2022年11月、感動の東京ドーム公演で櫻坂46を卒業した菅井友香。グループのメンバーとして、初代キャプテンとして走り抜けてきた経験を糧に、新たな活動をスタートした彼女は、劇作家・つかこうへいによる舞台『新・幕末純情伝』でソロ女優デビューを果たす。
【写真】“ゆっかー”菅井友香、かわいく美しい撮り下ろし写真
■剣術の稽古で生きたグループ時代のダンス経験
舞台『新・幕末純情伝』は2010年に亡くなったつかの代表作の1つ。幕末の京都を舞台に、主人公の新撰組・沖田総司(菅井)が実は女だったという、ユニークな着想を基に物語が展開する。『熱海殺人事件』『飛龍伝』と並ぶつかの代表作として、これまで幾度となく上演。作品に登場する女性は“沖田総司”ただ1人で、歴代では、牧瀬里穂、広末涼子、石原さとみ、鈴木杏、桐谷美玲、松井玲奈ら、そうそうたる女優が演じてきた。
――本作は、櫻坂46を卒業後のソロ女優デビュー作。主演に懸ける思いは?
菅井:ソロになってからの第1歩として、この『新・幕末純情伝』で沖田の力を借り、皆さんのサポートもたくさん頂きながらですが、自分自身の殻を破るきっかけにできるよう頑張りたいです。作品をしっかり届けるということを、第一に。
――登場人物の中で、女性は菅井さん1人。作品では、男性相手に啖呵(たんか)を切る場面もありますが、日頃の上品でおしとやかな印象とは真逆です。
菅井:過去の主演作『飛龍伝2020』(2020年1月~2月上演)でも、最後に少し男性の言葉を使うシーンがありましたが、本作は、男性として育てられた女性役なので、その違いにちょっとドキドキしています。
――セリフ回しにちなみ、菅井さんと言えば「滑舌が苦手」と自称しています。『飛龍伝』出演当時のインタビューでは、ボイストレーニングへ通ったと明かしていましたが、本作に向けて取り組んでいることは?
菅井:気合いを入れてしゃべらないと、滑舌が悪くて…。省エネで話す癖もあり、自宅ではボソボソとしゃべってしまうんです(苦笑)。過去の出演作『飛龍伝』や『カーテンズ』(2022年2月~3月上演)で、劇団の方から滑舌を柔らかくするトレーニングとして、「外郎売(ういろううり)」を朗読するのがいいと教えてもらったので、毎朝やっています。
――本作への準備では、2年ぶりに「剣術のお稽古」にも通い始めたとファンに明かしていました。
菅井:刀の持ち方や基礎的な振り方、注意点を教わりました。舞台では、相手役の方と息を合わせて、ケガのないよう演じる必要があるので、ご迷惑をおかけしないよう「自分にできることを」と思って。舞台のお稽古でもたくさん学ばせていただきたいと思いますけど、ジッとしていられなかったんです。
通ったのは、『飛龍伝』の出演後に「殺陣を学んでみたい」と思って、自分で見つけたスクールです。久しぶりに、自主的に予約して行きました。しばらく行く時間がなかったし、ソロになったからこそ、できることはやりたいと思ったんです。
■東京ドーム卒業公演を振り返り「人生で忘れられない2日間」
――欅坂46の加入から7年。2017年1月からキャプテンも務め上げた菅井さんにとって、アイドルとして最後のステージとなった東京ドーム公演(2022年11月8日~9日)はいかがでしたか?
菅井:人生で忘れられない2日間になりました。終演後はありがたいことに、ライブを見てくださった方々から「感動した」「本当に頑張ったね」と言っていただける機会も、たくさんありました。ライブを作ってくださった方々、メッセージを準備してくれたメンバー、そして何よりも応援してくださるファンの皆様に改めて、感謝しています。
――公演の最後は、菅井さんを象徴する決めポーズ「がんばりき」で締めくくっていました。
菅井:演出家さんやマネージャーさんから「最後は何してもいいよ」と言っていただいたので、いったん去るかと思いきやずっと大事にしてきた「がんばりき」で締めるのが面白いかな、最後は笑ってもらえたらうれしいなと思ったんです(笑)。リハーサルで「このタイミングで『ラストがんばりき』をやらせてください」とお願いしました。
――終演して帰宅後は「幸せな気持ちで、気づいたらソファで寝落ちしていました」とファンに明かしていました。余韻も強かったと思いますが、その翌日は何をしていましたか?
