バラエティー番組はもちろん、ドラマ、映画、舞台、はたまた音楽活動と幅広いジャンルで活躍を見せる藤井隆。なかでも、自身の芸能活動の原点ともいえる舞台には精力的に取り組み続けている。

この春は、“おとこたち”4人の22歳から85歳までの人生を描くミュージカルに挑戦。昨年50歳、デビュー30周年という節目の年を迎えた藤井に、これまでと現在、そしてこれからの自身について語ってもらった。

【写真】50歳&デビュー30周年を迎えてもまったく変わらない藤井隆

◆演じる役柄との共通点は「人に求められて頑張れるところ」

 PARCO劇場開場50周年記念シリーズとして、劇作家・演出家・俳優の岩井秀人が、自身の劇団ハイバイの中でも傑作の1つと称される舞台『おとこたち』を、前野健太の音楽でミュージカル化する本作。22歳から85歳になるまでの4人のおとこたちの、愛、不倫、老い、病、死、暴力など、現代を生きるおとこたちが誰しも直面する問題を描く。4人のおとこたちを藤井のほか、ユースケ・サンタマリア、吉原光夫、橋本さとしがかわいらしく、かなしく、おかしく、情けなく、そして切なく体現する。

――はじめに、この『おとこたち』のオファーをお聞きになった時のお気持ちはいかがでしたか?

藤井:以前、岩井さんに『いきなり本読み!』という舞台に呼んでいただいて、それがとっても難しいけど、興奮した楽しい現場だったんです。そのあと、今回この作品に呼んでいただけたので、『いきなり本読み!』は手ごたえこそなかったんですけど、何かをいいと思って呼んでいただけたと思うので、声をかけてもらえたことがうれしかったです。

――岩井さんという方はどんな方でしょうか?

藤井:本読みをショーにして興行にした方ですから、アイデアマンだと思います。稽古場でも“こうしてください、ああしてください”って言うよりは、みんなのアイデアが出るのを待つ方なので、ご自身もそうでしょうし、人が何かアイデアを持つ瞬間を尊重してくださる印象です。

――今回演じられる津川は、元子役で現在は戦隊もののヒーローとして活躍する俳優という役どころです。

藤井:津川のセリフで「依頼されたから、ただ嬉しくてやってた」というのがあるんですけど、本当に僕もそうだなって改めて気づかせていただいたというか。自分で何かを考えて生み出して、“こういうことがやっていきたいです”という仕事も楽しいですけど、それとひけをとらないくらいに、誰かに呼んでもらってやってほしいと思ってもらえることは、自分には動力になるんだなって確認しましたね。
津川と似ている部分はなんにもないんですけど、人に求められて頑張れるっていうところは一緒かなと思ってます。

――今回はユースケさん、吉原さん、橋本さんとの共演となります。

藤井:ユースケさんは、90年代にテレビ番組でご一緒させていただいていて。すごい平等な方で、否定されたことがまったくなかったんで、それはすごく覚えてます。思い付きで無茶苦茶なことをしても、全然それを否定せず…。あ、肯定もしてなかったかも(笑)。ダメだよ!なんて言われたこともなく。こちらも後々こうしてお仕事をご一緒するなんて思っていなかったから、若気の至りで何やってもいいやー!と無茶苦茶やってたんですけど、それでもなんか、否定をされたことないというのは覚えてますし、優しい方だと思います。

吉原さんはディズニー映画の『美女と野獣』でガストンとル・フウというコンビの役だったんですよね。そのプロモーションで、ステージで歌われているのを横で聴いたのですが、すごかったですよ! 今思い出してもうわぁ~!ってなるくらい、本当に素晴らしかったのを覚えてます。

橋本さんとは、ご一緒するのは初めてで。本読みでも面白いな~って思いながら聞いてるんですけど、僕、橋本さんの大好きな場面があって。
立ち稽古が始まってからはいつも、“うわぁ、さすが!”って思いながら見ています。

