原田ひ香の人気小説を原作に、『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』の脚本家・ふじきみつ彦が切なくもユーモアたっぷりに描く“終活青春グラフィティ”『一橋桐子の犯罪日記』(NHK総合/毎週土曜22時)が、10月8日よりスタートする。同居していた親友を失い、このまま孤独死してしまうのではという思いにかられ、余生を刑務所で過ごそうと“ムショ活”を開始する主人公・一橋桐子。
【写真】ファンへの感謝を語った岩田剛典
■久遠はとてもやりがいのある役柄
――松坂慶子さんの上司役で、ワイルドな風貌という岩田さんの役柄が紹介された際、SNSを中心に大きな反響がありましたが、久遠はどんな人物ですか。
まずはパッと見のビジュアルですね。普段と全然違うので、そこはすごく新鮮に感じていただけるのではと思います。役柄も、これまで演じてきたものと違うイメージなので、ファンの方にも楽しんでもらえるんじゃないかと。
久遠は主人公にとって、“犯罪計画のアドバイザー”的な感じかと思うのですが、大きな影響を与える人物だったので、とてもやりがいのある役柄でした。見た目はワイルドですし、もともと刑務所に入っていた過去があったりとか、ちょっと特殊ですよね。あとインテリな面もあって、〇〇〇(ぜひ本編でチェックを!)を目指していたとか。そこのバランス感はかなり特殊な人物だなとは思いつつも、人に対しての向き合い方がちょっと不器用な感じだったり、人間味のある、すごく普通の人だなとも思います。
――久遠をそういう入りから見て行くと、変わっていきますか?
最初は素性がわからないというストーリーでの立ち位置で進んでいくのですが、だんだん桐子に心を開いていきますし、その中でちょっとずつ人間性が見えてキャラクターになっていくということですよね。順撮りではなかったので変わるきっかけだけこのシーンだなと決めて、そこでの前後の芝居を意識しながら変えるという感じでした。
――脚本の面白さに惹かれたということですが、例えばどんなところですか?
親友を亡くしたお年を召した方が、残りの後生をどういう風に過ごしていくのか、また残された時間が限られた中での“幸せの在り方”だったりとか。今回の作品のテーマはある意味、日本における社会問題でもあると思います。高齢化社会においてどのように有意義に時間を使って、人それぞれの幸せをどういう風に見出していくのか、登場人物の複雑な絡み合いでそれを表現していくのだなと思いました。
――主人公は70歳ですが、岩田さんの中でも共感するところはありますか?
まだ自分が70歳になったときのことは想像できていないですけれど、きっと年代それぞれによって生きるモチベーション、生活のモチベーションって変わってきていると思うんですよね。
自分が10代の頃とは今違うモチベーションで生活してると思いますし。“今を生きる”というとかっこつけた言い方になりますが、今を一瞬一瞬紡いでいくことが、未来につながるかなというマインドで生活しています。70くらいになったら自分のやりたいこともある程度やりきって、ある程度いろんな景色をみて、いろんな人と出会って、そしてこの先自分の人生何を残していくか。これって普遍的なもので、誰しもがぶちあたる問題だと思うんですよね。今回の作品を通して、結局“人のために生きていることが幸せになるのかな”ということを感じました。
――共演された松坂慶子さんの印象について教えてください。
声が毎日心地よいですね。普段とお芝居されている姿とあまりお変わりないのではと思うくらい、ナチュラルに桐子を演じられています。
松坂さんは日頃から身体を鍛えてらっしゃるとおっしゃっていて、ずっと姿勢がすばらしくいいんですよ。現場ではジムの話とかの話をしました。疲れたところも見せずぴんぴんしてるので、尊敬しかないですよね。弱音吐いてられないなと思わされるような方だと
思います。
■11年目にソロ名義でアーティストデビュー「ファンの方への恩返し」
――このドラマの主人公は「犯罪計画を企てる」という大きなことを始めますが、岩田さんは最近始めた大きなことはありますか?
昨年ソロ名義でアーティストデビューさせて頂きまして、11年目にして。それはだいぶ遅まきながら、新しいことにチャレンジする姿勢っていうのを提示できてる活動になっているなとも思います。数年前の自分に『まさか自分が歌うことになるとは』…というのを伝えたいです(笑)。
――何かきっかけがあったのですか?
