仲野太賀が主演を務め、草なぎ剛が共演するドラマ『拾われた男』(ディズニープラスで見放題独占配信中)。俳優・松尾諭の同名著書を映像化し、特別な才能はないものの強運と縁に恵まれた俳優志望の男が他人に“拾われ”続けることで夢も恋もつかんでいく、本当にあった波乱万丈なサクセスストーリーとなる本作で、兄弟役を演じている仲野と草なぎにインタビュー。
【写真】撮影中もカメラ談義やおしゃべりが止まらない! 仲野太賀&草なぎ剛
■「フィルムカメラ」と「ファスティング」――兄弟のように影響を与え合う関係に
――最初、脚本を読んだ際、どう感じましたか?
仲野:まず松尾さんがこんな人生を歩まれていたことに驚きました。最初は若い俳優のサクセスストーリーのようにも思えますが、家族や恋人、兄弟との関係を描いたヒューマンドラマに変わっていて、思いもよらない方向に展開していくのがすごく面白くて、ぜひやってみたいと思いました。
草なぎ:何も言うことないぐらい全部言われたので、そのまま僕のコメントにしてください(笑)。
仲野:すみません(笑)。
草なぎ:僕もすぐやりたいと思いましたね。松尾君とは、舞台『バリーターク』で一緒だったんです。原作も面白かったし、松尾くんのお兄さん役でご縁があるなと感じて。また、コロナ禍の中、撮影でアメリカに行けたら発見することがあるかなと、すごくドキドキワクワクしました。
――持ち前の人を引きつける魅力と強運で、他人に“拾われる”ことで人生を切り開く主人公・松戸諭を仲野さん、その兄・武志を草なぎさんが演じますが、演じる上で意識していたことは?
仲野:松尾さんの実話がベースになっている作品ですが、本作の主人公・松戸諭の人生をまっとうしようと思っていたので、そこまで松尾さんに寄せにいこうとは意識していなかったんです。でも、頭の片隅にどこか松尾さんの顔がちらついたり、松尾さんだったらこんな動きするかもというのがどこかにあって。すごくヒントをもらいながら演じていた気がします。
草なぎ:僕も同じです(笑)。
仲野:いやいや、違う役ですから!(笑)
草なぎ:(笑)。僕も松尾君のお兄ちゃんの写真を拝見しましたが、松尾君も好きにやってほしいと言ってくれて。どこか意識しているところもありつつも、オリジナルで何か生み出せたらと思っていました。武志はつかみどころのない不思議な人間。弟は小さい時からお兄ちゃんに届かない様子だったので、お兄ちゃん感は出さず、のほほんとしている感じで演じました。
――お2人から見て、諭と武志はどんな兄弟でしたか?
仲野:この作品は全10話をかけて、兄弟の距離が少しずつ変わっていく話でもあって。弟の目線から言うと最初は、肉親だからどうしようもないけど好きになれないし、気持ち悪くも何だか体温があるような距離感なんです。僕も次男なので、兄と同じ場所で生まれ育ったのに違いを感じる部分があり、そういった“ざらつき”がベースとしてあるのかなと思いました。物語が進むにつれ、諭は兄の知らなかった姿に触れ、改めて兄弟関係を捉え直していきますね。
草なぎ:海外でのロケを経て、武志は僕が思ったよりいいやつになった気がして。
――お2人がもし兄弟だったらどんな兄弟になりそうですか?
草なぎ:太賀くんと行ったアメリカのロケは、すごく楽しかったんです。ほんわかしていて、本当に助けてもらって。海外旅行に行ける兄弟だったらすてきだなと思いますね。あと、太賀くんが趣味で写真をしていて、僕も影響を受けてフィルムカメラを買いました。
仲野:えっ! 買ったんですか!?
草なぎ:そうなの(笑)。カメラを撮っている姿がかっこいいなと思って。太賀くんがくれたアメリカのロケでの思い出を1冊にまとめたアルバムを見たらすごく腕があって、かっこいいなと思って日本に帰ってからすぐ調べたの。太賀くんが使っていたPENTAX 67は重めだったから、それに似ていて軽いタイプのPlaubel makina67を買い、今ハマっています。弟の影響を受けまくりですね(笑)。
仲野:うれしいです!