――女性陣も、大原櫻子さん、川上友里さんがご出演されます。

藤井:川上さんとはがっつりご一緒するのは初めてなのですが、僕の周りが「(藤井は川上のことを)絶対好きだと思う」って皆さんおっしゃるから楽しみです。大原さんは、昨日も改めて「おいくつ?」って聞いたら、「まだ(27歳)?」って思うくらいなのに、ベテランの方ばかりいる中でも真ん中にちゃんといられることが、本当にすごいなって尊敬しています。

――稽古場が楽しそうな実力派の皆さんが勢ぞろいですよね。

藤井:特に大きなルールもないまま、とにかくやってみるという感じで進んでいくので、僕はもうふるい落とされないように、食らいつくのが精一杯です。

◆昨年デビュー30周年 迎えた50代は「コメディアンとして似合う年に」

――本作ではおとこたちの22歳からの人生が描かれますが、藤井さんの22歳のころはどんな日々でしたか?

藤井:たぶんまだ舞台の仕事は本格的にはしていなくて、若手公演みたいなのでちょろっと通行人とかをやってるくらい。会社勤めもしていて、テレビの深夜のレポーターもやってる二重生活のころなんで、めちゃくちゃ楽しかったころですね。

サラリーマンの時間も、年上の方が多い会社で、仕事中はもちろんですけど、お昼ごはんとか、終わってから飲みに行くとか、かわいがっていただいて。本当に楽しかったです。

そのあと、スタジオに行かなきゃいけないんですけど、夜中1~2時ごろまでレポーターの仕事があるんです。その仕事は週3くらいあって、それをずっと繰り返している時期だったので、24時間ずっと起きてたような気がします。
体力的にも全然大丈夫でした。

――では逆に、ご自身の80代はどんな感じになってると思われますか?

藤井:えー! 決して不健康ではないですし、地肩が強いので、正々堂々言うことじゃないですけど、検査とか全然してないんですね。子どももいるんだから、ちゃんと検査したほうがいいって言われるんですけど、たぶん大丈夫なんですよ、僕。

直腸検査みたいなのをしたことがあったんですけど、病院の先生がね、見ながらね、“え!”って驚かれて。“どうしましたか?”って聞いたら、“バージンピンクですね”って(笑)。腸がバージンピンクなんですって。ピンクじゃないんですよ、バージンピンク!(笑)。すごい褒められたんですね、10年以上前なんですけど。それをすごく信じているんです。

――それは、すごいです(笑)

藤井:あとたぶん、ストレスだと思うんですよね、すべての原因は。ストレス解消法は?って聞かれることも多いんですけど、現場で処理するというか。“あっ、これいやだ!”ってなったら、その場で言うから。
周りの方は迷惑なんですけど(笑)。根に持たないようにして、その場その場で解決するように目指しているので、あんまりストレスとかないので、たぶん病気にならないと踏んでます。

――昨年50歳を迎えられましたが、特に体や気持ち的に変化はなく?

藤井:その前に腰が痛かったり、膝の手術をしたりとかいろいろありましたので、覚悟してたんです。周りの諸先輩方も“いよいよだね”とか言ってくださるんですけど、どうやら自分も家族もあんまり節目というのがなくて、ふわーっと。

――デビュー30周年という記念の年でもありましたが…。

藤井:何周年記念アニバーサリー!が似合う方がいらっしゃいますが、僕はうっかりしてまして、ふわーっと終わっちゃって。お仕事に恵まれていたので、本当にいい1年だったので、十分お祝いしてもらえたなって思ってます。

――50代の幕開けは、『新婚さんいらっしゃい!』の司会に就任され、MCを務める『土曜はダメよ!』は20年目に突入、5年ぶりのアルバム『Music Restaurant Royal Host』のリリースと、充実した1年だったのではないでしょうか。では、これからどんな50代にしていきたいというビジョンはありますか?

