竹中直人監督が浅野いにおの漫画を実写化した映画『零落(れいらく)』が、2023年3月17日より全国ロードショーされることが決定した。これに併せて主演の斎藤工、竹中監督らのコメント、原作者・浅野による描き下ろしイラストが解禁された。



【写真】浅野いにお描き下ろしイラスト

 『ソラニン』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』などで知られる浅野いにおの同名漫画を映画化した本作。圧倒的な空虚感という極限状態を経験して初めて現れる、人気漫画家の本当の姿、漂流する“表現者”の魂の喪失と覚醒を描く。

 8年間連載してきた漫画が完結を迎え、“元”売れっ子漫画家となった深澤。次回作のアイデアも浮かばず、担当編集者からはぞんざいに扱われ、募る敗北感。すれ違いが生じていた妻との関係は冷え切り、漫画家として切望されることのない現実が始まった。時間を浪費するだけの鬱屈した日々は深澤を蝕んでいく。

 深澤は、虚無感を抱えたまま立ち寄った風俗店で、猫のような眼をした「ちふゆ」と名乗る風俗嬢と出会う。自分のことを詮索せず、ただ「あなたはあなた」と言って静かに笑う「ちふゆ」に、急速に惹かれていく深澤。ある日、深澤は「ちふゆ」とともに彼女の故郷へと向かうことになり――。

 監督を務めたのは、俳優、歌手として活動する一方、映画監督もこなすなどマルチに活躍する竹中直人。1992年に主演も務めた初監督作『無能の人』をはじめ、『119』『東京日和』『サヨナラCOLOR』『ゾッキ』などの監督作があり、本作で監督10本目となる。

 売れっ子漫画家から落ちこぼれ漫画家となった主人公の深澤薫役を演じるのは、俳優のみならずプロデューサーや映画監督としても幅広く活躍する斎藤工。
表現者なら誰もが共感する“業”に真っ正面から挑み、敗北感にとらわれ孤立する漫画家像に、リアルな魂を宿している。

 そして、物語の鍵を握るつかみどころのないミステリアスな風俗嬢ちふゆを演じるのは、2022年に『流浪の月』『もっと超越した所へ。』など出演映画が立て続けに公開されたほか、NHK2023年度後期連続テレビ小説『ブギウギ』ヒロイン決定で注目を集める趣里。いつも何かに漠然と苛立ち、蜃気楼のように実態があるようでないような不思議な女性像を、リアルかつ刺激的に熱演している。

 また、夫の深澤薫と衝突を繰り返しながらも、漫画家としての彼の才能を信じ、一途な愛を貫こうと葛藤する漫画編集者・町田のぞみを演じるのは、MEGUMI。本作のプロデューサーも兼任する彼女は、自分の出番のシーン以外でも足繁く撮影現場に通い、作品そのものにも一途に寄り添っていたという。

 今回、出演の斎藤、趣里、MEGUMI、竹中監督よりコメントが到着。竹中監督が自身で本屋を訪れた際に、原作の帯に描かれている猫顔の少女の視線と出会い、「零落」という文字に惹かれ手に取り、読み終えた後「絶対に映画にしたい!」と心が叫び、本作の映画化を決めたと語る。さらには原作者・浅野による“ちふゆ”が描かれた描き下ろしイラストも解禁となった。

 映画『零落』は2023年3月17日より劇場公開。

 ※斎藤工、竹中直人らのコメント全文は以下の通り。

<斎藤工、趣里、MEGUMI、竹中直人コメント>

■斎藤工(深澤薫役)コメント
私の中で「零落」は浅野作品の中でも特別な位置付けにある作品。

浅野いにおさん自身の根幹部分に最も近付けた様な気がするからだと思います。
浅野作品が何故こうまでも内臓に響くのか、その理由の様な“苦しみの原動力”が赤裸々に描かれている。

映画『零落』は、その得体の知れない人間の業、感情に、生身の人間達が挑んだ記録なのかも知れません。
竹中組の皆で『零落』に向かい、作り上げる中、深澤と言う概念は、全ての人の中に“心当たり”がある気もしました。
この感覚は竹中監督の『無能の人』を観た時に近いのかも知れません。

無条件で己の奥にあるモノを引っ張り出されると言うか。

映画館は未知の世界と出逢える夢の場所であると同時に、目を逸らし続けて来た現実と、自分自身と対峙する場所なのだと、試写を観て思いました。

これはあなたの物語なのかも知れません。
劇場で味わって頂けたら幸いです。

■趣里(深澤が出会った風俗嬢・ちふゆ役)コメント
いにお先生の描く世界の中で、ちふゆとして生きられたこと、本当に嬉しく、光栄でした。ちふゆは今どこでなにをしているのか、撮影が終わった今でも想像してしまうほど、濃密で、素敵な時間でした。その一瞬一瞬が、悲しいけれど、美しく、自分以外の誰にもわかってもらえないことに寄り添ってくれている、そんな感覚になりました。
素晴らしいキャスト、スタッフの皆様と紡いだ「零落」、参加することができてとても幸せでした。楽しみにしていただけたら嬉しいです。

■MEGUMI(深澤の妻・町田のぞみ役)コメント
若い時に描いた自分とは明らかな違い。
少しづつ堕ちていく感覚。
複雑すぎる日々。大人の思春期に真っ直ぐ向き合った今作が、観た方の日々をそっと照らします様に。

■竹中直人監督コメント
とある日、本屋さんに立ち寄るとひとりの少女に出会った。
その少女はじっとこちらを見つめてる。その少女をそっと手に取った。
少女から目を逸らすと《零落》という文字が浮かび上がった。「れ・い・ら・く」その言葉が思わず口を衝いて出る。そして…原作がなんと【浅野いにお】! その文字に脳が震える!
一枚、一枚ゆっくりとページをめくってゆく…
どれくらいの時間が経ったのか最後のページを閉じた時、「…映画にしたい…! 《零落》を絶対に映画にしたい!」と心が叫んでいた。

浅野いにおが描いた《零落》を絶対に映画にする! それだけの思いでぼくは一気に走り出した!うおー!!!

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