櫻坂46の二期生として活躍する井上梨名、大沼晶保、守屋麗奈。井上は“二期生”として、大沼と守屋は“新二期生”として加入した経緯があり、加入時期のズレにより、当初は“同期でありながら気まずい関係”だったという。

しかし、グループの改名を経た新たな経験を通じて、互いの距離感は変化。今では「隣にいてくれるだけで安心する」ほどの仲になった。

 さらには、1stアルバム『As you know?』の活動で卒業する尾関梨香ら、一期生メンバーの卒業が相次ぐ中でも、「甘えてばかりはいられない」と強い結束力を見せる。インタビュー前編では、アルバム制作のエピソード、加入から現在までにあった二期生同士の変化に迫った(前後編の前編)。

【写真】今では「隣にいてくれるだけで安心」井上梨名・大沼晶保・守屋麗奈 撮り下ろしグラビア

■“野生”と“理性”のチームで表現した「摩擦係数」MV撮影の舞台裏

――1stフルアルバム『As you know?』は、二期生の皆さんがそろってフルアルバムの制作に初参加した作品。リリースへの思いは?

井上:発売の話を聞く前、「次はアルバムかな?」と予想していたんです。CDやブルーレイに加えて、フォトブックレットもあって盛りだくさんで。沖縄で撮影したアートワークが、個人的にめっちゃ好きです。完成品を何回も見返すほど、いい作品になったと思っています。新曲も増えたのでライブの構成も多彩になりますし、グループの新しい色を作っていけると思っています。

守屋:加入から2年で、アルバムを出せることに感謝しています。この作品を通して、櫻坂46をより多くの方々に知っていただければという思いで、制作させていただきました。
青写真のジャケットは珍しいので、知らない方にも目を止めていただけると思いますし、グループのクールな印象とは異なる、笑顔が多めのジャケット写真も魅力の1つです。

大沼:制作の始まりが、ジャケット撮影だったんです。レコーディング前だったので「こういう感じなんだ」とイメージしていました。青写真も笑顔での撮影も「新しい櫻坂46だな」と思って。私たちの曲は、カッコいい曲からかわいい曲まで幅広いですし、聴いてくださった方に櫻坂46の世界観を伝えられるように、1曲1曲を大切にしていきたいです。

――井上さんと守屋さんはリード曲「摩擦係数」に参加。静と動を強調したMVの撮影はいかがでしたか?

守屋:今回、ブレイクダンスに初挑戦したんです。これまでの振り付けとは感覚が違って、足の動きを体になじませるのが大変でした。事前にブレイクダンスが得意なダンサーさんに教わって、手や足に負担がかかって痛かった思い出もありますけど、できないと悔しいから、参加メンバーみんなで頑張りました。

井上:野生と理性の対比が曲のテーマで、森田ひかる率いる“野生チーム”と山崎天(崎は正式には「たつさき」)率いる“理性チーム”に分かれているんです。野生チームの子たちがブレイクダンスの担当で、私のいる理性チームは野性的な動きとの対比を表すために、キビキビした動きや、ズレを許さないダンスに挑戦しました。

見た目では簡単そうですけど、みんなでダンスの高さやバランスを合わせるのは難しかったです。
モノづくりに懸ける思いの強い子が多くて、撮影現場ではわずかなズレを気にしながら臨んで。1つのモノを作ることに熱くなれましたし、監督をはじめ撮影スタッフの皆さんとも一丸となっていいモノを作れるのは幸せだと感じました。

■同期でありながら気まずい関係性 距離感が変化したきっかけは?

――前身の欅坂46時代、井上さんは2018年11月に“二期生”として、守屋さんと大沼さんは2020年2月に“新二期生”として加入しました。グループは2020年10月に改名しましたが、当初はまだ、加入時期のズレにより、二期生と新二期生の間に壁があったそうですね。

井上:最初はちょっと距離があったかな。お互いに「気を遣わないで」と言いつつ、楽屋では、二期生と新二期生の距離が離れていたんです。間に机を挟んで座っていました。新二期生のみんなは、私たちより一期生さんの方が関わりやすかったのかなと思います。

守屋:二期生のみんなに敬語を使っちゃうし、どう話したらいいんだろうみたいな。うまくしゃべれてなかった。一期生さんは憧れの方々だから緊張はありましたけど、元からいた二期生のみんなと比べたら気まずさはなかったかもしれません。でも、今はもう家族よりも長い時間一緒にいるし、距離も縮まりました。


井上:気軽にご飯へ誘えるし、気まずさはなくなった(笑)。

大沼:フラッとご飯へ行ける仲になったし。今じゃ隣にいてくれるだけで安心する。

守屋:ライブが大きかったのかな。ポジションが近くなって、自然と話すようになっていった。

――関係性が変わるきっかけになったライブは?