藤井:口にするとあまりに陳腐で恥ずかしいんですけど、“じゃ、これ、藤井にやらせよう!”って思っていただけるように、これからもなりたいなって思っていて。商品として自分をリコメンドするならば、やっぱりコメディーがすごく本人はやりたいと思ってますので、コメディアンとして、似合うような年になりたいなって思ってます。

◆プロデューサーとして活躍も「相手をすごく好きじゃないとできない」

――藤井さんは、鈴木京香さんの音楽活動や、フットボールアワー後藤輝基さんのアルバム『マカロワ』をプロデュースされたりと、プロデューサーとしてもご活躍です。

藤井:いえいえ、僕は全然プロじゃないんです。
なぜなら、僕は好きじゃないとできないというか。“この子でいきたいんです”って話を持ちかけられて、それもできないとプロのプロデューサーとは言えないと思うんですけど、僕の場合は自分がすごい好きじゃないとできない。

僕がプロデュースをやりたいと考えるずっと前に、音楽プロデューサーの酒井政利さんにご飯に連れて行っていただいて、「あなたはどういうことがしたいの?」って聞かれたことがあったんです。こうこうこういうことがやりたいとお話したら、「それはプロデューサーっていう仕事だよ。じゃ、プロデューサーという仕事もできるようになったらいいんじゃない?」って言ってくださって。その時に、「プロデュースする人のことを命がけで好きになりなさい」って教えてくださったんですよね。

(プロデュースする相手を)好きになることができるのか、まだ分からないんですけど、すごい好きな人に「お願いですからこれやってください!」って頼み込み、OK頂いて、「こういうのがベストだと思います!」って四六時中命がけで考えることはできるのかなとは思っています。

実は家族から聞いたんですけど、(膝の)手術が終わって意識朦朧としているときに、うわうわ何か言ってたんですって。何かなって聞いたら、「SKさんが…、SKさんが…」って言ってたらしくて。当時、鈴木京香さんをプロデュースすることは表に出ていなかったから、SKさんって言ってたんですけど、意識朦朧としながら「SKさん、SKさん」って(笑)。

プロデュースをしている時は、子どものことと同じくらい後藤くんのことを考えてたりするんです。そうしたことは向いていると思うので、これからも自分が大好きな人にこういうことをやってもらいたい!というのが浮かんでしまって、どうしてもやっていただかなきゃ無理なんだって思ったら、ご相談にあがりに行くんだろうと思います。


――そうしたプロデューサー目線は、藤井隆という人間に向かうこともありますか?

藤井:商品として、フレッシュ感がなくて。かと言って安定感がないんですよ。「これを任せときゃ大丈夫だよね」っていうのがないんですよね。じゃハラハラさせてくれるの?ってなったら、そのフレッシュ感はないんですよ。なんか、「“わけのわからんことします!”みたいな感じで終わるやろ、どうせ」って(笑)。

だからちょっとね、そこはネクストステージを見つけてお見せしなきゃいけないんですけど、それは狙ってもしょうがないし、努力でなんとかなるものじゃないので。そういうお役を頂いたときに、ハッと目が覚めるかもしれないですし。最初の話に戻るんですけど、“いいよいいよ、藤井は”じゃなくて、“なんかまた藤井にやらせよう”と思ってもらえるようになろうと思ってます。

――毎日お忙しいかと思いますが、プライベートで今これやってる時が楽しい!ということはありますか?

藤井:パルクールとかの動画を見ることですかね。最強だと思うんですよ、あんな人になりたいって思って。壁を駆け上ったり、自転車でバーっと行ったり。

僕、若い時から楽しくなると、危ないんですって。奇行奇行って言われるんですけど。上海のロケで楽しくなっちゃって、階段を自転車で降りそうになって、止められたり。危なっかしいこととか好きで、ビルとビルの間、屋上を飛び移るとか「やりたい~!!」ってなるんですよね。

――今回の津川は、戦隊ヒーロー役ですもんね。

藤井:確かに! はい、そこにつながってるのかもしれません!(笑)

 ミュージカル『おとこたち』は、東京・PARCO劇場にて3月12日~4月2日上演。ほか、大阪・森ノ宮ピロティホールにて4月8日・9日、福岡・キャナルシティ劇場にて4月15日・16日上演。

(取材・文:編集部 写真:高野広美 ヘアメイク:柳美保/Tron Tokyo Inc スタイリスト:奥田ひろ子)

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