1月期の連ドラが出そろった。今期は実績ある女性脚本家と、キャストの双方がそろい踏みで期待値の高いラブストーリーが3作品も放送される。

しかもそのいずれもが、いっときは消滅したに等しいと言われていたオリジナル脚本。第1話放送を終え、改めて見えた注目ポイントと今後への期待を考える。

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■実はミステリー要素強し!? 『100万回 言えばよかった』

 井上真央主演、共演に佐藤健、松山ケンイチという強力な布陣によるファンタジーラブストーリー。主人公は美容師の相馬悠依(井上)。調理師となった幼なじみの鳥野直木(佐藤)と再会し、改めて互いにかけがえのない相手だと確認するも、プロポーズ目前、直木が悠依の前から姿を消す。実は死んだらしい直木。
しかしその記憶はなく、自分が死んだと分からないままに魂となって現世をさまよっていた。そして唯一自分の姿が見えていると思しき刑事の魚住譲(松山)と出会う。

 脚本は、月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』『リッチマン,プアウーマン』(共にフジテレビ系)や、『透明なゆりかご』(NHK)、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK)などを手掛けてきた安達奈緒子。第1話を終え、キャストのうまさは期待通り。特に井上の涙の美しさに見惚(ほ)れた。また直木と譲の入れ替わりでの調理シーンは、まさにそこで直木が料理しているかのようだった。


 『透明なゆりかご』『おかえりモネ』の安達脚本とあって、大切な人に、伝えられるそのときに気持ちを伝えることの大事さ、当たり前の日々の大切さを純粋に謳(うた)うストーリーだと思っていたが、第1話ラストで殺人事件現場の防犯カメラ映像に直木が映りこむ展開に! ミステリー要素も入ってくるのだろうか。譲同様に直木の姿が見えている謎の男(板倉俊之)や、医師の夏英(シム・ウンギョン)の存在も気になるところで、ただの優しい物語には終わらなさそうだ。

■個性派キャスト集結で命のきらめきを謳う 『星降る夜に』

 吉高由里子と北村匠海共演による大人のラブストーリー。仕事にプライドを持ちながらも忙殺されて暮らす産婦人科医の雪宮鈴(吉高)は、ある星降る夜に柊一星(北村)と出会うが、それは、ドラマチックさと最悪な出来事が同時に起きた夜だった。やがて鈴は一星がろう者であり、遺品整理士として働く青年だと知る。

 『セカンドバージン』(NHK)などを手掛けた大石静による脚本。
前期話題を集めた『silent』(フジテレビ系)でも描かれたろう者が、メインの登場人物として描かれることが注目を集めたが、設定は全く違っており、二番煎じ的な意見はすぐに消えるはず。恋愛ものとしてはいるが、第1話の段階では恋愛色はかなり薄かった。しかしそれがむしろ心地よく、主人公たちを囲むキャラクターの濃さも、達者な役者陣によってうるさくなく成立していた。

 空気感としては同じテレビ朝日で2021年1月期に放送された『にじいろカルテ』と似ていた。キャストも北村、水野美紀、光石研と重なっており、演出の深川栄洋の色もかなり出ていたが、ディーン・フジオカや、千葉雄大など、本作からのキャストたちも魅力的で、さらにもうひとりの演出家、山本大輔(『彼女、お借りします』『Sister』)との演出の化学変化で新たな世界観が生み出されそうだ。吉高と北村の恋愛模様をメインに、周囲の面々が発する差し色を毎週楽しみながら、大きな感動へとつなげていってくれそうな期待がある。


■自由なヒロインと、夢持つ青年の人生の夕暮れ時 『夕暮れに、手をつなぐ』

 九州の片田舎から出てきた主人公・浅葱空豆を広瀬すず、空豆と出会う、音楽家を目指す青年・海野音を永瀬廉が演じる青春ラブストーリー。婚約者との結婚を前に上京し、別れを告げられた空豆は、運命を予感させる出会いをしていた音と再会し、ひとつ屋根の下で暮らすことになる。

 脚本は『あすなろ白書』(フジテレビ系)、『愛していると言ってくれ』『オレンジデイズ』(TBS系)などなど、数々のヒット作を世に放ってきた北川悦吏子。本作はその設定が、北川のヒット作のひとつである『ロングバケーション』(フジテレビ系)と比較されているが、広瀬と永瀬のカラーが、木村拓哉、山口智子とはまるで違っており、新たな、そして23歳同士のかけがえのない人生の夕暮れ時を描いてくれるのではないかと、むしろワクワク感が強い。

 何より広瀬演じる空豆。ちゃんぽんされた九州弁、一人称の「おい」、泣き顔に驚いた顔、笑顔と、空豆はその喜怒哀楽を非常にはっきりと外に出すヒロインであり、広瀬は、それを非常にうまく自分に取り込んでいて魅力的だ。
永瀬演じる音は、まだまだこれから変化していくキャラクターに思える。ちなみに空豆のキャラが目立ちがちだが、噴水前で空豆を残してスマホだけを救ったとっさの行動などに、音の性格が見えて面白い。ふたりが共に暮らすことになる「雪平邸」も、家主の資産家・雪平響子役の夏木マリを含めてフィクションの世界ならではの夢を見させてくれるドラマになりそうだ。

 恋愛ドラマとひとくくりにすれど、三者三様。3作品すべてを見ても「恋愛ドラマでお腹いっぱい」とはならないうれしい冬になりそうだ。(文:望月ふみ)