不祥事により俳優業を休止状態の遠藤要が、1月7日に開催される「競拳22」(大阪・堺市産業振興センター)で格闘技デビューをする。試合を目前に控えてトレーニングの追い込みに入った遠藤を直撃。

2ヵ月間で14Kgの減量に成功した彼が、格闘技デビューにいたった経緯や試合直前の心境を語ってくれた。

【動画】格闘技デビュー!遠藤要「負ける気がしない」勝利宣言&トレーニングの様子

■“戦友”高岡蒼佑からの誘いを当初は拒絶 「格闘技や選手に失礼」

ドラマ『ROOKIES』や映画『クローズZERO』シリーズで注目を集め、真利子哲也監督の長編映画デビュー作『イエローキッド』では、ボクサーの青年役で主演も務めた遠藤。以降も朝ドラ『てっぱん』や大河ドラマ軍師官兵衛』など数多くの作品に出演してキャリアを重ねてきたが、複数のトラブルが報じられ、現在は俳優業から遠ざかっている。

 そんな遠藤が1月7日に大阪・堺市で開催される格闘技大会「競拳22」でリングに上がり、2分×3ラウンドのキックボクシングルールで、とび職人系ユーチューバーのしょうとと対戦する。

――格闘技へ挑戦されることになったのは、2022年6月開催の「競拳21」ですでに格闘技デビューをしていた高岡蒼佑さんから出場を打診され、長時間に渡って説得されたのがきっかけだそうですね。

遠藤:そうですね。僕の俳優仲間というか“戦友”って呼んだらいいんですかね、蒼佑くんからご飯に誘われて。普通に食事をするのだと思ってたんですけど、再会して挨拶を交わしたら蒼佑くんが「ところで要も格闘技の大会に出ない?」って。最初は「何を言ってんだ」って思いましたね。もうすぐ40歳になろうとするおじさんが急に動くなんて絶対無理だし、そもそも2ヵ月で自分がリングに上がることが格闘家や格闘技をバカにすることになるんじゃないかっていう気持ちもありました。そして“俳優が格闘技デビュー”っていうことで一生懸命やってるほかの選手たちよりも先に自分の名前が出てしまうことも失礼にあたると感じて嫌だったんです。

――そこから出場を決意するまで、どんな心境の変化があったのですか?

遠藤:不祥事を起こして俳優業を休まなければならない状況に陥ってしまったんですけど、正直、表舞台に出ることを諦めていました。
芝居が出来なくなってからは、自分で勝手に“人生終わったな”ぐらいに思ってたんです。でも“このままじゃダメだ”という葛藤は常にあって…こんな僕でもやっぱり人生は1回きりだから、今の状況から抜けだす出口を探していました。

 実は蒼佑くん以外にもまわりの人たちから「出たほうが良い!」っていう声があったんです。「いまがチャンスなんだよ」とか「いま出なかったら遠藤要がはい上がる機会はないよ」とか。最初はそう言われても、「なんでアンタに決められなきゃいけないんだよ」という気持ちが強くて。

 そんな時に蒼佑くんが僕に対して真っ直ぐに「応援してくれる人たちがいての俺たちだったんじゃん」と言ったんです。「そんな人たちをいま裏切った形になってるじゃん。応援してくれている人や支えてくれた人に迷惑なり心配なり、いろんな感情を与えてしまったのは間違いないんだよ」と。「自分の頑張っている姿を見せられる場所は色々あるし、芝居をしている姿を見せるのが一番だとは思うんだけど、さらっと『映画や舞台に出ます』は違うと思うんだよね。禊じゃないんだけど、勝っても負けても、いま挑戦している姿はやっぱり見せるべきだよ」と真剣に言われて。ちょっと痺れましたね。

――実際にリングに上がるという挑戦を選んだ高岡さんだからこその言葉でもありますよね

遠藤:僕自身も蒼佑くんの言葉が“あぁ、そうだな”と腑におちて。
真剣に挑戦する姿を見せようって気持ちになってからは迷いは一切ないし、ブレていないです。ただ、迷いはないんだけど、はじめのうちは気持ちの浮き沈みとかはありましたね。

■「格闘技は禊の世界じゃない」批判の声 一方で多くの応援に支えられ14キロ減量に成功

――遠藤さんはインスタグラムでも、トレーニング中の心境を赤裸々につづられていますね。

遠藤:リングに立つ不安は正直いまでもあります。慣れてないですから。いや慣れてないというか初めての経験なので。多分、めちゃくちゃ緊張するんじゃないかと思うんですよね。言葉では表現しきれないすごいものに立ち向かっている感じがします。

――インスタグラムの投稿の中で遠藤さんが「芝居は役と向き合うけど、こんなに自分と向き合ったのはいつぶりだろう?」とつづられていたのがすごく印象的でした

遠藤:「競拳22」に出ることを決めてトレーニングを始めてから、願掛けで断酒しているんです。「一滴でも飲んでしまったら、試合はおろかもう自分にも負けて、せっかくこんな場所を作ってくれたのに台なしになるぞ」って自分に言い聞かせてます。トレーニング中も、身体が思うように動かなくなるほど追い込みながら「どうする?今つらいよな?」とか「やれるのか?やれるよな?」って感じで、めちゃくちゃ自分自身と話し合う機会が増えましたね。

 あとはトレーニング中だけじゃなくて、普段の生活でも自分自身や他人についてすごく考えるようになりましたね。
「いまどうしてこの人はこういう考え方をしているんだろう?」とか「いまなんで俺はこんな気持ちになっているんだろう?」とか考えて。ものごとをすごく考えるようになったからか、1日がすごく長く感じるんですよ。トレーニングを始めるまでは1日1日を早く感じていて、1年があっという間でした。

 トレーニングを始めて約2ヵ月。真剣にやってるからこそわかるんですけど、初心者がリングに立つには2ヵ月のトレーニングでは絶対に足らない。でもその時間は僕にとってはめちゃめちゃ長く感じます。2ヵ月でリングに上がるのは「絶対無理だな」とか思うんですけど「無理じゃダメなんだ」と言い聞かせる自分もいて。「やりきらなきゃいけない。そこまで持っていかなきゃダメなんだ」っていうね。“気合と根性”とはちょっと違うものと戦っている気がします。

――2ヵ月で格闘技のリングに立つために日々過酷なトレーニングを積んでこられたと思います。モチベーションを保ち続けるコツはありますか?