草なぎ:あと、アメリカは珍道中だったよね。僕が入国審査できなくて、太賀くんが助けてくれて。
仲野:草なぎさんは、ずっとファスティングをされていましたよね。その時、教えてもらった酵素ジュースを使い、僕も10kgくらい痩せました。
草なぎ:本当に痩せたよね。かっこよくなったよ!
仲野:ありがとうございます! 草なぎさんは大スターなのに、めちゃくちゃ優しくて感動しました。キッチンがあるホテルだったので自炊されていたのですが、僕にも「つみれ鍋できたよ。食べる?」と声かけてお裾分けしてくださったり結構な頻度でご馳走になっていました。
草なぎ:太賀くんの作っていたカレーもおいしそうだったよ。一緒にスーパーに買い出しにも行って、本当に楽しかったね。海外だと頼る人がいると心強いから、自然と仲良くなって。本当に忘れられない思い出になりました。
――本当の兄弟みたいですね。今回共演してみて感じたお互いの役者としての魅力を教えてください。
草なぎ:太賀くんはやっぱりギャップかな。いろんな引き出しを持っていて、本当に幅広い役ができる。これからがすごい楽しみだと思います。
仲野:ありがとうございます。草なぎさんは本当に魅力の塊。今も気付いたら草なぎさんのことばっかり見てしまうし、惹(ひ)きつけられてしまうんです。吸引力がすごくて。僕も若い人にそう思ってもらえるような役者になりたいです。
■チャンスをつかむためには“元気”と“行動”
――金もツテもないけれども、強運と縁に恵まれた俳優志望の男が他人に“拾われ”続けることで、夢も恋もつかんでいくお話ですが、ご自身が「強運と縁に恵まれている」と感じたエピソードや人生の転機になった瞬間は?
仲野:たくさんの方との出会いのご縁と運でここまでこれたので、どこから感謝していいか分かんないぐらいで。本当にいろんな人に助けてもらったし、救われました。
草なぎ:僕はいろんな人に拾われているから、こうやって毎日楽しく今過ごせていると思っていて。なので、選べないのですが、今思い浮かんだのは『いいひと。』(フジテレビ系)の星護監督ですね。星さんはすごくよくしてくれたし、初めての連続ドラマの主演で本当にうれしかったんです。あと『笑っていいとも!』(フジテレビ系)をはじめ、タモリさんにはすごくお世話になっているので、拾われたではないですけど、それに近い感覚はあるかな。
――売れていない時代もあったと思いますが、今考えてその時だからこそ得られたことは?
草なぎ:僕は別にないかな。当時は後先考えてなくて。仲間もいたので楽しくて、のんきな感じでしたね。
仲野:僕はいっぱいあって、その時間が今の自分を作っていると思います。時間があったので、自分でいろんな所に出向いて自分を知ってもらったり、何かに触れてみたり。その時に行動力が養われたと思いますし、今の自分に残っています。
――チャンスをつかむために意識していることはありますか?
草なぎ:やっぱり元気でいることですね。僕も今年7月で48歳になり、手を伸ばすと50歳。周りのみんなは腰や膝が痛いとか言い出していて。なので、腰や膝が痛くならないよう動けるようにしています(笑)。健康じゃないとロケにも行けないし、ストレッチはこまめにしていますね。
仲野:僕は行動することです。動かずには何も得られなかったと思うので、好奇心が向いた方向に尻尾振って行くぐらいがいいような気がします。
――売れない役者だった諭が航空券を“拾い”、“拾われた”ことからつながり始めたたくさんの人々との“縁”をつないでいきます。人との縁をつないでくために大事にしていることは?
草なぎ:自分1人だと何もできないので、本当に縁が全てだと思うんです。その中で、僕は自分に無理しないようにしています。それこそ嫌われたら嫌われたでいいかなと思っていて。この年になると、自分の好みも決まってるし、できないことはできないので、40歳を超えたあたりから自然体でいることを心がけています。仕事においてマナーとしてきちんと接することは大事ですが、わりかし無理しないことで、深い縁がつながっていく気がしますね。
仲野:確かにそうですね。僕はつながれてばっかりではなくて、縁をつないでいくのも縁をたぐり寄せる1つかなと思っています。僕、人と人をつなげるのが大好きで。その中で生まれるものを見てニヤニヤしたいタイプなんです(笑)。自分ももらったら渡すことができたらいいし、無理のない範囲でみんなでつながれたらいいなと思います。
(取材・文:高山美穂 写真:小川遼)
ドラマ『拾われた男』は、ディズニープラスにて見放題独占配信中。