アイドル、女優、タレントとして活躍の場を広げ、昨年芸能界デビュー40周年を迎えた森尾由美。放送中のドラマ『三千円の使いかた』(東海テレビフジテレビ系/毎週土曜23時40分)では、将来に不安を抱く50代女性のリアルを表現している。

飾らない性格やはつらつとした笑顔も魅力的な彼女だが、結婚・出産という人生の節目では「芸能活動を辞めないといけないのかな」と悩んだこともあるという。40年におけるターニングポイントや、「子供を産み、育てるのが大変な時代。できるだけ娘たち夫婦のサポートをしていきたい」と初孫が誕生した今の胸の内を明かした。

【写真】孫がいる“おばあちゃん”とは思えない! デビュー40周年を迎えた森尾由美

■50代女性のリアルな悩みに共感「夫婦の形が変わってくる」

 原田ひ香の人気小説を原作に、家族3世代、4人の女性がお金と人生の悩みに向き合い、たくましく乗り越えていく姿を描く本作。自分の人生を見つめなおし、節約に目覚める主人公の美帆を葵わかなが演じている。もともと原作を読んでいたという森尾だが、「うちの次女がちょうど会社の寮を出て、節約や倹約をしたいなと感じていた頃。参考になるんじゃないかなと思って、次女にすぐに小説を渡しました」と述懐。

 森尾が演じているのは、美帆の母親で、無口な夫・和彦(利重剛)とギクシャクして熟年離婚も脳裏をよぎる主婦、智子。現在56歳となった森尾にとって年齢的にも等身大の役柄となるが、「夫婦の形が変わってくる様子には、とても共感しました」ととりわけ智子と和彦の関係性に興味を引かれたという。

 「うちの夫は和彦さんのように無口ではないですが(笑)、娘が2人いるという家族構成も同じ。子どもたちが巣立っていったという状況も、似ていますね。子どもが巣立つまでは、夫とは“チーム”という意識が強かったと思いますが、今は夫も私も各々の好きなことを自由にやり、それぞれにフリータイムがある生活」とにっこり。


 「ただ、うちはちょっと特殊で」と語るように、結婚生活30年を過ごしてきた夫はアメリカで仕事をしているため、“遠距離結婚”を続けてきた。「特にコロナ禍の数年は、国外を行ったり来たりすることがなかなかできませんでした。この2年で考えると、夫と一緒にいた期間って2、3週間くらいじゃないかな。会わなければ喧嘩もしないので、円満といえば円満ですね!」と笑い飛ばしながら、「幸い、昨年の6月に長女に女の子が産まれ、孫ができました。そのことをきっかけに夫がこちらに帰って来たりしているので、子どもや孫は夫婦をつないでくれるものなんだなと感じています」としみじみと語る。

■結婚・出産時は芸能界を辞めることも頭をよぎる

 劇中では、独身時代を謳歌している美帆、美帆の姉で結婚を機に仕事をやめ子育て中の真帆(山崎紘菜)、2人の娘を育て上げた主婦の智子、年金で生活している美帆の祖母、琴子(中尾ミエ)による、3世代・4人の女性のお金の使いかたが描かれる。森尾自身、年齢を重ねるごとに「お金の使いかたも変化してきた」と明かす。

 「独身時代は美帆とまったく一緒で、自分のことにだけお金を使っていればよかった」と切り出し、「結婚して子どもができてからは、子どものやりたいことをなるべくやらせてあげたいと、自分以外のことにお金をかけてきました。成長や進学する上での出費など覚悟はしていましたが、突発的に出ていくお金も多くなる。演じている智子も“あっという間に貯金が消えてしまい愕然とする”というシーンがありましたが、私自身も子育てをしながら、“お金を貯めるのは難しいけれど、気づいたらなくなっている…”というパターンを経験しました。今後のお金の使いかたとしては、夫と自分の親の健康、自分たちの健康にかけていくものも多くなると思います。本当にドラマ、そのもの」とお金から人生を振り返る。


 芸能活動を思い返してみると、1982年に『ねらわれた学園』でドラマ出演を果たし、翌年に「お・ね・が・い」でアイドル歌手としてデビューした森尾。『オールナイトフジ』や『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『はやく起きた朝は…』などバラエティ番組でも活躍し、ドラマ『大好き!五つ子』シリーズの母親役としてもお茶の間の人気を集めた。40年の転機としてあげたのは、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』への出演と、結婚・出産を経験したタイミングだ。

 「10代でデビューをして、アイドルとして番組に出るときは、“何か質問をされても『はい』か『いいえ』しか言っちゃダメ”だと言われて。自分で物事を考えたり、気の利いた受け答えもできなかった。お仕事という感覚も薄かったと思います」と反省しつつ、「『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に出演させていただけることになって、ダンカンさんから“自分たちと絡むなら、ちゃんと考えてこい。アイドル上がりだからって、甘えちゃダメだ”という言葉をもらって。自分の振る舞いをちゃんと考えないといけないなと、気づくことができました」と感謝。

 さらに結婚・出産時を回顧しながら、「所属していた事務所で、最初に結婚したタレントが私だったんですね。社長から“独身のタレントしか扱ってきていないから、結婚したり、子どもを持ったタレントを扱うのはうちでは難しい”と言われて。そうすると私の意地っ張りな性格が出てきて、“この事務所にいたい。私は結婚しても需要があると思います!”って、社長に言っちゃったんです」と大きな笑顔。
一時は“芸能活動を辞めないといけないのかな”と思ったりもしたというが、夫にも支えられ、妻、母として仕事を続けていく決心ができたという。

■“おばあちゃん”としての願い「娘たち夫婦の応援をしたい」

 宣言した通り、森尾は出産後も『はやく起きた朝は…』や『大好き!五つ子』シリーズなど、人気の長寿番組に恵まれた。活躍の幅を広げるために、どのようなことを大切にしてきたのだろうか。

 森尾は「“自分一人でやっているんだ”という気負いを感じていた頃もありましたが、ものづくりをしていく上では、一人では何もできません。話し合い、団結力や集中力を育みながら、みんなで一つのものを作っていくわけですよね。みんなと作っているんだ、自分もその中の一員なんだと気づけたときに、それは大きな力となりました。『大好き!五つ子』シリーズは特に、その力を発揮できた作品かなと感じています」とチーム力を信じて、ここまで歩んできた。

 どんな話からもさわやかさと温かな人柄が伝わってくるが、昨年は初孫を迎え、また新たなライフステージに足を踏み入れた。“おばあちゃん”としての希望を聞いてみると、森尾は「孫は赤ちゃんなので、もちろんものすごくかわいい」と目尻を下げ、「でも孫の成長以上に、私は娘たち夫婦の応援をしたいと思っています。やっぱり今は、子どもを産み、育てるのが大変な時代ですよね。娘も“働かないと、育てていけない”という不安を感じています。私自身、夫と自分、両方の親に助けてもらいながら仕事に行っていたので、今度は私が娘たち夫婦のサポートをしたい。
孫のことは親2人に任せて、あくまでも子どもたちのフォローができたらいいなと思っています」と願いを込めていた。(取材・文:成田おり枝)

 土ドラ『三千円の使いかた』は、東海テレビ・フジテレビ系にて、毎週土曜23時40分放送。

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