『ルパン三世』のアニメ化50周年と、『キャッツ・アイ』の原作40周年を記念して制作されたAmazon Originalアニメ『ルパン三世VSキャッツ・アイ』が1月27日より配信開始。日本アニメ史を代表する“泥棒×怪盗”の夢のコラボが実現した。

そこで1995年からルパン役を演じている栗田貫一と、キャッツアイの次女・瞳役の戸田恵子を直撃。人気シリーズへの思い、ファミリーとも言うべき共演者陣に傾ける愛情を語り合ってもらった。

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■夢のコラボが実現! 愛を守る、ルパンの“父性愛”に惚れ惚れ

――『ルパン三世』と『キャッツ・アイ』の夢のコラボが実現しました。今回の企画を聞いた時の感想を教えてください。

栗田:僕としては「いつか来るだろう」と思っていたんです。(『ルパン三世』シリーズの)不二子ちゃんとキャッツアイの三姉妹が並んだら、とてもいい絵面になるだろうと。
完成作を観ても、こんなにもルパンファミリーと、キャッツアイ三姉妹がマッチするものなんだなと驚きましたね。

今回、戸田さんが演じていらっしゃる瞳さんとルパンは、あまり絡むシーンがなかったんですが、(キャッツアイ三姉妹の三女)愛ちゃんと多くの時間を過ごさせてもらって。愛ちゃんに対するルパンはちょっと娘を見守るようでもあり、ルパンの父性愛が垣間見えた気がしています。

戸田:憧れのルパンと一緒にお仕事ができるなんて、夢にも思っていませんでした。長く生きているといろいろなことがあるものですね(笑)。とにかくびっくりしましたが、お祭りごととして楽しめたらいいなと思っていました。
完成した作品を観たら、同じ画面にルパンと私たち三姉妹がいるというのは、なんだかキュンとしました。

不二子さんと三姉妹が並ぶシーンもありましたが、不二子さんって私たちにとっては大先輩のお姉さんのよう。三姉妹の一番上の泪姉さんよりも、もっとお姉さんという雰囲気ですよね。不二子さんとの共演も、とても面白いなと感じながら観ていました。

――キャッツアイの父親が遺した絵をめぐるドラマ、ルパンたちとキャッツアイが繰り広げるアクションも大きな見どころとなります。

栗田:これは死にかけているんじゃないかと感じるような、すごいアクションでしたよね(笑)。
ルパン、次元、五ェ門の3人が集まるとやっぱりすごいんだなと思ったし、キャッツアイと芝居のキャッチボールができたのはとても幸せなことです。

戸田:三姉妹のお父さんが遺した絵に関するストーリーには、グッと来ましたね。愛ちゃんとルパンのハートウォーミングなやり取りも見られて、とてもうれしかったです。今回の作品を観ていて実感したのは、ルパンにはとても色気があるんだなということ。私たち三姉妹にはお色気があるとよく言われますが、本当に色気があるのは一番上の姉さんだけなんです(笑)。瞳と愛には大した色気はなくて、昔風に言えば“おきゃん”といった感じ。


一方、ルパンは大人で色気があって、みんなが惚れちゃうようなカッコよさがありますよね。これからも、ルパンに喫茶キャッツアイに来てほしいくらいですし、今回ルパンと過ごす時間の多かった愛がとてもうらやましかったです。

■栗田貫一「昔も今も、声優界のレジェンドに囲まれている」

――戸田さんは『ルパン三世』シリーズとしては、1991年にテレビ放送された『ナポレオンの辞書を奪え』と、1999年にテレビ放送された『愛のダ・カーポ~FUJIKO’S Unlucky Days~』にご出演経験があります。

栗田:『愛のダ・カーポ~FUJIKO’S Unlucky Days~』は、まだルパン役を引き継いで間もない頃の作品で、僕は右も左も後ろも前も分からないような状態で。スタジオに立たされていただけのような感じでした。緊張していて、ちゃんと戸田さんにご挨拶をさせていただいたのか覚えていないくらいです(笑)。


――栗田さんが、“ルパン役の先代”山田康雄さんからキャラクターを引き継いだのは、1995年公開の劇場映画『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』からですね。

戸田:ちゃんとご挨拶していただきましたよ!(笑) 『ルパン三世』や『サザエさん』など長く続いているビッグネームの作品に出られることって、やはりとてもワクワクするものなんです。レジェンドメンバーが揃ってアフレコをしている現場で、最高の思い出として心に残っています。

