冨樫義博による伝説的大ヒット漫画を実写化するNetflixシリーズ『幽☆遊☆白書』が、いよいよお目見え。個性豊かなキャラクター勢も人気の本作で、主人公・幽助(北村匠海)たちの前に立ちはだかる最強の敵、戸愚呂兄弟役を綾野剛滝藤賢一が演じることも大きな話題となっている。

弟の肩に乗っている兄(滝藤)、圧倒的な強さを誇る弟(綾野)というビジュアルや特性もインパクトあるキャラクターを、実力派俳優の二人が一体どのように表現したのか。綾野が「兄者を滝藤さんが演じると聞いて、すごく嬉しかったです」と話す理由とは? 一方の滝藤も「綾野さんは、とても稀有な俳優」と信頼を寄せ合う二人が、役作りや、最先端の映像技術を駆使したロサンゼルスでの撮影について語った。

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◆綾野剛、戸愚呂弟役オファーは「青天の霹靂」

――人間界、魔界、霊界という3つが交錯する壮大な世界観の中で、それぞれに強い信念をもって戦う魅力的なキャラクターたちのバトルを描く本作。戸愚呂兄弟として、オファーを受けた時の感想を教えてください。

滝藤:『幽☆遊☆白書』をもしやらせていただけるならば絶対に戸愚呂兄がいいなと。戸愚呂兄をやるために、これまでいろいろな悪役をやってきたと言っても過言ではないので、「本当ですか!? 戸愚呂兄をやらせてもらえるんですか!?」「ありがとうございます!」という感じでした(笑)。ただ身長120センチの役を演じることになりますから、どういう映像になるのかはあまり想像できませんでしたね。現場に行っていろいろと試しながら、手探りで進んで行ったように思います。

綾野:青天の霹靂でした。言葉にならなかったです。原作誕生から30年の時を経て、ようやく映像技術が『幽☆遊☆白書』の描く世界観に追いついたことにとても感慨深かったです。圧倒的な挑戦ではありましたが、僕自身作品を通して皆様の日々を少しでも彩れたらという想いと、視聴者の方々にサプライズを届けようとしているプロデューサー陣のお姿に感銘を受け、「頑張らせていただきます」とお返事しました。


――戸愚呂兄弟は、原作ファンからもとても人気の高いキャラクターです。演じる上ではどのような準備をされましたか?

滝藤:原作からヒントを漁りました。「なぜこの男は妖怪になってまで、弟と共に最強になることを目指しているんだろう」「なぜ弟の肩に乗っているんだろう」といろいろ考えました。戸愚呂兄は弟の肩に乗って登場しますからね! そこがまず大事じゃないですか。相手を威圧したいのか、異様な姿で恐怖を与えたいのか…。想像するのはとても楽しかったですね。

綾野:戸愚呂弟が妖怪として生きる決心をした理由や、なぜ彼はサングラスをしているのかということについて考えました。妖怪として生きていくことの覚悟と、一縷の揺らぎがサングラスに現れている。(役を演じるにあたって)唯一「眼だけは妖怪になれなかった」それを戸愚呂は自覚している、という解釈に辿り着きました。はじめて相手を肉眼で見た時、彼はどのような眼差しをしているのか。そしてまぶしいほどの眼差しを持った幽助と、どのように対峙するのか。役作りにおいては、そこに辿り着くために走り続けた日々でした。


◆「綾野さんの肩にくっついて…」(滝藤)「滝藤さんでなければ表現できない」(綾野)

――個性豊かなキャラクターを実写として生み出すために、数々のハリウッド映画を手掛けてきたVFXスタジオ「スキャンラインVFX」のほか、カナダ、オーストラリア、韓国など世界中の最先端CG・VFX技術を結集したグローバルチームが編成されました。兄の弟への“肩乗り”、弟の筋肉増量など、どのように表現されているのか大変気になりますが、顔の表情はお二人の芝居を取り入れ、身体はCGで作られているとのこと。最先端技術を経験した感想を教えてください。

滝藤:とにかくいろいろなオーダーがあって、それに臨機応変に対応できる柔軟さが必要だったと思います。日々どのようなオーダーが来るのかまったくわからないけれど、それが本当に面白かったですね。“肩乗り”も、実際に綾野さんの肩にくっついて、歩いていく後ろをちょこちょこちょこ!とついて行ったりして(笑)。これがどのような映像になるんだろう、こういうところから始めるんだ!と驚きがありました。

――ロサンゼルスの「スキャンラインVFX」で撮影をされたのは、お二人が日本人で初めてのことだそうです。未知の領域に足を踏み入れる上では、弟役を演じる綾野さんの存在が心強くもありましたか?

滝藤:そりゃあそうでしょう! これだけ作品や役に対して責任を持って真摯に向き合う俳優さんって、なかなかいないと思います。『幽☆遊☆白書』に参加するんだ!とどこか祭りのような気持ちがあるところ、綾野さんと一緒の現場となると、ただ楽しいだけではいられない。綾野さんがこの作品に対してとてつもない気持ちを抱いているというのは、最初から感じていました。監督と役についてずっとセッションしていたりする姿を見ていて、こちらも身が引き締まりました。
とても稀有な俳優さんだと思います。

綾野:僕は、滝藤さんが兄者を演じてくれると聞いた時にすごく嬉しくて。安心感もありますし、滝藤さんの芝居が大好きなので、ご一緒できる喜びもありました。兄者は劇場型で、それぞれの感情を言葉に変換し相手を支配しつつも、それでいてユニークさと地に足がついているという融合は、滝藤さんでなければ表現できないと思います。言葉を操りながら相手の深層心理に踏み込み、それを恐怖として刷り込んでいく。すごいです。

――たしかに、すごいことです…!