大沼:1回目の「BACKS LIVE!!」(2021年6月)です。1ヵ月間、朝から晩までリハーサルがあって。元からいた二期生の3人、いのりちゃん(井上)やまつりちゃん(松田里奈)、(武元)唯衣ちゃんが場を引っ張ってくれて、互いに分からないことを教え合いながら仲良くなりました。

井上:当時は、振り付けを自分たちで覚える必要があって。ダンサーさんから教えてもらえるのはほんのわずかで、お互いに聞かないと成り立たないほどだったんです。みんなとにかく必死で、関係性も気にせず言い合うことが多かったです。

■悔しさもバネにした改名からの2年

――改名からの2年弱で二期生がフィーチャーされる場面が増え、ソロ仕事が増加するなど、環境が激変しました。
時間の使い方なども変わったと思いますが、環境の変化によりつらかった場面はありましたか?


井上:つらいと思ったことはないです。私は“無”の方が嫌なので、今の方がうれしいです。体力面で「ちょっと疲れてきたかも…」と感じるときはありますけど、お仕事の面でのつらさはなくて。コロナ禍で物事が進まなかった時期や、表題曲のメンバーへ入れなくて自分自身で「うまく行っていない」と思った時期のつらさはありましたけど、ライブや制作、テレビ番組やラジオといろいろなことに挑戦できているので充実しています。

守屋:どのお仕事も楽しいので、私もつらさはないです。いろいろなお仕事が重なり、ライブの振り入れが追いつかずに焦っていたとき、メンバーやスタッフさんが「大丈夫? 無理しないでね」と声を掛けてくれたときは救われました。あと、一期生さんに救われた思い出もあって。2ndシングル「BAN」のMV撮影で、うまく踊れずに泣いちゃったときがあったんです。そのときに(小林)由依さんが「間違えたところは使われないから大丈夫!」と言ってくださって、気持ちも楽になったし、その後の撮影も頑張れました。

大沼:私は、表題曲のフォーメーション発表日です。応援してくださるファンの方々に対して…(言葉を詰まらせる)。お仕事でつらいと思ったことはなくて、毎回、幸せだと思っているんです。
でも、シングルのフォーメーション発表日は…。(涙をこらえながら)メンバーは尊敬しているし、憧れの存在なので悔しいと思ったことはなくて、自分自身の足りない部分に悩んだりとか…。メンバーに救われると麗奈も言っていましたけど、フォーメーション発表日に表題曲へ選ばれず落ち込む私を励ましてくれるし、翌日からは明るく頑張れます。

井上:私も表題曲に入ったり入らなかったりを繰り返しているし、同じ気持ちかは分からないけど、表題曲のメンバーに入れるかどうかで、テレビ番組に出られるかどうかが決まるし、(表題曲入りしたメンバーとは)何か違うんだろうって…。メンバーに対する悔しさではなく、応援してくださる方への申し訳なさというか、どうすればいいのかという自分に対する悔しさはありました。

――悔しさもあった改名からの2年弱で、それぞれ成長した部分は?

井上:自分1人でじっくり考える時間が増えました。新しいモノを作っていく段階で「自分はどうしたらいいのかな」とか「今の自分に何ができるかな」とか。ラジオ番組『櫻坂46 こちら有楽町星空放送局』(ニッポン放送/毎週日曜23時)のメインパーソナリティを一期生の尾関(梨香)さんから継いだときも、番組を通して「何をしたいのか」と考えたんです。先輩方が作ってきた雰囲気の良さもあるけど、私が担当することで「何が変わって、櫻坂46をどう伝えていけるんだろう」と考えたりしています。

守屋:改名前と比べたら、積極的になれたと思います。以前は、テレビ番組へ出演したときに「これを言っても…」と思ってしまい、発言のタイミングを失うときがあったんです。でも、今は深く考え過ぎずに「言ってみようか」と考えられるようになりました。


大沼:イメージにないと思いますけど、極度の恥ずかしがり屋で…(苦笑)。学生時代は、授業中の挙手を鏡の前で練習するほどだったんです。いい意味で、みんなに笑われることも多かったんですけど、グループへの加入後は、『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京/毎週日曜24時35分)の収録で恥ずかしさを捨てられるようになりました。自分をさらけ出すではないけど「恥ずかしいけど、やっちゃえ。笑ってくれるならいいや!」みたいな(笑)。恥ずかしさは今もありますけど、自分の殻を破れているかなって思います。

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

 櫻坂46、1stアルバム『As you know?』は発売中。

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