栗田:今回の作品を観ても、改めて新しいレジェンドたちが今の『ルパン三世』を作ってくれているんだなと実感しました。沢城(みゆき)ちゃんは、絵が変わろうと、今回のようなコラボ作品であろうと、どこでだって不二子になることができるし、(次元大介役の)大塚明夫という人は先代の小林清志さんをリスペクトして演じてくれている。山ちゃん(山寺宏一)だって、浪川(大輔)くんだってすごいですよ。


僕はルパン役を引き継いで27年目になりましたが、最初の頃の僕は、例えるならば大リーグのマウンドに大谷翔平の代わりに立たされてしまったようなもの。ボールを投げてもキャッチャーまで届かないような僕が、「本当にここにいていいの?」という感じでした。年月が経って気づいてみれば、また今の時代の超レジェンドたちに囲まれていて。再び「僕でいいのかな?」と思い始めているところです。

■戸田恵子「キャッツアイの声優陣は、本当の姉妹のような関係」

――『ルパン三世』はアニメ化50周年、『キャッツ・アイ』は原作40周年を迎え、両作品のアニバーサリーイヤーとしてコラボが実現しました。両作品の魅力をさらに深く感じられるような作品になっていましたが、お二人が改めて感じているシリーズの魅力や、ご自身にとってどのような作品になっているかを教えてください。

栗田:ルパンの世界って、果てしなく広がっていくものなんだなと思いました。どこにでも行けるような、無限の可能性のある作品。今度は『アンパンマン』とコラボだな(笑)。

戸田:あはは!

栗田:山ちゃんはどちらの作品もやっているから、20役くらい演じてもらいましょう(笑)。モンキー・パンチ先生が「どうぞお使いください」という気持ちでいてくださったことで、これまでにもいろいろな方が、いろいろなルパンを作ってきてくれた。僕たちにとっては、ピアノの鍵盤で言うならば、いろいろな鍵盤を弾ける作品が増えてきているということ。ありがたいし、とても楽しいなあと思っています。

戸田:『キャッツ・アイ』は原作40周年と言えど、私たちが関わらせていただいたのはそのうちの2年くらいで。だからこそ、こうしてまた演じる機会をいただけるということは、とても大きな出来事なんです。三姉妹の声優さん同士も、本当の姉妹のようだったんですよ。泪姉さん役の藤田淑子さんは亡くなってしまいましたが、最期まで病院で看取らせていただき、愛ちゃん役の坂本千夏ちゃんと一緒に、3人で公私共にずっと仲良く過ごしてきました。『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』のアフレコ時、淑子さんは体調を崩されて「残念だけれど、私は出られない」という話になってしまったんですが、3人でやりたかったなという思いがあります。

私たちはもともと知り合いでしたが、『キャッツ・アイ』はさらに絆を深められた作品なんです。永石さんを演じられた大木民夫さんも亡くなられましたが、長くシリーズを続けるとどうしても交代があるもの。シリーズを長くやるというのは、そういうことなんだなと思っています。

――泥棒と怪盗のコラボが見られる本作ですが、お二人が、お互いから「盗みたい」と思うものはありますか?

栗田:キャッツアイの、三姉妹ならではのチームワークはうらやましいですね。こちらはどちらかと言うとチームワークはないので(笑)。戸田さんはもう、女優さんとしても声優さんとしても素晴らしいですから「盗みたい」なんて言えないけれど…。

これは笑い話なんだけれど、以前僕は『ルパン三世VS名探偵コナン』のアフレコに来た(コナン役の)高山みなみさんに、「今日はなんの役をやるんですか?」と聞いたことがあるんです(笑)。それくらい戸田さんも高山さんもいろいろな役をやられていて、「この役をこの方がやっているの?」と思わされることばかり。すごいですよ。

戸田:栗田さん演じるルパンから盗みたいのは、脱力ですね。私は先代の山田さんのことも存じ上げていてお仕事もご一緒したことがありますが、ルパンの脱力さ加減には独特なものがあって、栗田さんはそれをきちんと踏襲していらっしゃる。モノマネをやられていたところから、今度は演じるとなるとものすごく大変だったと思うんです。

栗田:最初の10年くらいは、セリフのパッチワークのような感じだったと思います。山田さんのモノマネとしては、「ふぅ~じこちゃ~ん」というルパンの雰囲気か、ダーティハリーの「ふざけんじゃねえぞ」という低音の声を出すことしかやっていないので、その“真ん中”をやることができない。演技として、うまく着地ができないんです。山田さんのルパンのマネではなく、ルパンを演じればいいんだと思えるようになったのは、ここ10年くらいのことです。

戸田:やっぱり“お芝居をする”ということは、とても大変なことだと思うんです。ここまで辿り着かれたのは、本当に素晴らしいことだなと感じています。

(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 Amazon Originalアニメ『ルパン三世VSキャッツ・アイ』は、Prime Videoにて1月27日より配信開始。