女を演じている雪にありのままの姿を求めるのはお門違いだということを。しかし、壮太はそういう発言を優しさで言ってしまうような人なのだ。
そんな彼の悪気のない純真さに、雪は心を惑わされる。水族館でのデートのシーン、壮太の天然な部分を見て笑顔になった後で「同い年くらいの男の子と普通に付き合っていたら、こんな感じなんだろうね…」とつぶやいた雪は、レンタル彼女であることを忘れて、素でつぶやいているように見えた。
しかし、二人の恋が歩み寄ることはない。雪を救おうと真っすぐとした目で「雪ちゃんが少しでも楽できるなら、雪ちゃんが少しでもお店を辞められるように」とお店に通うことを伝える壮太。
生きていくためにレンタル彼女をやるしか選択肢がないことを知らないまま、勝手に良かれと決めてしまうところは少々的外れだ。この言葉を聞いた時、雪は喜ぶどころか表情を曇らせる。“普通”の幸せをつかむことが、どんなに難しいことなのかという現実を改めて突きつけられたのだろう。
もちろん彼に悪気はない。だからこそ、心を通わせかけた二人の境遇が違いすぎることが明確となり、歩み寄ることがないのだろうと感じさせた。
■イメージ通りすぎるキャスティングを再確認
本作の実写ドラマ化が決まった時、あまりにも豪華なキャスティングにSNSが沸いたのを覚えている。その一方、コミックで感じた言葉にならない感情を実写でどのように表現するのかは気になるところだった。
しかし、番組のオープニング映像を見て、その不安は払拭された。
特に第2話の主人公となる、リナ(横田真悠)はリナそのものだった。自分の知らないところで「カワイイ」と言われることに嫌悪感を表す雪に対して、弾むような声色で「リナはかわいいって言われたら純粋にすっごく嬉しいけどな」と100点の答えを返す姿を見て「こんなにかわいいセリフとしゃべり方を、実写で再現できるものなのか…」と感動した。
実際に、放送後のSNS上では「原作に忠実だ…」「思った以上に再現度が高い」など絶賛する声も。第2話以降、どんなヒロインたちを見られるのか、さらに期待が高まる。