菅井:翌日もしばらくソファの上にいました…(笑)。今までの経験にないほど、いろいろな方から連絡を頂いたので、遅くならないうちにお礼するため、ずっと返事を書いていて。返事を書きながら、差し入れで頂いたお菓子も食べました(笑)。
――光景が浮かびます(笑)。後日、家族とリピート配信を鑑賞して、菅井さんを追った定点カメラ映像「ゆっカメ」も楽しんだそうですね。
菅井:iPadとパソコンを並べて、通常の映像と両方を同時に見比べました。久しぶりに家族そろってご飯を食べながら、お酒も交えて、みんな「お疲れ!」とお祝いしてくれました。初体験の「ゆっカメ」は恥ずかしいので「いいよ」と言ったんですけど、実際に見たら「このアングルはこう違うんだ」と発見もありました。本番では、最後のパフォーマンスだとかみ締めながらやり切ったんですけど、映像を通して、改めて見ると「グループの曲を踊るのは最後だったんだな」と実感しました。
■ソロ1年目は全力疾走「止まらずに駆け抜けたい」
――卒業後、2022年12月9日にはグループのイベント「2nd YEAR ANNIVERSARY ~Buddies感謝祭~」を鑑賞。“Buddies(櫻坂46ファンの愛称)”デビューを報告していました。
菅井:グループ時代も「BAKCS LIVE」(※)や日向坂46、乃木坂46さんのライブを見に行く機会はあったんです。でも、メンバーではなく応援する側として見に行くのは初めてで「こんなにも心が楽なんだ」と、不思議な気持ちになりました。Buddiesとしてステージを見ているときは、メンバーと目が合うだけで「こんなにうれしいんだ」と思ったり、ファンの皆さんがペンライトの色を切り替えるのが早くて「いつの間に変えてたの!?」と驚いたり(笑)。同じ時間に、同じ場所で応援する力の大きさ、楽しさを感じました。
――菅井さんの役割を継いだ櫻坂46の2代目キャプテン・松田里奈さんの活躍は、どう見えましたか?
菅井:進行はもちろん、メンバーのみんながやりやすい空気感を作るのが上手でした。一緒にステージに立っていた身として、「Buddies感謝祭」は大変だったと思うんです。まつり(松田の愛称)と終演後に会ったときは、涙を流しながら「ゆっかー(菅井の愛称)さん! 見たら涙が出ました! 戻ってきてください!」と言ってくれました。メンバーをねぎらうため、私が大好きなパンを差し入れに持っていったんですけど、終演後、まつりが「いただきました」と写真付きメッセージを送ってくれて、こんなにも懐いてくれるかわいい後輩がいて、うれしいなと思いました。
――ソロになってから、グループ卒業を実感する場面もありましたか?
菅井:制服を着なくなったことで「メンバーではなくなったんだ」と実感しました。私が卒業したあと、新制服のフィッテイング後に「絶対ゆっかー好きなやつだよ」とメッセージを送ってくれたメンバーもいて、寂しいというより懐かしかったです。ソロで初のバラエティ番組収録もあり、収録後に告知を撮影するときに「櫻坂46の~」と言ってしまったときは「あ、違うんだ!」とハッとして(笑)。撮り直しになってしまい「まだ抜けていないんだ」と思いました。
――グループ卒業から約2ヵ月。スタートダッシュ期間となるソロ1年目はどう活躍したいですか?
菅井:卒業後に「ちょっと休んだ方がいいよ」「海外に1ヵ月、行ってみれば?」と、アドバイスも頂いたんです。でも、グループ卒業からの1年間は、止まらずに駆け抜けたいと思いました。性格として、ゆっくりできないんです。
(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)
舞台『新・幕末純情伝』は東京・紀伊國屋ホールにて1月28日~2月12日、神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeにて2月17日~19日上演。