NHK新BS第1弾となるプレミアムドラマ『仮装儀礼』が、12月3日より全10回で放送される。主演は青柳翔と大東駿介が務める。
【写真】プレミアムドラマ『仮装儀礼』主演の青柳翔&大東駿介
「宗教を作ろう。食っていくために」無職の男2人が、やけっぱちで立ち上げた“サービス業”――それは「宗教」だった。“無宗教”と言いながら、クリスマスを祝い、神社にお参りし、仏式で葬儀を行ったり。験を担いでみたり、パワースポットを訪ねたり。信仰心は持っているのに、「宗教」となるとタブー視したり、遠ざけたりしがちな日本社会。「宗教」って、なんだろう? このドラマは、今こそ「宗教」についてマジメに考える、面白くも哀しき物語である。
元・エリート公務員の正彦(青柳)と元・ゲーム会社社員・誠(大東)は、ある日突然職を失った。やけっぱちで始めたのは、「宗教」という名の「ビジネス」だった。適当につけた教団名「聖泉真法会」のホームページを立ち上げ、正彦は「教祖」となった。チベットの密教など様々な宗教を継ぎはぎにした教えを基に、身の上相談から始めると、思いのほか人々が訪ねてくる。儀式の作法や本尊の用意など、その場しのぎでなんとか切り抜けていた。しかし、ある企業の社長がパトロンとなった事から、「聖泉真法会」は飛躍的に成長する。
原作者の篠田節子は、ドラマ化に対し「活字では表現し得ない世界を、魅力的なキャストの皆様が、ときに熱くときに冷徹な演技で見せてくれるはずです」と期待を寄せる。主演の青柳は「信心とはなにか? 何者になりたいか? を追求していけたらと思っております」と意気込み。大東は「この撮影中ふと、僕らがしているのは、日々脚本というある種の仮想を現実にすべく向き合う儀礼のようなものだなと思いました。それを実現させるためには何より信じる力が必要で。無闇に信じることの危うさを感じる反面、無垢に信じることの尊さを感じます」とコメントした。
プレミアムドラマ『仮想儀礼』は、NHK BSプレミアム4K(新BS4K)/NHK BS(新BS2K)にて12月3日スタート。毎週日曜22時放送。
※キャスト・スタッフのコメント全文は以下の通り。
■コメント全文
<原作/篠田節子>
2008年発表の長編小説『仮想儀礼』から、脚本家さん始め多くのスタッフの方々の手で、2023年の日本の現実を切り取った新しいドラマが誕生しました。
金儲けのために宗教を起こそうと目論んだどん底の男2人を、青柳翔さんと大東駿介さんが、深刻かつ軽妙に演じてくれます。
自分たちが作り出したカミサマ、ホトケサマが、悩み多き人の心を引き寄せたとき、どんな風にコントロールを失い、どんな風に暴走していくのか。その先に何が見えて、どんな境地が待っているのか。
活字では表現し得ない世界を、魅力的なキャストの皆様が、ときに熱くときに冷徹な演技で見せてくれるはずです。
小説とはまったく異なる魅力を持ったもう1つの『仮想儀礼』。多くの視聴者の方々に楽しんでいただくと同時に、現実のもう1つ向こうにある、人間の真実を見つけていただけたら幸せです。
<脚本/港岳彦>
母方の祖母はある新宗教の敬虔な信者だった。口癖は「すべては神さまのおかげ」。土木作業をしながら単身で6人兄弟を育てた苦労人。とてつもなく優しい祖母がぼくは大好きだった。12歳のとき怪我で片目を失明した。
インチキな宗教団体の栄枯盛衰を描いた篠田節子さんの黙示録的大作「仮想儀礼」を、全500分のテレビドラマシナリオに脚色しました。カテゴリーは、喜劇。彼岸にいる祖母が見たら苦笑するかな。信仰のあるなしに関わらず、ご笑覧下されば幸いです。
<音楽/岩代太郎>
無神論者である私は、人々を良き方向へ導く為のアイコンとして、「神」という存在が創造されたと思っている。だが世界を見渡せば、「神」が戦火の種となり、無数の人々が殺りくされている今、宗教や神の存在意義に疑念を抱いている人々も少なくはないだろう。私も、その1人である。一方で、「信心」が人間に強い心をもたらすことも知っている。
音楽制作のコンセプトには、少々攻めた音楽性も織り交ぜてみた。ドラマ『仮想儀礼』が、多様性に満ちたメッセージを、私たちに授けてくれる作品だと思ったゆえである。私にとっては、5年振りとなるNHKドラマを、どうかご堪能戴ければと願っている。
<宗教考証/釈徹宗>
はたして、"誠実"な"宗教ビジネス"としての新興教団は成り立つのか。それとも所詮は詐欺まがいのニセモノ宗教の道を歩むのか。
人生に行き詰まった2人の男が立ち上げた虚構の宗教は、やがて2人の思惑を超えて動き始め、誰もコントロー
ルできないものとなっていく。
信仰・宗教・教団・カルトの動的関係について深く考えさせられる強烈な物語。
<鈴木正彦役/青柳翔>
台本にはこう書かれています。
愚かな2人が、真理と営利を追求する物語である、と。
真理と営利を両立する事は、バランスの取れたアプローチを取ることが重要だ、と。
この言葉に板挟みになりながら
信心とはなにか?
何者になりたいか? を追求していけたらと思っております。
<矢口誠役/大東駿介>
宗教とはなにか。信仰とはなにか。信じるとはなにか。
改めて考えると、情報が溢れかえり簡単に手に入る昨今、仮想と現実の境界線が曖昧になり、次々新しい情報を信じ、とたんにひっくり返り、また新たな情報を信じる。
情報も恋愛もダイエット法さえも信じるか信じないかで左右され、これはある種の信仰のようなものだと思うのです。
重要なのは真実か、信じられることか。
この撮影中ふと、僕らがしているのは、日々脚本というある種の仮想を現実にすべく向き合う儀礼のようなものだなと思いました。
それを実現させるためには何より信じる力が必要で。
無闇に信じることの危うさを感じる反面、無垢に信じることの尊さを感じます。
この作品が、どんな真実に辿り着くか僕自身楽しみです。
<制作統括/高城朝子>
実はこの企画、「宗教をコメディに? テレビではちょっと…」と何度も振られ、なかなか成立しませんでした。
笑いあり、涙あり、価値観がバグる一癖も二癖もあるエンタメに仕上がっております。ぜひ主人公たちと一緒に「宗教団体づくり」を体験してみてください。
<演出/岸善幸>
今という時代、人生という物語をハッピーエンドで終えられるのは、とても難しいような気がしています。人に優しい世界を求めながら、逆行することばかりが続く現実。そんな時代に宗教団体を立ち上げる2人の男。目的は金儲けです。教義も儀式もまがいものなのに、次第に信者が増えていく。言わば「嘘から出た実」を描きだすドラマです。嘘か、現実か、わからないことが多すぎる昨今ですが、その分、登場人物たちの歪みや滑稽さは、丁寧にリアルに描こうと思いました。正しくなくても、野望に足掻く2人が迎えるリアルなハッピーエンド! ご期待ください。