大型国際ドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』が、3月4日からHuluで独占配信される。映像化不可能と言われた、ドイツのベストセラー小説『深海のYrr』をドラマ化した本作は、宇宙よりも謎が多いと言われる未知の領域“深海”で次々と起こる不可解な現象の全容解明に、研究者たちが挑むというSFサスペンスだ。

世界各国から豪華俳優陣が集結し、日本からは木村拓哉海外ドラマ初出演。そんな本作の製作総指揮を務めるのは、大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズなどを手掛けたフランク・ドルジャーだ。今回ドルジャーに話を聞くと、「これが本当のプロフェッショナルだなと感心しました」と話す、木村の撮影裏での気遣いなど、興味深いエピソードが浮かび上がってきた。

【写真】スーツ姿×オールバックの木村拓哉がかっこいい! 『THE SWARM/ザ・スウォーム』メインビジュアル

■木村演じる“ミフネ”は何者なのか

 全8話から成る『THE SWARM/ザ・スウォーム』の舞台になるのは、クジラやシャチが人間を襲い、ロブスターによる謎の感染症がまん延するなど、突如、海で不可解な現象が巻き起こる世界。木村が演じるのは、海洋問題に取り組む“ミフネ財団”の創始者で慈善家の日本人アイト・ミフネで、まだベールに包まれた状態だが、ドルジャーによると、ストーリー終盤で、ピンチに手を差し伸べるキャラクターになるという。

 「ストーリー終盤で、科学者たちが国際委員会に訴えて北極海に船を出そうとするのですが、費用が出せないと断られてしまいます。
そんな時に頼れる存在として白羽の矢が立ったのが、先進国の中でも特に海と深い関わりを持つ日本でした。日本には約7000個の島があり、陸地の約12倍の海域を持つと何かの本で読み、金銭的な支援をして科学者たちを後押しする役割を果たすキャラクターは、海と深く関わりのある国の人がいいなと思い、ミフネが誕生しました」

 木村演じるミフネは、原作の後半で非常に重要な役割を果たす、米軍総司令官の女性ジュディス・リーを、木村のイメージに合わせて作り変えられたキャラクターだ。さらに、リアリティーを生むため、“海運業で富を築いたが、同時に海へダメージを与えてしまったことも自覚している”というバックグラウンドも加えられ、科学者たちを支援することが、自分自身が海に与えてしまったダメージを払拭し、世界を救うためのチャンスだとも考えている。

 そんなミフネを演じた木村は、撮影現場で、ドルジャーを驚かせる“とある提案”をしたという。木村の機転の利いた対応を見て、ドルジャーが「これが本当のプロフェッショナルだな」と感心した出来事があったそうだ。

■ドルジャーが感心した木村の提案とは?

 それは、ミフネのオフィスのシーンの撮影でのこと。
2日間かけて、ビデオ通話のシーンを撮影したり、グリーンバックで背景を変えたり、さまざまなことをこなさなければいけないスケジュールだった中で、木村の控室は、撮影現場から離れたところに用意されていた。通常は移動も含めて撮影現場まで30分かかる場所だったそうで、これではかなりのタイムロス。そこで木村は動いた。

 「撮影が終わった後、彼が控室に行ってから5分後くらいに、すぐメイクさんと衣装さんを引き連れて撮影現場に戻ってきて、『控室を用意してくれるのはとても感謝しているけど、行ったり来たりする時間がもったいないから、撮影場所にスペースを用意してくれればそこでメイク直しや着替えをするよ』と言ってくれたんです。セットの隅の方に椅子を置いてカーテンをかけてスペースを作り、そこでメイク直しや着替えをしてくれたので、5分で衣装替えができるようになり、そのおかげで色々なアングルでの撮影や、監督と共に演技を深めることができました」

 「普段、大スターと仕事をしている自分の経験からすると、作品や演技がどうこうというよりも、自分がどう扱われるかの方が大事という人は結構いますが、木村さんは全くそうではありませんでした。自分がやりやすい環境にこだわるのではなくて、時間を無駄にせず、より良い作品を作りたいという思いからこのような提案をしてくださり、これが本当のプロフェッショナルだなと感心しました」とドルジャーは振り返る。


 また、ドルジャーは、木村の演技を見て、ハッとさせられたことが3つあったそう。それは「1つ目は年齢を重ねていて大人の成熟した権威を表現できる感性、2つ目は知性が感じられること、最後はスクリーン上の存在感でした」と話し、ミフネという役を演じきり、他のキャストとも良いバランスを保っていたという木村との仕事を「とても素晴らしかったです」と語る。さらに「彼のためにミフネというキャラクターを作ることができて本当に良かった」と満足げな様子を見せた。

■本作で伝えたかったこと

 プラスチックごみなどによる海洋汚染や、温暖化による生態系の変化など、さまざまなニュースが絶えない、海の環境問題。本作は、それらをエモーショナルなドラマを用いて掘り下げていき、暴走する海の世界をスリリングに描く。しかし、見ているうちに、実はそのモンスターは、海の中に潜んでいるのではないと気付かされることになる。
第1話からすでに、戦慄が走る展開が待ち受けているが、本作で伝えたいのは、「気候変動や海を守るために、われわれ全員が行動することができる」ということだとドルジャーは語る。

 「今まで皆さんが環境に対してどう振る舞ったのかは別にして、本作を見ることで、環境に対してまた違った向き合い方ができるようになればと思っています。若い世代の中には、環境に対するダメージがあまりにも大きすぎて、『希望がないんじゃないか』『もう何をしても無駄なんじゃないか』と思っている方もいると思いますが、まだまだ私たちにもできることがあると感じてもらえればうれしいです」。(取材・文=阿部桜子)

 Huluオリジナル『THE SWARM/ザ・スウォーム』は、Huluにて3月4日より独占配信開始。