遠藤:理想の自分をイメージしていますね。
理想の自分の姿を想像して「どうする?お前だったらどうする?」と自分を追い込んでいく。それとまわりの人の支えですよね。僕がリングに立つことに対して当然「格闘技は禊の世界じゃない」「勝手にやってくれ」と批判する声もたくさんあります。一方で、応援してくれる人も確実にいて、僕の挑戦の話を聞いて、何かに挑戦しようと思いますっていう人もいるんです。

 いま一緒にトレーニングしている阿部兄弟も「競拳22」に出場するんですけど、彼らもめちゃめちゃ頑張っている。その姿を近くで見ながら「俺はもっとやるよ」みたいに刺激し合っていて。理想の自分とも対話しながら「遠藤要はもっといけるだろう!来い来い来い!」って奮い立たせていますね。

――トレーニングをスタートされてから約2ヵ月で体重はどれくらい絞ったのですか?

遠藤:出場を決めたのは10月末ですぐにトレーニング始めて。始める前の体重は88kgあったんですけど、今は74kgを保ってます。14㎏落とせましたね。

――これまでどういう食事やトレーニングをされてきたのですか?

遠藤:最初の2週間は、ゆで玉を2つ、納豆を1個、ササミというメニューで。1日1食。
トレーニングはジムで2~3時間するんですけど、最初から結構激しい運動して。1週間で7㎏ぐらい落ちましたね。2週間過ぎたあたりからはハードなミット打ちとかダッシュとか筋トレをやって、それにプラス少しずつスパーリングも入れていって。

 そうしていくうちに強いパンチやキックは身に付いてきたんですけど、スパーリングだけだと相手に効果的に当てることができなくて。そこから防御しながらカウンターを打つ練習とかも取り入れました。今ではそれを全部混ぜていくような感じです。

 今は食事も1日1回から2回にして、ゆで卵、ササミ、サラダ、納豆を食べています。

■格闘技で「役者魂を見せる」――その真意とは? 「負ける気がしない」勝利宣言も

――格闘家で俳優の黒石高大さんと一緒にトレーニングされて、試合当日はセコンドにも付かれるそうですね。

遠藤:高大が自分で“僕は選手としては三流だけどトレーナーとしては一流だ”って言っていましたね。ちゃんと試合で勝てるトレーニング方法を知っていると。それを実践してからパンチもしっかり当たるようになってきたので、彼の存在はデカいです。

――試合も間近に迫ってきましたが、当日までどのように仕上げていきますか?

遠藤:もう仕上げるとかじゃなくて、いまやってることが全てなんですよね。
これ以上やることがなくて。いつもトレーニングが終わった後はしばらく動けないぐらいまで練習しているし、自分の中ではもうこれ以上ないぐらいやってるなって実感があるんで。

 強いていうならとにかく体調管理ですね。メンタル的には最初めちゃめちゃ怖かったし不安だったけど、いまはマジで試合当日が楽しみでしょうがないです。「早く試合したい」みたいな。当日までどんな感じかわからないけど「多分楽しいんだろうなぁ」って考えてます。

――7日の試合を終えられた後の遠藤さん自身の展望は何かありますか?

 遠藤:まったく何も決まってないですね。正確にいうなら試合以降のことを考える余裕がないくらいに集中しています。出場を決めて、トレーニングを経て、試合を目の前に控えた今となっては、本当に今回誘ってくれた蒼佑くんと場所を与えてくれる「競拳22」には感謝しています。

 でも、やっぱり自分は演じることが好きだし、本気を見せられる場所は役者という仕事だと思っていて、いつかまたどんなかたちでも作品というものに携わりたいですね。今回の挑戦は自分への挑戦でもある一方で、 不祥事で芸能界を干された役者がひょんなことから格闘技に出会って、準備期間2ヵ月でリングに上がるという設定の役をいただいた感覚に近いんです。そう思えなければ、格闘技の挑戦はありえなかったですね。

 「競拳22」の記者会見で、僕は「役者魂を見せる」って発言をしました。だから必死こいてトレーニングするし、体重も落とす。「役者ってすごい!」ってところを見せたいので、お客さんを「本当に2ヵ月で仕上げたのかよ!?」って驚かせるぐらい面白い試合を見せられると思っています。

 ただただやみくもに何かに挑戦しているんじゃなく、リング上で本気で役者をまっとうする。だから当日は本当に負けない!負ける気がしないんです。僕の中ではもうそういうイメージが出来上がっています。(取材・文:スズキヒロシ 写真:大西二士男)

 格闘技イベント「強拳22は1月7日に大阪・堺市産業振興センターで開催。遠藤要 VS“北陸のピットブル”しょうと戦ほか、高岡蒼佑も“だんじりヤロー”こと権藤正一(若極連)と対戦する。

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