櫻坂46は「進化」を続ける。最新の7thシングル「承認欲求」から、シングルごとに表題曲を歌唱する「選抜」と「BACKS」に分かれる「選抜制」を導入。

坂道グループの先輩にあたる乃木坂46では、同様のシステムによりこれまで数々のメンバーにドラマが生まれた。誰もが「選ばれる」「選ばれない」の岐路に立たされる環境への変化に、メンバーは何を思うのか。二期生の大園玲、三期生の谷口愛季と村井優に尋ねた。

【写真】谷口愛季を挟んで笑顔を見せる大園玲、村井優の3ショット

■歴代MVを手がけた加藤ヒデジン監督による撮影の舞台裏

――表題曲「承認欲求」は、SNS全盛の現代ならではのタイトルです。

大園:誰しも「承認欲求」があると思いますけど、歌詞を頂いたときは求め過ぎると自分を見失ってしまうから、そうなる前に自分で自分を認めてあげてほしいというメッセージが皆さんに届いてほしいと思いました。ダンスは、曲調がすごく速くて、ダンサーさんも一期生さんも口に出すほど最難関の振り付けでした。常に進化し続けたい私たちに、ピッタリだと思います。

――本作から表題曲に三期生が参加。谷口さんと村井さんは、表題曲のMV撮影を初めて経験しました。

谷口:レッスン期間から、先輩方とたくさんお話ししました。撮影の休憩時間に「上手にできなかった…」と後悔していたら、大園さんたちが励ましてくださって。表情の作り方とか、いろいろと勉強になりました。


――大園さんは、どのように励ましていたんですか?

大園:モノマネをして。今回、リップ(シンク)シーンの撮影では、「先読み」といって、当てはまるシーンの直前に「次はこの歌詞」とリードするために歌詞を読み上げる音声を流してくださって。その音声が棒読みで、マネをしたら三期生のみんなが笑ってくれました(笑)。

――(笑)。村井さんは、いかがでした?

村井:先輩方と一緒のレッスンは初めてで、振り付けを吸収するスピードが早く「すごいな」と思いました。撮影でも先輩方のカットを拝見して、じかに目で見て学ぶことが多かったです。

――谷口さんは、二期生の山崎天(※崎の正式表記は「たつさき」)さんが明るく励ましてくれたシーンがあったとブログで振り返っていました。

谷口:2番の画廊で撮影したシーンです。表情を上手に作れなくて「どうしよう…」と思って、撮影後に「上手にできなかったかもしれないんですけど」と相談したら、天さんが「大丈夫だよ」と明るく返してくださったんです。「カッコよかった。愛季ならできるよ」と励ましてくださって、失敗を引きずらず、次のシーンに挑戦できました。

――村井さんは、ブログで「先輩方の表情から目が離せませんでした」と述べていました。


村井:画廊のシーンで(大園)玲さんや、(二期生の)田村保乃さんのパフォーマンスが印象に残ったんです。表情や動作で伝わるものがたくさんあって、私も自分にしかない魅力を見つけたくなりました。

――名前の挙がった大園さんは、いかがでした?

大園:画廊のシーンは、正解が分からず苦戦しました。撮影後も「よかったのかな…」と不安だったんですけど、(振付師の)TAKAHIRO先生が「オレは好きだったよ」と言ってくださったんです。今こうして、優が言ってくれたのもうれしくて、ようやく「正解だった」と思えました。

――MVでは、感情を押し殺すような表情のカメラ目線も印象的でした。

大園:今回は加藤ヒデジン監督が、1人1人のキャラクターを提案してくださったんです。私は「内面が見えない感じ。エキゾチックな良さがある」と表現してくださったので、笑顔を封印しました。ミステリアスな感じを目指したので、伝わっていたらうれしいです。

――櫻坂46のMVでは、考察を楽しむファンもいます。村井さんは、画廊で一期生、二期生、新二期生、三期生が順番に踊るシーンには「過去→未来 未来→過去」の意味があるとブログで明かしていました。
もうワンシーン、何かヒントを頂けると…。


大園:全員で(二期生の)森田ひかるのスカートを引きはがすシーン(MVの2:56頃)です。衣装のスカート自体が人の「承認欲求」を表現していて、離したくても離せない無意識の欲求を、私たちが引きはがすイメージなんです。MVでは最後、シンプルな衣装の森田が大きな布の上で眠っていますけど、その布も欲求を表現しています。スカートを引きはがされても結局「布にくるまれている意味は何か」と、考察を楽しんでいただきたいです。

■思いを打ち明けた二期生・大園、覚悟を示した三期生・谷口と村井

――本作から、シングルごとに一期生~三期生が表題曲を歌唱する「選抜」と「BACKS」に分かれる新システム「選抜制」を導入。2020年2月に欅坂46の新二期生として加入、櫻坂46へ改名した歴史も知る大園さんは、グループの変化に何を思いましたか?