長年応援してくださってるファンの方々に、一つの恩返しのプロジェクトという意味あいがあって。自分の伝えたいメッセージだったりとか、歌を届けることで元気になってもらったりとか。自分が始めたことによって、ライブやイベントでファンの皆さんと集まる空間を作ることができるというのが、自分の中で大きなことだなと感じてプロジェクトを始めました。
――すごくファンの方々を大切にされている印象を受けました。
そうですね。どこまでいっても、ファンの方ありきのお仕事だったりするので。どんなに技術があろうが、見ていただけないということには僕らの商売は始まらない部分がありますので、本当に感謝をしてますね。ここまで来させてもらったことに対してもそうです。
――「デビュー10年を節目にして初めて歌を歌う」ということも、非常に勇気がいることだと思います。
やはりこれだけ世の中に素敵なアーティストの皆さんがいる中で、自分に何ができるのかと思ったのですが、でも自分が今まで歩いてきた道のりというのは、自分でしかやっぱり語れないと思うので。そういった思いを歌詞に落とし込んで、それを世に発信することができたらなと思いました。実際にやってみると『あ、自分はこんなことをもっと世の中に発信したかったんだな』と、改めて自分の内面を知ったというか。そういった意味で、自分への刺激にもなりましたね。
――ドラマの主人公・一橋桐子も、一歩を踏み出すことで大きく変わっていきます。
そうですね。踏み出してみることで、向き不向きも、好き嫌いもそうかもしれないし、やってみないと気づかないことってあるんだなっていうのはすごく感じますね。僕もやってみて『より何かを求めていく自分』というものに出会えたので、あぁ好きだったんだなって気づけたというか、それはすごく感じてますね。
■リーダーに必要なのは「圧倒的に人望」
――今回の役柄は“パチンコ店のパートリーダー”の役ですが、岩田さんは、リーダーに必要なことはどんなことだと思いますか。
リーダーは、圧倒的に人望だと思いますね。能力自体はそんなに高くなくていいと思っています。それを支えるのは周りの役目なんで、リーダーは圧倒的に人望。人望がないと、誰もやっぱり付いていけないですし、そこに尽きるかなと。あとはやはり決断ができるかどうかというのも1つありますね。それがいい決断であれ、悪い決断であれ、決断ができない人というのは、やはりリーダーも向いてないと思います。
――芸能界でのお仕事を通して、学んだことや気づいたことは、どんなことがありますか?
芸能界は、間違いなく“時代”を相手にしないといけない職業でもあると思っていて。同じこと、同じクオリティのものでも、違うタイミングで出すと同じ結果には結び付かなかったりする職業だと思っているんですね。
移り変わっていく時代を相手にしないといけない職業の中で、想いの部分だけは、やはりブレずにもっていることが、最終的には自分を支えてくれるのかなと感じています。一つ自分の軸、ショウビズが好きだったりとか、エンタメが好きだったりみたいな根本的な部分。人を元気にしたいとか、そういう部分は忘れずに情熱を持ち続けること。最終的には、それしかないのかなと感じますね。
――岩田さんにとっての今の軸という部分はなんでしょうか。
僕は好きでこのお仕事をやらせて頂いていますので。好きなことで生活できて幸せなんですね。そして、ファンの方々と接する機会の多い職業でもありますので、やはり喜んで頂いたりだとか、そういった声を感じられた瞬間って、とても嬉しい気持ちになりますし。
自分の社会的な存在意義というか、表に出る人間のある意味、使命というか。ここまでやらせてもらえたことも、本当に奇跡みたいなことだと思っていますが、せめてもの恩返しみたいなところで。自分を信じて応援してきてくれた方々が、悲しい思いして欲しくないなって自分は思っています。
――岩田さんの実感がこもった、素晴らしい言葉だと思いました。
いえいえ。好感度上げたいわけじゃないですけど(笑)。
――改めて、ドラマの見どころについて教えてください。
一言でまとめるのは難しいくらいに、色々な見どころがあるドラマだと思うのですが、本当に現代の日本の社会が抱えるような、人それぞれの悩みだったり、苦しみみたいなものをコミカルに描いている作品だと思いますし、人それぞれの“幸せの定義”を改めてこの作品を通じて考え直すことができると思います。でも基本コメディだと思うので、登場人物それぞれの濃いキャラクター像を楽しんでいただける、見ごたえのある作品になっています。1話をご覧いただければ、「最終話はどんな結末になるんだろう」とその後も毎週楽しみにご覧いただけると思います。
土曜ドラマ『一橋桐子の犯罪日記』は、NHK総合にて10月8日より毎週土曜22時放送(全5話)。