2004年に『ふたりはプリキュア』のテレビ放送が開始されて以来、子どもたちを中心に幅広く愛され続けている『プリキュア』シリーズが今年で20周年に突入。9月15日からは、5年ぶりに全テレビシリーズのプリキュアが大集合する『映画プリキュアオールスターズF (エフ)』が公開となる。

今回、キュアバタフライ/聖あげは役の七瀬彩夏、キュアアース/風鈴アスミ役の三森すずこ、キュアミルキー/羽衣ララ役の小原好美キュアマカロン/琴爪ゆかり役の藤田咲ら「キュアバタフライチーム」にインタビュー。シリーズの垣根を超えてプリキュアたちが“絆”を深めながら団結する20周年映画の印象や、本作のキャッチコピー「繋ぐ」にちなんだ質問に答えてもらった。

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■みんなの思いを背負って頑張ろうと思いました

――『プリキュア』シリーズ20周年プロジェクトの一環として生まれた本作。出演が決まったときの気持ちを教えてください。

七瀬:シリーズの垣根を超えてたくさんのプリキュアと交わる機会があることが、単純にすごくうれしかったです! ただ、いつも一緒だった『ひろがるスカイ!プリキュア』のみんなと今回は別のチームになると聞いたときは、「一体どうなるんだろう?」と思って、ワクワクとドキドキの気持ちが混在していました。

三森:「キュアアースも少しでも姿が映ればいいな」「一言でもセリフがあったらうれしいな」という気持ちだったんですが、ポスタービジュアルを見たら、そこにキュアアースが描かれていて! すごくうれしかったです。
同時に、今回『ヒーリングっど・プリキュア』からはキュアグレースとキュアアースが代表して各チームに加わるとお聞きし、背筋が伸びる思いでした。

小原:キュアミルキーたちが活躍した『スター☆トゥインクルプリキュア』は、シリーズ16作目となる作品で、当時は15周年を経て、20周年に向けて改めてスタートを切るシリーズだとスタッフさんから伺っていました。そこからあっという間にここまできて。20周年はきっとお祭りになるんだろうなと思っていたら、「オールスターズ」の映画が公開されるという発表があり、純粋に楽しみだなという気持ちでした。とはいえ、歴代70名以上のプリキュアがいるんだからチラッと姿が見られるだけでも…と思っていたら、代表メンバーに選んでいただいたとお聞きし、『スタプリ』みんなの思いを背負って頑張ろうと思いました。

藤田:お話を聞いたときは「またみんなに会えるんだ!」という気持ちでした。
その後、今回はシリーズの垣根を超えたチームで編成されるという説明を受けて、『キラキラ☆プリキュアアラモード』のメンバーとは別のチームになると思ったら、いきなり緊張してきちゃって。

同時に、今回は『プリアラ』の代表の一人なので、みんなの思いを背負いつつ、自分がしっかりしなきゃという気持ちも生まれました。ただ私は「プリキュア命!」だから、やっぱり関われるのがうれしいし、誇りに思っています。あの頃1年間頑張ってきた自分の精神を呼び起こして、収録に臨みました。完璧だったと思います(笑)。

――続けて、シナリオを読んだときの感想を教えてください。


七瀬:「強さって何だろう」とすごく考えました。強さってフィジカルだけじゃなくて、心の強さもあるんです。この映画を見たみんなが優しい心を持ってくれたらいいなと思いました。そして、そんなみんなの思いが身近な人たちにも伝染して、みんなが優しい心を持ってくれたら、それはとてもすてきなこと。そんな風に思わせてくれる映画です。

小原:映画の台本をいただいてから、改めて田中(裕太)監督に「どうしてこういう構成になったんですか?」と伺ったんです。
監督は、なぜシリーズのメンバーがバラバラになってチームを組むのかと思う人もいるだろうけど、でも一年間同じ思いで駆け抜けたのはどのシリーズも一緒だとおっしゃっていて。

