昨年末から今年頭にかけて『silent』『ブラッシュアップライフ』と、立て続けに深い印象を残した夏帆。2003年にCMデビューしてから芸能活動20年となる彼女の実力は、ここにきてさらに加速しており、2020年以降だけでも、配信を含み、単発&連続ドラマ14作品、映画6作品、舞台1本と、驚くほど多くの作品に出演してきた。
【写真】デビューの頃から変わらない、圧倒的透明感!<インタビューフォト>
◆2年連続の舞台に「ちょっと不安もあった」
さまざまなジャンルの作品に引っ張りだこだが、やはり映像でのイメージが強い夏帆。実際、舞台は2012年の初舞台から2016年までに5本の舞台を経験したのち、昨年の木野花演出『阿修羅のごとく』までに6年空いた。だが今回、『いつぞやは』で2年連続での舞台出演に挑む。
「『阿修羅のごとく』をやって、舞台ってやっぱり難しいなと思ったんです。できないことのほうが圧倒的に多かった。
『いつぞやは』は、第67回岸田國士戯曲賞受賞の気鋭の劇作家・演出家である加藤拓也の書き下ろし舞台。共演には窪田正孝、橋本淳、鈴木杏、今井隆文、豊田エリーが顔をそろえる。
とりわけ豊田とは、デビュー間もないころ、ともにユニットを組んでいた仲だ。「当時はお芝居をしていたわけでもなかったですし、そこから20年近くの時を経て、舞台で共演できるというのが、すごくうれしいです。感慨深いですね」としみじみ。演出の加藤も演者たちも全員が同世代ということもあり、「すごく自分の世代に近い感覚。
◆話題作での高評価も「いい作品と巡り会えただけ」
さて、現在の夏帆を語るには、『silent』と『ブラッシュアップライフ』に触れないわけにはいかないだろう。反響の大きさは、もちろん夏帆にも届いていた。「この2本は、放送中にも撮影していたので、リアルタイムで反響が届いてきていたんです。そうした経験ってこれまでにほとんどしたことがなかったので、すごく驚きました」。
『silent』では、さまざまな感情を見るものに訴えかける奈々を演じ切った。
ただ「『silent』は本当に大変だったので、報われた気持ちはあります」と振り返るとともに、2作ともに共通するある手ごたえを感じたと口にした。
◆20代の選択が、全ていまの私に繋がっている
そんな夏帆は、かつて『天然コケッコー』『箱入り息子の恋』などで清純派と呼ばれ、その後『パズル』『東京ヴァンパイアホテル』『Red』ほかで「挑戦的な役柄に挑んでいる」と称された。そして今現在、とてものびやかに映る。「10代の頃は事務所に仕事を選んでいただいていたのですが、20代に入って、自分で選ぶようになりました」と明かし、自身の変遷を次のように見つめる。
「それまでも事務所に“決められて”いたわけではありません。私自身が、自分がどういったものをやりたいのか、分かっていなかったんです。20代に入って、先を見据えてではなく、そのときそのとき興味があることを、いろいろ試しながらやってきました。そして今ここにいます」と。
そしてさらに「私自身は、清純派と言われることに囚われて、大きく何かを変えようと思っていたわけでもありません。いろんな作品を観て触れたり、自分も仕事をしていくなかで、自分自身の興味も広がっていって、より自由になっていきました。だから、もがいたり反発しながら進んできた20代ではなく、自由に、『自分にはどんなことができるのかな。何が好きなのかな』と探しながら選択してきた結果が今なんです」と続けた。
芸能生活20周年を数える現在、32歳となった。「いまは自分のできることとできないこと、得意なことや苦手なことがなんとなく見えてきた段階。この先どうやって仕事を選んでいこうかと、また模索しています」と穏やかに、しかし強い意志を含ませて語る夏帆に、「40歳になった自分に、今の自分が声をかけるとしたら?」と質問すると、しばしの逡巡のあと、答えをくれた。
「願うのは健康だけです。20代の選択が全ていまの私に繋がっているので、40代の私に繋がるのは、これからの私の選択ということ。なので、これからの自分に『いろんなことを、楽しく、そのときそのときで選択して積み上げていってね』と言いたいです。そして40歳の私へは、『何をやっているかな。楽しみにしているよ』と伝えたいです」と笑顔を見せた。私たちも楽しみで仕方ない。(取材・文:望月ふみ 写真:高野広美)
舞台『いつぞやは』は、8月26日~10月1日東京・シアタートラム、10月4日~9日大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。