綾野:兄者は身長120センチですが、体重は未知数です。CGを使うと浮遊感を出すこともできますが、滝藤さんが演じると浮遊感や、その自重自体を操れる兄者ということに、ものすごく説得力があって。“重力のない芝居”といいますか。映像として観ても、僕の肩に乗っていることにまったく違和感がありません。

◆“俳優と最新技術の共存”への希望ーー「役者の必要性をむしろ強く体感した」

――月川翔監督のもと、海外の第一線で活躍している技術チームの皆さんと一緒に臨んだ撮影は、ご自身にとってどのようなご経験になりましたか。

綾野:『幽☆遊☆白書』という作品が共通言語となり、僕らみんなをつないでくれていたので、言葉の壁はまったく感じませんでした。
各国から集まったスタッフの方々に本当に温かく迎えていただき、こちらのつたない英語でも想いを伝えられたり、すべてヒアリングができなかったとしてもそれぞれの想いがしっかりと伝わってくる。エンタメを通すことで、言葉の壁を超えて、情感を持ち寄ることで関係性を築くことができる。ワンチームになっていく過程がとても美しかったです。改めてエンタメってすごいなと感謝し、ものづくりの楽しさや喜びを実感することができました。

滝藤:プロフェッショナルな方々が集まった、世界のトップチームとご一緒できたことはすごく刺激的で、幸せなことでした。毎日「この瞬間を楽しもう」という、最高の気分でしたね。また、働いている環境がとても良くて。この時間にちゃんとお昼ご飯を食べて、何時までは休憩で…と働く時間、休む時間、ご飯を食べる時間というメリハリがしっかりしている。そういったメリハリは、やる気につながるなと思いました。みんなでワイワイとハリウッドサインが見える屋上でご飯を食べたりしたよね。

綾野:本当に温かい現場でしたね。

――顔の表情だけでお芝居をするという新たなチャレンジも、一丸となって高みを目指していけるような現場だったのですね。


綾野:「この場面の戸愚呂はこういう表情だよね」とイメージを具現化していく作業になりましたが、誰もが「必ずたどり着く」という強い志を持ち、イメージすることを諦めなかった。そのイメージを発見できた喜びを共有できた瞬間も、最高でした。やりがいしかなかったです。撮影では(少しでもその場所から顔がずれてしまうと、うまくカメラに収めることができないため)顔を動かさずに、お芝居をすることになって。いつもとは違う筋肉の使い方をしたこともあり、初日から全身筋肉痛になり、それもまた幸せでした。

滝藤:撮影後には、顔が痙攣していましたよ!(笑) 顔の表情だけで表現するというのは、まったく新しい経験でした。顔をほとんど動かすことができませんし、コツコツと積み重ねが必要になる作業なので、粘り強さや諦めない力を持っている日本人には、向いているかもしれないなとも感じました。

――映像技術が発達していくことで、俳優として可能性を感じたことや、どのように共存していくべきなのかなど、考えたことがあれば教えてください。

綾野:本作の撮影を通して、現場でアナログな作業をしっかりと積み重ねたからこそ、CGが発揮できると確信しました。監督が演出をつけ、各部署が役割を果たし、俳優が演技をして、みんながしっかりとそこに向き合ってこそ、CGが決まる。最新技術を駆使した作品というとテクニカルな感じがしますが、「想像を具現化し可視化して届けたい」と願った人たちの情熱が、本作の証となっています。人間の想像は豊かである。
この一言に尽きますし、どれだけCGが進化しても、表情のニュアンスを描くことは難しい。表情のお芝居を求めていただけたことで、役者の必要性をむしろ強く体感しました。

滝藤:なによりもイメージすることが肝心だったなと。想像力がいかに試されるかという現場だったと思います。そうやって、みんなで「こう見えるためにはどうしたらいいか」といろいろなアイデアや知恵を絞っていました。CGだ、ハイテクだと言うけれど、距離を測ったり、遠近法を駆使したりと、現場でやっていることは本当にアナログで地道なことばかり。とても面白かったです。

――実写版の戸愚呂兄弟がどのように登場するのか、ますます楽しみになってきました。最強の敵を演じたお二人ですが、敵役や悪役を演じる醍醐味についてどのように感じていますか。

滝藤:もちろん悪役だけれど、そういった役でも僕はいつも悪役だと思って演じていません。作品の中では悪のように見えるけれど、自分の正義があって、目的を全うしようとしているだけです。戸愚呂兄弟も、そこに邁進していく上で障害物となるものと戦っているんだと感じています。

綾野:どんな役であっても、自分が一番の理解者となり、寄り添い続けたいという想いで臨んでいます。まずいただいた役をお受けする時にも、「その人のすべてを愛せるかどうか」というところが、ひとつの決め手になっています。近年、圧倒的な悪役自体、減少傾向にもありますが、もしそういった役に出会えたとしたら「その人のすべてを愛せるかどうか」という言葉を胸に抱きチャレンジしたいです。

(取材・文:成田おり枝)

 Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』は、12月14日より世界独占配信。
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