その言葉を受けて私は、例えどのシリーズのメンバーと一緒になったとしても、大事なものがちゃんと伝わるのが『プリキュア』なんだろうなと感じました。とはいえ、それぞれのシリーズが積み上げてきたもの、テーマを映画のなかにギュッと詰め込むのって、すごく大変なことだと思うんです。それでも、スタッフのみなさんが愛をこめて、壮大な物語に仕上げてくださいました。そしてそんな物語の中心にいるソラの支えになれたらなって、シナリオを見たときに感じました。

藤田:登場するプリキュアすべての魅力を伝え、一つの映画として伝えたいものを伝えるというミッションを達成するには、この形がベストなんだなと思いました。
また、詳しくは実際に見ていただきたいですが、結構衝撃的な展開が待っているんですよ。これまでプリキュアを応援してくれている方々もビックリするかも。「私たちが憧れているプリキュアってこうだよね」って思ってもらえる作品になっている気がします。劇場に足を運んだみんなの感想が聞きたくなる脚本だなと思いました。

■藤田は来年で声優20周年 続けることの大切さ

――20周年プロジェクトの一環となる本作。皆さんは20年続いていることはありますか?

七瀬:私は…ないかもしれないです。
というのも、新しいものに次々と興味を持っちゃうことが多くて一つのことがあまり長く続かないんですよね。続けていきたいなと思うことはあるんですけど、20年って考えるとなかなか…。

藤田:最近は何を始めたの?

七瀬:アウトドアを始めました。バイクやロードバイクを買って走っているんです。これまでハマったことがあまりないから、今は逆に楽しいことを見つけている感じですね。

小原:私も20年続いていることってないかも。ちゃんと食べて、ちゃんと寝ることを20年以上続けているかな(笑)。

藤田:それはいいことだよ!

小原:でも、本当にそれくらいなんです。20年続くって、やっぱりすごいですね。

藤田:私は…ちょうど来年が声優を続けて20年になるかも。

一同:おー(パチパチパチ)!

藤田:続けることって難しいよなと思いつつ、でもたどり着いちゃうと、こんなもんかなって気持ちもあって。できることも増えてきたけれど、できないこともまだまだ多いから、まだまだ続けていきたいんです。そう思える仕事と出会えたのって、すてきなことだなと客観的には思いますが、実体験している身としては、こんなもんかなって気持ちがありますね。

――まだまだと思えるから、こんなもんかなって思いがあるのかも。

三森:確かに。

藤田:いつまでも、叱られていたいですね。

三森:私はダンスかな。仕事しはじめてからも踊る機会を頂いて、20年以上続いています。

七瀬:すごい!

三森:20年前は特にダンスレッスンを頑張っていた頃です。週7ぐらいでレッスンに通っていました。

藤田:毎日じゃん!

三森:そうなんです(笑)。今はその頃みたいに定期的なレッスンを受けている訳じゃないですが、踊ることはずっと続いています。

――続けるのが嫌になることはなかった?

三森:1回もないです! むしろ咲さんと同じで、まだまだだなってことばっかり。未だにレッスンに行かないと不安になるし、ダンスをしている人を見るのも好き。ダンスの見え方を研究するのが元々好きなので、そこも変わらないなって思います。ただ好きなだけですね(笑)。

――でも、好きじゃないと、20年はなかなか続かないかも。

三森:そうですね!

■夢が現実に 台本が繋いだ現在

――「繋ぐ」が一つのキャッチコピーである本作。皆さんは誰かに繋いでいきたい思い、誰かと分かち合いたいことってありますか?

