加入から約7年半で、日向坂46からの卒業を発表した一期生の潮紗理菜。後輩で三期生の山口陽世とは、息の合った掛け合いを見せる。

潮にとって最後の参加作品となる2ndアルバム『脈打つ感情』のリード曲「君は0から1になれ」では、2人が厚く信頼を寄せる一期生でキャプテンの佐々木久美が自身初のセンターに。その背中を見守ったMV撮影で、潮と山口は何を思ったのか(インタビュー前後編の前編)。

【写真】潮紗理菜のラッキーナンバーは「8」 山口陽世と見事な「8」のポーズ

■前作「ひなたざか」から約3年ぶりのアルバムリリース

――2ndアルバムのリリース日は11月8日。日付けの「8」は、おひさま(ファンの愛称)も知る潮さんのラッキーナンバーです。

潮:スタッフさんに思わず「え、コレまさか…!?」と聞いたんですけど、「ゴメン。たまたま」と言われて…。でも、偶然だからこそご縁があったと思えたし、うれしかったです。リード曲「君は0から1になれ」のMV公開も10月8日で「うわ、8だ~!」と、私だけ盛り上がっていました(笑)。

――その「ご縁」から、潮さんと山口さんで「8」を形作る写真も撮影させていただきました(笑)。さて、本題に…。アルバムは、前作「ひなたざか」のリリース(2020年9月)から約3年ぶりです。

潮:アルバムは、私たちが積み重ねてきたものを1枚にギュッとまとめる作品で、このタイミングでのリリースには意味があると思いました。
みんなと一緒にアルバムを制作できて、うれしいです。

――最後の参加作品でもありますし。四期生の加入など、前作の当時とは環境も変わりました。

潮:収録曲のうち、一番古いシングル表題曲「君しか勝たん」のリリース当時(2021年5月)は、コロナ禍の真っただ中で、思い通りの活動ができなかったんです。アルバムから時間の流れを感じ取れるし、1曲1曲にその時々の思いが詰まっています。

――山口さんは、いかがでしょう。

山口:前作は日向坂46への加入(2020年2月)から約半年で、初参加の作品でした。当時も節目で、本作はさらに大きな節目となったので、新たに自分が踏み出すための手助けをしてもらっているような感覚です。

――前作の当時と比べて、変化した部分もあるのかなと。

山口:コロナ禍で先輩とお話しできない状態での参加だったので、関係性は変わりました。後輩の四期生も加入して、年を重ねてきたとも実感していて。あと、前作の当時はカメラを見るたびにまばたきする癖があって、スタッフさんに「まばたきしないで」と注意されていたんです(笑)。
今では癖が抜けたし、アイドルとしての自覚が芽生えたかなと思います。

■同期と後輩、それぞれが見る佐々木久美のキャプテン像

――2ndアルバムのリード曲「君は0から1になれ」では、一期生でキャプテンの佐々木久美さんが、自身初のセンターに抜てきされました。

潮:素直にうれしかったです。久美はどのポジションでもグループを引っ張ってくれていたし、一つにまとめてくれる存在なので、フォーメーション発表の時点で「絶対、いい曲になる」と思いました。

――フォーメーション発表後、センターに選ばれた久美さんが「私にできるかな」と不安を口にしていたと、潮さんはブログで明かしていました。

潮:おひさまの皆さんは久美に対して、頼もしくて、グループを引っ張ってくれているイメージを持っていると思うんです。もちろんその事実は変わらないんですけど、久美も1人の女の子だし、誰よりも繊細な一面もあって。以前2人で深夜に話していて「1つ1つの発言がグループの発言にもなってしまうから、気を付けようと心掛けている」と打ち明けてくれたこともあり、久美はきっとすべての責任やプレッシャーを背負っているんだと、そのときに感じました。

――リード曲のセンターと発表されたときもおそらく、相応の責任やプレッシャーを感じていたのかもしれませんね。

潮:視野が誰よりも広いので、いろいろな考えが瞬時によぎったんだと思います。私たちが「そんな心配は絶対にない」と言い切っても他人の意見ですし、不安は消えないだろうから、発表直後はそばにいてあげられたらと思って。でも、翌日に会ったときにはもう不安そうな久美はいなかったです。
おひさまの皆さんも斜めから見ず、純粋に受け止めてほしいと願ってます。

――山口さんは、久美さんのセンターに何を思いますか?

山口:私も純粋にうれしかったです。後輩の私たちに弱さを見せず、明るく強く引っ張ってくださっているので、その背中に必死に付いていくことしか考えていません。

――後輩から見た、久美さんのキャプテン像は?

山口:視野が広く、言葉にしなくとも悟っている印象があります。明るすぎず暗すぎず、絶妙なテンションで寄り添ってくれるので、ありがたいです。心に残る言葉をかけてくれるし、そばにいるだけでも安心感があるというか。ラジオ番組『日向坂46の「ひ」』(文化放送/毎週日曜18時30分)の初出演回や、私がレギュラーMCを務める『さくらひなたロッチの伸びしろラジオ』(NHKラジオ第1/毎週月曜20時5分)の初ゲストにも来てくださって、慣れないお仕事ではいつも久美さんがいた記憶もあり、心強かったです。

■卒業する潮に“恩師”から温かい言葉

――リード曲「君は0から1になれ」のMV撮影は暑く、雨も降っていたと山口さんがブログで明かしていました。

潮:天候に左右されました。カメラの前をメンバーが通り過ぎていくシーン(MVの3分50秒頃)でも雨が降っていたんですけど、最後、強い雨に打たれながら立つ久美の姿がカッコよくて、メンバーみんなが見惚(ほ)れていました。

山口:物語の主人公。

潮:そう、主人公みたいな。
いつもグループのことを考えて、支えてくれて、守ってくれる久美が、満を持して「みんなついてきて!」と言っているように見えて、カッコよかったです。

――山口さんは、個々の「振りもとても好き」とも述べていました。特に、どのシーンが?

山口:前半(MVの53秒頃)で、(上村)ひなのちゃんと、小坂(菜緒)さんが踊っているシーンが好きです。口を動かさずダンスだけで見せる一瞬のシーンですけど、力強さが伝わってきます。紗理菜さんの見せ場は「背伸びしながら」のシーン(MVの2分36秒頃)です。1人1人の表情に注目したカットが続く中でのワンシーンで、その流れも好きです。

潮:今言ってくれたシーンの撮影前、安藤(隼人)監督が「潮さん、ここでバッチリ残してくださいね」と声をかけてくださったんです。グループでは「期待していない自分」(けやき坂46)とか、偶然か必然か分からないんですけど、節目の曲を撮っていただいたし、ずっとお世話になっていた方から一言頂けたのは印象的でした。

――潮さんにとって、最後の参加だからこそのエピソードですね。

潮:安藤監督は多くを語らない方なんですけど、最後だから「ここはバッチリ使うから」と言ってもらえて、うれしかったです。空に虹が見えた瞬間には、(振付師の)TAKAHIRO先生が「潮、最後にいい思い出ができてよかったな!」と叫んでくださり、涙を我慢できないほどになっちゃって。安藤監督とTAKAHIRO先生の心に「私が少しでもいたんだ」と思ったら、心が救われました。


(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

 日向坂46、2ndアルバム『脈打つ感情』は11月8日発売。

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