大園:みんなどこかで心の準備をしていた、というか。三期生の加入もあり、乃木坂46さんを見て「いつかそうなっていくだろう」とは思っていたし、驚きはなかったです。私も(櫻坂46の)1stシングル「Nobody's fault」で、それまで先輩方が作ってきた中に、ポンっと(新二期生として表題曲に初めて)入った経験があるので。似た立場の三期生の気持ちをくみ取って、自分にできることをやろうと思いました。

――表題曲の選抜に入れるか否かの葛藤は、同様のシステムを持つ乃木坂46のメンバーから伺ったこともあります。加入前の「坂道合同オーディション」ではグループ入りならず、坂道研修生を経て新二期生として加入。
かつて「選ばれない」経験も味わった大園さんは、似た葛藤を覚えたこともあったのかと。


大園:1人1人に物語があると思っていて。たぶん、自分が「選ばれない」と思うのは、誰かと比べるからだと思うんです。でも、自分は自分ですし…。「葛藤があったか」とは、誰かと比べて「選ばれないから」という意味に受け取ったんですけど、時間がかかったのは私の物語で、だからこそ、選ばれたときにファンの皆さんが喜んでくださったと思います。時間がかかってもかからずとも、それぞれのカッコいい物語になっているし、これからなっていくんだと思っています(と、言葉を詰まらせる)。

谷口&村井:(始終、大園の一言一句に耳を傾け、うなずきながらじっと見守る)

大園:例えば、選ばれなかったメンバーに自分が何か思っても、それが正解ではないし、経験したメンバーにしか気持ちは分からないので…。

――自身の経験もあるからこそ、似た気持ちのメンバーにも寄り添えるのかなと。

大園:(うなずきつつ)だから、他人と比べて「選ばれる」「選ばれない」と、考えたことはありません。

――切実な思いも語っていただき、ありがとうございます。本作で、大園さんのポジションは2列目。今後、表題曲でフロントやセンターへ立つ意欲は?

大園:初センターの「Cool」では、立ってみないと分からない苦労もありました。
孤独になるタイミングもあったんですけど、当時、TAKAHIRO先生が「センターは大園だから、何をやっても正解」と言ってくださったんです。経験して得られる考え方もあったし、前のポジションで踊りたいモチベーションではなく、成長のためにやってみたいとは思います。

――本作での変化について、谷口さんは「三期生が表題曲に参加することに対して、否定的な意見もあると思います」とブログで述べていました。

谷口:先輩方が作ってきてくださった櫻坂46の表題曲に、三期生が新しく入ることで、違和感を覚える方もいらっしゃるのかなと考えたんです。でも、たとえいたとしても巻き込めるくらい、三期生を受け入れてもらいたいと思って書きました。

――初の表題曲で、フロントを任されたプレッシャーもあったのではと思います。

谷口:今は、ありがたいです。最初は驚いたんですけど、自分にできることを精いっぱいやろうと決めていました。フォーメーション発表後、森田さんから「7枚目のシングル期間はよろしくね」と連絡を頂いて、それまでは「曲をどう表現すれば」と頭の中でグルグルと考えていたんですけど、連絡を頂いてからは「頑張るしかない」と切り替わりました。

――村井さんは過去のインタビューで「選ばれる」「選ばれない」で感情が揺れても「アイドルになった以上は受け入れなきゃいけない」と覚悟を示していました。

村井:アイドルに「選ばれる」「選ばれない」があるのは分かっていたし、私も、学校のダンス部やダンススクールで「選抜落ち」を経験してきたんです。「選抜か、選抜ではないか」だけを気にしたくはないですけど、受け入れなければと思っています。


――本作でのポジションは3列目。より前に、という意欲は?

村井:あります。ポジションだけがすべてではないですけど、前に立てれば、たくさんの方に見ていただけると思うので。グループを引っ張ってくれる先輩方の姿はカッコ良くて、私もそんな存在になりたいですし、櫻坂46を知るきっかけが自分になるのであればうれしいです。

■レギュラー番組「そこさく」で、大園の姿勢から“ガヤ”を学ぶ三期生の2人

――ファンクラブ限定のウェブラジオ「さくみみ」で、谷口さんと村井さんはお互いに「ほんわかしているところが似ている」と話していました。

谷口:優は、話し方がふわふわしているんです。加入後に仲良くなるまではクールな印象でしたけど、第一印象とのギャップもあるのかなと感じています。「どこどこ行ってくるね」と言いつつ、真反対に進んじゃったり…(笑)。

村井:(指を口元に当てて)シーッ!

谷口:(笑)。ふわふわしていて見守りたい、というか。そんな瞬間もあります。

――村井さんから見た、谷口さんは?

村井:お姉ちゃんっぽさとかわいさのギャップがあります。いつも「今日◯◯を食べた!」と自慢げに報告してくれるときは年下っぽくてかわいらしいんですけど、人前に立てば堂々としているし、凛(りん)としていてカッコいいです。

――グループ内では、大園さんもふわふわした印象があって…。三期生のお2人から見てのイメージは?

村井:優しいオーラを持っているし、尊敬しています。優しく朗らかさに包まれているけど芯があって、すてきです。

谷口:加入当初、緊張していた私たちを温かいオーラで迎えてくださったんです。話し方、選ばれる言葉が丁寧な印象もあります。

大園:エヘヘ…(笑)。

谷口:(笑)。いつも明るく、何でも笑ってくださるのも好きです。「そこさく」(レギュラー番組(『そこ曲がったら、櫻坂?』)のひな壇で隣に座って、大園さんの「確かに~」という相づちが聴こえてきたときは頼もしかったです。

――心強い。お2人のイメージに、大園さんの感想は?

大園:うれしいです。「そこさく」では席の順番が(収録ごとに)バラバラで、左が愛季ちゃん、後ろが優のときに、2人の相づちが聴こえてきたんです。番組を盛り上げる“ガヤ”は意識しないと難しいんですけど、(卒業生の)菅井友香さんが自分の話を相づちを入れながら聴いてくださったのがうれしかったのを覚えていて。それから、メンバーがしゃべるときに「リアクションしよう」と意識するようになったんですけど、愛季ちゃんが言ってくれたように、三期生も意識していたのはビックリしました!

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

 櫻坂46 7thシングル「承認欲求」は発売中。

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