俳優・草なぎ剛が主演を務めるドラマ『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜22時)。本作は、草なぎ演じる代議士の秘書・鷲津亨が、愛する息子を意識不明に追いやった犯人を探すとともに、事件を隠ぺいしようとする権力者らへの復讐を遂げていくストーリーだ。

本作の魅力の一つが、草なぎ演じる鷲津が、溜まりに溜まった怒りをこれまで従わざるを得なかった権力者らにぶつけるシーンや、彼らと戦うために周囲に協力を仰ぐシーンだ。今回は、これまで放送された鷲津の“シビれるセリフ”が飛び出したシーンを振り返りたい。

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■ 「あいつらに教えてやる。踏みつけられたらどれだけ痛いか」

 第1話からは、鷲津が息子の事件の陰で糸を引いている権力者の存在に気づき、真相究明を決意するシーン。犬飼大臣(本田博太郎)の忠実な秘書として仕えてきた鷲津だが、息子・泰生(白鳥晴都)が歩道橋から転落して意識不明となった報を受けて絶望する。そんな彼のもとにお見舞いに駆けつけた犬飼は、事件の可能性がある泰生の転落を「事故」として受け入れるよう鷲津を説得。困惑する鷲津に対し、さらに脅しとも取れる発言をして立ち去る。

 ここまで誠心誠意尽くしてきた雇い主からの圧力に、怖気づいたかのように見えた鷲津。そんな夫の姿に妻・可南子(井川遥)は不満をぶつけるが、鷲津の思いは全く反対だった。鷲津は「力のあるヤツはどんな要求も通るのか? 弱いヤツはどんなことでも飲み込めっていうのか!? ふざけるな!」と憤り、犬飼が持参したお見舞いのりんごをその手で握りつぶす。さらに「あいつらに教えてやる。踏みつけられたらどれだけ痛いか、教えてやる!」と可南子に宣言するのだった。
第1話を通して、温厚だった草なぎ演じる鷲津が我慢の限界に達して激高するさまは、虐げられてきた弱者による権力者への反撃、という本作のテーマを見事に表現している。
 
■ 「弱い者の痛み、せめて想像ぐらいしてみろよ!」

 息子の事件の真相究明を開始した鷲津。第2話では、犬飼の懐刀で政策秘書の虻川(田口浩正)との対決が描かれた。鷲津らの仕掛けた罠に引っかかり、犬飼のイメージを失墜させるミスを立て続けに起こした虻川だったが、それでも彼の地位は盤石。なぜなら虻川は犬飼も知らない事務所の金の流れを把握し、うかつにクビにできないのだ。それを自覚する虻川は、自身を罠にはめた鷲津を「バカが! 大人しくしたがっていればいいものを!」と挑発するのだった。

 これに怒りが頂点に達した鷲津は「考えたこともないだろ? 他人の痛みも悔しさも。だから平気で人を踏みつける。弱い者の痛み、せめて想像ぐらいしてみろよ!」と激高。その剣幕にはさすがの虻川も怯んでしまう。なお、実は虻川の生命線である“裏帳簿”はすでに鷲津側の手中にあり、犬飼もその存在を把握。虻川は解雇されることとなった。

 
■ 「取るに足らない秘書にも、運転手にも、それぞれ大事なものはあるんです」

 第3話では、ついに鷲津が犬飼と直接対決する。虻川が事務所を去り、鷲津は犬飼の政策秘書官に昇格。犬飼から泰生の事件の犯人を探さないように、改めて釘を刺された鷲津だったが、それでも犬飼の専属運転手の牛尾(矢柴俊博)に接近するなどして捜査を続ける。

 しかし、犬飼に脅された牛尾が、家族を養わなければならない立場から、そのことをバラしてしまう。犬飼は鷲津を党の会合に呼び出すと、そこで彼が息子の件で陰で自身について調べていると糾弾。困窮(きゅう)していたときに雇ってやった自分への恩を仇で返していると罵ると、彼の頭からグラスの酒をかけ、解雇を宣告する。

 それでも怯まない鷲津は「力があるから、特別だから、弱いヤツを踏みつけるのも当然の特権だと思ってる。だけど、取るに足らない秘書にも、運転手にも、それぞれ大事なものはあるんです」と訴えると、「何でも、誰でも思いどおりにできるって、思い上がるのもいい加減にしろ!」と、犬飼に怒号を浴びせるのだった。1話の決意のシーンの後も、従順な態度を偽り続けてきた鷲津がついに雇い主の犬飼に牙をむく、序盤の山場となった名シーン。結局、“裏帳簿”から過去の受託収賄容疑が明るみとなり、犬飼は失脚することに。

■ 第7話ではついに事件の隠ぺいに動いた張本人と直接対決!