七瀬:『プリキュア』の現場の皆さんって、本当に優しいんです。アニメのなかだけじゃなくて、キャストの皆さんが温かくて優しくて。そういう気遣いとか心遣いとか、相手を思いやれる気持ちがあるから、みんなプリキュアになれたんだなと、ひしひしと感じています。自分には、みんなのような温かさがあるかなって、毎回現場に行くときに思っていて。でも、だからこそ、自分に向けてもらった優しさを、誰かに繋げていきたいなと思っています。

三森:私が繋げていきたいものは、服やモノを捨てないこと。仕事で1回着たきりの服が結構あるんです。そういうのを昔は捨てちゃったり、妹にあげたりしていたのですが、本当に必要としている人に届いたほうがいいんじゃないかと思って。それを突き詰めていったら、リサイクルショップに売りに行ったり寄付したりするようになり、今はモノをなるべく捨てないように心がけるようになりました。なるべくリサイクルを心がけるSDGsの生活を送っています。

――そう考えるようになったのは、何かきっかけが?

三森:子どもが生まれてから、未来がすごく心配になっちゃって。規模の大きな話になっちゃうんですけど、この子が私ぐらいの年齢になったとき、地球の温度は何度くらい上がっているんだろうとか考えるようになったんです。そうしたら、小さなことから、私だけでもいいから、とりあえず始めないといけないなと思って。ストップ温暖化を進めています。

藤田:さすが、キュアアース!

――プリキュアもさまざまな地球の問題をテーマとして取り上げてきました。

三森:そうですね。子どもたち、未来のためにも、地球を大事にしないといけないなと思っています!

小原:私、年が10歳離れた弟がいるんです。その弟が小学生になったタイミングで、母がボランティアで読み聞かせをやるようになり、今でも続けています。弟も私も幼少期にたくさん絵本を読んでもらいました。絵本の読み聞かせがどう子どもの成長に作用するのか、正直分かってはいないです。それでも、母が「この子にはこの絵本がいいかな」とか「お姉ちゃんにこれを読んであげたから、弟にも読んであげよう」と思ってくれたその愛情や優しさを、大人になってからより感じるようになりました。

七瀬:すてきな話。

小原:実は母もおばあちゃんから絵本を読んでもらっていたらしいんです。だから、私もいつか子どもができたり、知り合いに小さい子どもができたりしたら、本を読み聞かせてあげたいなって思います。そういう母の活動を見て、いつしか私は絵本を自分で作ってみたいなと思うようにもなりました。私の今の夢です。その絵本を母は誰に読み聞かせてあげるんだろう。

――おばあちゃんから母へ、そして小原さんへとすでに繋がっているんですね。

小原:確かに!

藤田:いま話を聞いているなかで、『スマイルプリキュア!』でキュアハッピーを演じていた福圓美里ちゃんから台本を見せてもらったことを思い出しました。確か最終回の台本だったと思うのですが、当時の台本って、手書きだったんですよ。だから、例えば思いが強くなるようなシーンだと、字が大きくなったり、思いが乗って斜めになったりしていて。その台本を見たときに、「プリキュアってすごい!」って感動したんです。当時はデビューして間もない頃で、プリキュアはまだちょっと遠い存在というか。大谷翔平選手じゃないけれど、「憧れ」だったのかも。すごい世界があるんだ、いつか出られたらすてきだなという感じだったんです。

――なるほど。

藤田:その何年後かに、『Go!プリンセスプリキュア』で先代のキュアフローラ役を演じることになり、打ち上げにも参加させていただきました。その打ち上げで、メインキャラクターを演じていた4人があいさつしていたのですが、あのときの輝きが本当にすごくて。「あなたに、この役をお願いします」と言われて一年間それを全うしたら、こんなにキラキラするんだと思ったんです。それからマネージャーに「私はプリキュアになりたい。オーディションを受けさせてください」とお願いしました。そうして、今があります。おぼろげな夢だったものが明確な目標となり、かなえることができたのは、美里ちゃんがあの台本を見せてくれたから。そう考えると感慨深いですね。プリキュアって、すごいんです。

(取材・文:M.TOKU 写真:小川遼)

 『映画プリキュアオールスターズF』は、9月15日より全国公開。

※『ヒーリングっど・プリキュア』の「・」は記号のハート