お笑いトリオ・安田大サーカスクロちゃんが、著書『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(徳間書店)を発売した。「クズ芸人」「炎上芸人」などさまざまなマイナスイメージが定着しながらも、『水曜日のダウンタウン』(TBS系/毎週水曜22時)のドッキリ企画や「モンスター」シリーズで、芸能界のベストポジションを確保したクロちゃん。

重版も決定した最新刊は、その生き方を記した哲学書ともいえる。いま話題の“モンスター”が『水ダウ』への思い、意外な幼少期を語り尽くす。

【写真】さすがアイドル志望! さまざまなポージングで写真撮影に応じてくれたクロちゃん

■ SNS上の“アンチ”への思い「僕の人生に触れてくれた人だから得してほしい」

――クロちゃんとファンやアンチとのSNS上のやり取りが本当におもしろいです。

クロちゃん:僕自身は昔から何も変わってないんですけどね。もともとアイドルになりたかったから、かわいいなぁと思うものをアップしてるだけなんだけど、「バラが咲いててきれい」って投稿したら、「花が枯れるから近づくな」とか、朝起きて「おはよう」って投稿したら「また目が覚めやがったか」とか、「気持ち悪くて食べ物吐いちゃったんで、お金返してください」とか(笑)。今までの流れから行くと、こういうのは想定内で。…想定内っていうのも、おかしな話なんですけど(笑)。

中でもどうかしてるなって思ったのは、「そんなことより、食べたものを早く見せろ」という要求。『水曜日のダウンタウン』で、食べたものを隠していたとか、違うものをあげていたとかあったんで、「そこを見たい」っていう要求が増えたんです。ところが、本当に食べたものをあげても、「うそつけ。もっと食ってるだろう」って返ってくるから、もう意味が分かんなくなってる(笑)。

――アンチコメントとの付きあい方がうまくなっている印象があります。


クロちゃん:いろんなフォロワーがいるけど、結局、僕っていう人間を意識してる人たちだから、その人たちには得してほしいって気持ちがあるんです。肯定派と否定派が言い争いをして、そういうコミュニティが何個もあって。そこをのぞきながら、「あー、またこんなことやってんだ」って、おもしろく見ちゃってる自分もいます。だから、書き込まなくなっちゃう人が出たり、コミュニティがなくなったりすることが僕にとっては悪なんです。僕を叩いてくれるのは全然いいんだけど、ケンカしないでねって。叩かれてる僕が、なんで仲裁するのかもよく分かんないけど(笑)。1度でも僕の人生に触れてくれた人だから、得をしてほしいです。

■『水ダウ』初出演から約8年 目隠しされたときの“こだわり”

――すべてのはじまりは『水曜日のダウンタウン』です。だまされつづけて、メンタルはおかしくなりませんか。

クロちゃん:いまは家に24時間監視カメラを付けられて、プライベートがなくなって、刑務所より厳しい環境になったんですけど(笑)、僕って切り替えが早いんです。1人暮らしだから、もしも急病で倒れたときに見つけてくれて、救急車を呼んでくれたら助かるなぁって思ったり。あと、あの番組にかわいい女の子のADさんが2人いて。
彼女たちに見られてるなぁと思ったらドキドキするから、監視カメラの前でお風呂上がりに裸のまま、アロマを作ることがあります(※クロちゃんはアロマコーディネーターの資格を持っている)。「監視カメラを付けてくれてありがとう」っていう感覚になったから、しんどくなくなりましたね。

――振り返れば、番組にはもう8年ほど準レギュラーのようなスタンスで出演して、芸人人生を大きく変えました。

クロちゃん:「おもしろいね」「すごいね」って言われますけど、「もう1回同じことをやれ」って言われたら、絶対にできない。だって、訳分からない流れで目隠しされて、知らないところに連れていかれるんだから。

目隠しされたときは、ずっと目をつぶってます。というのも、たとえば下を向いてちょっとでも情報が入ってきて、その情報に引っ張られてマスクを外したときにうまくいかなくなるのが嫌だから。そういう準備をした上で、もし僕がリアクションを間違えたりしたら、「そこは番組サイドが想定してくださいよ。俺はしっかり付きあってるんだから」と、人のせいにします。僕って、損したくない人だから。

■「人のせいにする」で生きやすく 次のステップは「もっと人のせいにする(笑)」

――人のせいにすると、生きやすくなりますよね。本書でもつづられている「他罰的思考」ですが、何かきっかけはあったのですか。


クロちゃん:今は“鋼のメンタル”とか言われてますけど、小さいときは誰よりも弱くて、虫もおばけも大嫌いで、泣き虫ですぐに泣いてたんです。そういう弱い自分に耐えきれなくなり、小学2年生のとき、「人のせいにしよう」となった。よく親や学校の先生は、「人のせいにしちゃいけませんよ」って言うけど、このネガティブワードが僕の経験でポジティブワードに変わりました。勉強ができなくて怒られて、いつもは泣いてたけど、「先生は自分がきちんと教えられないのを僕のせいにするスキルの低い人なんだな」と先生のせいにしてみたら、自分のメンタルへのダメージが減ったんです。そうなったら、次のステップがあって…。

――おー! 反撃には続きがあって…。

クロちゃん:もっと人のせいにする(笑)。先生ができない人間だから、俺が予習してやろうかなっていう“上から目線”になれる。怒られて勉強すると100%や120%の力を出さないといけないけど、“上から目線”だから肩の力を抜いて50%ぐらいのがんばりで済みます。普通に人のせいにするだけだったら、次もまた人のせいにする繰り返しだけど、僕は中途半端じゃなくしっかり人のせいにした(笑)。僕をいじめて泣かせた同級生に対しても、その子と同じ立ち位置だからダメなんだと思って、学級委員長になって自分のランクを上げたし。それで、その子の悪さをねつ造して、先生にチクるようになりましたし…。


――いい話なんだか悪い話なんだか(笑)。でも、それが防御策だったんですね。昨年末の『水曜日のダウンタウン』の企画「MONSTER LOVE」では、20歳年下の恋人・リチさんができました。

クロちゃん:リチはもともと、あの番組で映る僕の家が近所だっていうところから意識しはじめたみたいで。彼女は物件を見るのが好きだから、僕がどのへんに住んでるのかもだいたい分かってて、近所まで来て見てたらしいです。僕のSNSも見て、同じところにも行ったことがあるらしいです。ところが、いくら探しても5年ぐらい会えなくて…。僕にどうしても会いたくて、企画に参加したんです。

――それを聞いたとき、どう思いましたか。

クロちゃん:「ストーカーじゃん」と思いました(笑)。まぁ、それだけ好きでいてくれたんだって気持ちになりましたけど。

(取材・文:伊藤雅奈子 写真:松林満美)

 『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』は徳間書店より発売中。
価格は1650円(税込み)。

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