“サスペンスの女王”片平なぎさ主演で、放送開始から30周年の節目を迎えた『赤い霊柩車』が、シリーズ第39弾をもって長い歴史に幕を下ろす。ヒロインの明子(片平)&春彦(神田正輝)の“婚約者のまま”のカップルや、大村崑と山村紅葉によるコミカルな掛け合いもファンに愛されてきた本シリーズ。
【写真】明子と春彦、長すぎる婚約関係の行方は?
■ファイナルに達成感「みんな元気でよかった!」
石原葬儀社の社長、明子が数々の殺人事件の謎を追い求めていく本シリーズ。『山村美紗サスペンス 赤い霊柩車39 FINAL~弔の京人形~』(フジテレビ系/3月17日20時)では、明子が、幼なじみの伊織(松下由樹)と偶然に再会。彼女が師事していた友禅下絵師・九条万葉(羽場裕一)が殺害され、明子が事件解決に奔走していく。なぜか明子の周りで多発する事件の顛(てん)末だけでなく、明子と春彦の関係性やレギュラーメンバーによるおなじみのやり取りも見どころで、ファイナルだなんてさみしい…と思っているファンも多いはず。
1992年に第1作が放送されて以来、明子を演じ続けてきた片平は「これだけ長く、自分のライフワークのように続けてきた作品」と切り出しつつ、「でもみんな歳を取っていきますので、長くやればいいということではないと思うんです」ときっぱり。「第1作目から愛してくださった視聴者の皆さんのイメージを壊してはいけないと思うし、そういう意味ではギリギリかなと。30周年ですから、30歳の年齢を重ねていると思うと、やっぱり不安はありますよね。そんな中、みんな元気で完走できたことが何よりもうれしい。これまで当たり前のようにみんなに会えていたので、“これで終わりだ”と思うとさみしいですが、“みんな、元気でよかった!”って。やりきった感があります」とファンに寄り添いながら、清々しい表情を見せる。
コロナ禍に突入したことで京都での撮影が叶わず、前作からファイナルまでには3年の空白期間が生まれた。片平は「セリフ覚えはいいほうで、それまでは現場に台本を持っていくことはほとんどなく、演じることができていました。でも3年のブランクがあったことで、ページにすれば10ページ近くある、長い謎解きのセリフを覚え切ることができるだろうかという怖さが生まれて。今までできていたことができなくなるという不安を初めて感じ、“ここが限界なのかもしれない、私も卒業かな”と。そういった意味でもやりきった気がしています」と素直に打ち明け、第39弾でファイナルとなることに「“39”って、“サンキュー”ですよね。感謝の気持ちがこもっていていいなと思っています」と目尻をさげる。
■明子&春彦カップルはどうなる?「私は“結婚させたい”に一票を投じました」
京都で葬儀社の社長を務めている明子と、東京で医者をしている春彦は、遠距離恋愛中のカップルだ。事件解決に前のめりになる明子、そんな彼女を見守る春彦という、なんともお似合いの2人だが、これまで“婚約者のまま”という関係性が続いてきた。
片平は「我ながら、引っ張ったな!と思います」と楽しそうに笑いつつ、「10年くらい前から、この年齢になって“フィアンセの…”“婚約者の…”と春彦さんを紹介するセリフを言うのが、恥ずかしくて。もう若くないのに」と告白。「プロデューサーの方に、どうしても“婚約者”というセリフを言わなきゃいけないですか?と聞いたこともあるくらいです。でもそんな時に神田さんが、“僕たちはサザエさんなんだよ。
「ファンの方から頂くお手紙でも、2人の結婚を望んでいる声が多かった」という片平。ファイナルにあたっては、制作陣の中でも「結婚させるべきか、婚約者のままにするか、意見が分かれた」のだとか。「答えは言えませんが、私としては“結婚させたい”派。そちらに一票を投じました」と結婚を望みながら見届けていたそうで、視聴者に向けて「結末を楽しみにしてください!」と呼びかける。
■2時間ドラマの減少は「時代の流れ。長い歴史の中に携われただけでも幸せです」
かつては各局で2時間ドラマが制作され、数々の名シリーズが誕生した。しかし近年は徐々にその枠が減り、新作の2時間サスペンスに触れる機会も少なくなった。
さらに「32歳くらいから『赤い霊柩車』が始まって、ここまで続いた。私はデビューしてから48年くらいになりますので、その大半を『赤い霊柩車』と過ごしてきました。女優としても“育ててもらった”という、感謝しかありません。ファンの方から頂くお手紙でも、『赤い霊柩車』のことが書いていないお手紙はないです。本当に愛された作品なんだなと感じています」と女優人生においても、かけがえのないシリーズになったという。
レギュラーメンバーとの出会いも、片平にとって宝物だ。春彦役の神田については、「公私にわたり相談に乗ってもらっている、お兄ちゃん」と表現。「車について相談したら、すぐに神田さんが懇意にしている車屋さんを教えてくださったり、おいしいご飯屋さんを教えてくれたり。
石原葬儀社の秋山専務を演じる大村崑は、「30年間一度も、NGを出さないんですよ。師匠(大村)の脳みそはどうなっているんでしょう! 暴露裏話をするならば、師匠は自分の出番のシーンしか台本を読まないんです。それには理由があって、師匠は放送をこよなく楽しみにしているから。秋山さんは事件に関わっていないので、なるほどそのほうがリアルなんですよね。放送で事件の展開を見たいから、台本を読まないんだとおっしゃっていました」とシリーズの一番のファンだという。
そして事務員の良恵役の山村紅葉とは、「すごく長いお付き合いで、プライベートでも食事に行く仲」だそうで、「先日シリーズの第1回目を観たところ、もみちゃんがとてもおとなしい京女として、良恵さんを演じていました。回を増すごとにコメディエンヌになっていったんですね。それは師匠のお導きがあったからこそ。師匠の教えがあって、今のもみちゃんが確立した。もみちゃんは現場でも黙々と自主トレをする、努力家です」と賛辞が止まらない。
片平にとって、明子は理想の女性として残り続けるという。「明子を演じる時には、刑事っぽくならないことを心がけていて。犯人と接する際にも、追い詰めるのではなく、感情を大切にしてきました。春彦さんとのやり取りもそうですが、かわいげのある女性でありたいと思っていました」と役作りのこだわりを口にしながら、「私自身、歳を重ねてもかわいいおばさんでいたいし、かわいいおばあちゃんになりたい。狩矢警部を演じる若林豪さんは、狩矢警部としてはダンディな2枚目ですが、普段はお茶目でとてもかわいらしいんです。あんなふうに歳を取っていきたいなと思っています」と宣言。
シリーズへの愛とサービス精神たっぷりにインタビューに応じた片平なぎさからは、充実感とキラキラとした笑顔があふれていた。(取材・文・写真:成田おり枝)
『山村美紗サスペンス 赤い霊柩車39 FINAL~弔の京人形~』は、フジテレビ系にて3月17日20時放送。