■ 「力が欲しいんです。俺も大きな権力に抗えるだけの力を」

 犬飼を失脚させ、自ら次の選挙で立候補する決意を固めた鷲津。
第4話では、息子の事件の真相に迫るため、今度は犬飼の後援会の会長・鰐淵(六平直政)に接近する。鰐淵は当初、犬飼の地盤を継ぐのは犬飼の息子・俊介(玉城裕規)であるとかたくなに主張し、一度は鷲津を拒絶する。しかしその後、犬飼親子から鷲津についてうそを吹き込まれていたことが分かり、わだかまりは解消することに。

 鷲津は、息子・泰生の事件に隠された真実を明らかにする決意を明かし、「力が欲しいんです。俺も大きな権力に抗えるだけの力を」と真っ直ぐな目で鰐淵に訴えかける。鷲津の言葉に心をつかまれた鰐淵は、選挙サポートすることを鷲津に約束するのだった。

■ 「本当はずるくて、弱くて、かっこ悪い大人なのに…。だからこそ息子に誇れる人間になりたい」

 第5話では鷲津の選挙戦がいよいよ開始。党内の派閥争いに巻き込まれ、総理の息のかかった対立候補を相手に、鷲津は苦しい戦いを強いられることに。選挙戦も終盤、鷲津は鴨居ゆう子大臣(片平なぎさ)が応援に駆けつける中で最後の演説に臨む。

 本来は「地域経済の復興、再開発」をアピールする予定だったが、鷲津は「私はずるい大人でした。秘書という仕事をする中で正しいことばかりしてきたとは到底言えません」と話し始めると、かつてルール違反をする若者たちを注意したとき、息子が「かっこいい」とほめてくれたことを回想。
「本当はずるくて、弱くて、かっこ悪い大人なのに…。だからこそ息子に誇れる人間になりたい。強い者にも向かって行ける、正しい道を突き進もうとする代議士に私はなりたい」「大きな力に潰されそうになっても、声を上げ、知恵で乗り切る、弱くても強い代議士に私はなりたい」と、自分をさらけ出す魂の演説を披露。鬼気迫る演説の介もあってか、鷲津は当選し、国会議員として永田町に乗り込むことになる。

■「全部自分の思い通りにしたいくせに何が贖罪だよ! ふざけるな!」

 第7話では、泰生を突き落とした真犯人が判明する。それは、今まで鷲津と妻・可南子のことを気にかけていた鴨居大臣の実の息子だった。鴨井は、息子を守りたい一心で暴力事件の隠ぺいに動いたこと、被害者が鷲津の息子だと知り、贖(しょく)罪の意味を込めて鷲津夫婦に接近したことを目に涙を浮かべながら明かす。

 しかし、鷲津は鴨居の本心を見抜いていた。「贖罪? そんなのうそだ。息子を守りたい? それもうそ」「あなたが守りたいのは総理を目指す自分だけ。自分が一番かわいい。だから傷一つつけたくない。
だから息子の罪を隠した」「全部自分の思い通りにしたいくせに何が贖罪だよ! ふざけるな!」と畳み掛けるのだった。

 一方、鷲津に全て見透かされていたと分かった後、片平演じる鴨井の開き直りの態度も印象的。「だって、ほかに女性総理になれる人間いる?」と鷲津に問いかける鴨井は、社会から見捨てられた女性や弱者に救いの手を差し伸べるためには、女性の自分が男性社会の永田町でトップに立たなければならない、という使命感を持っていることが明かされる。弱者を助けるためにこそ権力を欲している、という動機は実は鷲津と重なるところもあり、実は2人がコインの裏表の関係にあるということが判明。複雑な余韻を残す回だった。

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