「ウルトラマン」の新テレビシリーズ『ウルトラマンブレーザー』(テレビ東京系/毎週土曜9時)が、7月8日から放送スタート。本作の主人公は、特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD(スカード)」の隊長を務めるヒルマ ゲント。

半世紀を超えるウルトラマンシリーズで初となる “変身する隊長”だ。人の命を救うために力を欲する彼がウルトラマンと共鳴し、地球の平和を守るために変身して戦う。また、「コミュニケーション」をテーマに掲げる本作では、現実社会でも起こりうる様々な対立に登場人物たちが立ち向かうヒューマンドラマも描かれる。今回、ヒルマ ゲント役を演じる俳優・蕨野友也にインタビューを実施。ゲントの口ぐせ「俺が行く。」についてや、「ウルトラマン」への想いなどを語ってもらった。

【動画】蕨野友也がキャッチコピー「俺が行く。」に込めた想いを語る

■子どもたちが大人になっても心のどこかに残る作品に

――本作への出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

蕨野:実は田口清隆監督が「新しい『ウルトラマン』をやりたい」とお話をされているのを聞いていたんです。最初は「自分でいいのかな」という気持ちがありましたが、自分を選んでいただいたからには、今持っているものすべてを出し切らないといけないなと思って撮影に臨みました。

――蕨野さんは子どもの頃から「ウルトラマン」に触れてきていると伺いましたが、「ウルトラマン」をどんな存在だと感じていますか?

蕨野:神秘的な存在ですね。そして、「ウルトラマン」はただ怪獣をやっつけるための存在ではない。本作は「コミュニケーション」がテーマとしてあり、作中でどのようにウルトラマンブレーザーと意思疎通を取るのかも描かれるんです。そこに田口監督はリアリティを求めていました。


――「ウルトラマン」は子どもたちにとって憧れの存在であり、大人になるとまた違った側面が見られるヒーローだと思います。

蕨野:僕自身も小さい頃は、怪獣をやっつける“カッコよくて強い存在”という印象が強かったです。でも、大人になってから振り返ってみると「そういう意図があって戦っていたんだ」ということが少しずつわかってくる。今回の『ウルトラマンブレーザー』も、子どもたちの心のどこかに残って、大人になっていくにつれて理解してもらえるような作品になるよう、僕たちも全力で取り組んでいます。

――余談なのですが、出演発表時のコメントでは赤白帽子を使って「ウルトラマン」のモノマネをされていたともありました。私も蕨野さんと同世代なので、同級生たちと同じマネをしていました。

蕨野:ですよね! 懐かしい。僕たちが子どもの頃って、エンタメの数も見られる媒体も少なかったじゃないですか。でも、今の時代は多種多様なエンタメに溢れている。そんな世の中で生きる子どもたちにとってもウルトラマンブレーザーは、昔の僕がそうだったように「強いし、カッコいい!」と言われる存在になればいいなと思います。

■勇敢で仲間思いが故の「俺が行く。」

――ヒルマ ゲントは、勇敢な部分もあれば落ち着きも感じられる人物です。蕨野さんはゲントをどのような人間だと捉えていますか?

蕨野:彼は30歳で妻子持ちなんです。
となれば、ある程度の落ち着きはあると考えて撮影に臨みました。ゲントという人間を象徴するのが、やはり口癖である「俺が行く。」だと思います。この言葉は、「自分でやったほうが早い」という気持ちから出ている部分もあると感じていて。しかし、それは裏を返せば「自分がすべてを背負い込めば、仲間や周りに迷惑をかけない」という想いがあるのだと台本を読んだときに思いました。単なるわがままで行動しているわけじゃなくて、「俺の身ひとつで解決するなら、それでいい」という気持ちから出る言葉なんじゃないでしょうか。勇敢さと仲間思いな一面がある彼だからこその言葉なんだと感じます。

――「俺が行く。」の意味を、子どもたちがどう感じるのか気になるところですよね。

蕨野:そこはもう、みなさんの判断に任せるしかないです。「俺が行く。」には責任も含めて色んな意味が込められているんですよ。何よりゲントたちは命がかかっていて、失敗したらそこで終わり。「SKaRD」というチームを組んで、隊長として地球を救うという指令がきたからには、ゲントとしても「俺が行く。」だけでは済まなくなってくる。しかし一方で、部下の命を危険に晒すくらいなら俺がという気持ちもある。
その葛藤を抱えながら、地球の平和を守るために戦います。

――理想の上司という感じでカッコいいです。

蕨野:でも、彼は話を聞いているようで聞いていないときもありますよ。本当は分かっているけれど多くは反応しないとか。みなさんの日常の中にもある上司と部下の関係とか「あるよねそういうの」っていうある種のリアリティがちりばめられているかもしれません。

――それは本作のテーマでもある「コミュニケーション」にも関わってくる部分かと感じます。

蕨野:僕たちの日常生活においても、誰かと話したからといって必ず悩みが解決する訳ではありません。「コミュニケーション」は取るほど相手のことを知れますが、いい面ばかりが見えてくる訳でもない。とはいえ、取らないと互いの気持ちは伝わりません。本当に難しいです。相手のことを思って言葉をかけるのも大事ですし、ときには“言わない”という選択も必要になったりしますし。

――撮影でも、共演者の方と色々な「コミュニケーション」を取っていったのでしょうか?

蕨野:もちろんです。
特に伊藤祐輝さん(副隊長ナグラ テルアキ役)とは密に連絡を取り合ったり、「ちょっと聞いて欲しいことがあるから来てもらえないか」と実際に会ったりしていました。「SKaRD」のメンバーとは、そういう関係性を日常から築いていましたね。

■見どころは「コミュニケーション」の難しさと相互理解

――改めて、撮影について心がけたことなどお伺いできればと思います。

蕨野:僕たち「SKaRD」はプロフェッショナルが集まった集団です。ですから、演じる役者もその気持ちが根底にないといけないと思ってます。役者が「プロフェッショナル」であることを忘れずにいないと、緩んでしまうというか。その役でいるために自分がどうしたらいいのかというのは、常に考えながら取り組みました。

――共演者の方々との協力で生まれるものもありますよね。

蕨野:あります。役者だけでなく、監督やスタッフのみなさんが作ってくれる雰囲気、技術的な面でいえばセットや美術に僕たちはすごく助けられています。色々な方たちの力で僕たちはこの『ウルトラマンブレーザー』という世界に飛び込ませてもらっているのでとても感謝しています。

――最後に、本作の見どころをお願いします。


蕨野:本作の世界では日常的に怪獣が出現します。そんな世界でウルトラマンブレーザーに頼るだけではなく、“自分たちの力で何かを切り開けるのではないか”と考えることがとても大事だとこの作品を通じて感じました。また、大きなテーマとして掲げられている「コミュニケーション」の“難しさ”と“どう理解し合って一緒に前へ進むのか” がしっかりと描かれています。最後までご期待ください。

(取材・文:中筋啓 写真:小川遼)

 『ウルトラマンブレーザー』は、テレビ東京系にて7月8日より毎週土曜9時放送開始。

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