田中圭が主演を務めるドラマおっさんずラブ‐リターンズ‐』(テレビ朝日系/毎週金曜23時15分)が、1月5日よりスタートしている。2016年の単発ドラマで話題を集め、2018年の連続ドラマ放送後には“ロス”に陥る人も続出し、日本のみならず世界中で社会現象を巻き起こした大人気作だ。

そんな「おっさんずラブ」シリーズの要であり、前作ではそのシブい見た目に反して春田創一(田中)への愛を惜しげもなく叫ぶ、さながら“ヒロイン”と言っていい存在で人気を博したのが吉田鋼太郎演じる黒澤武蔵だ。前作で春田の夫の座を牧(林遣都)に譲った武蔵だが、『リターンズ』ではなんとスゴ腕の家政夫として新婚の春田&牧のもとに帰ってくる。その姿はときに“姑”のようでもあり……。今回は、よりパワーアップした武蔵を演じる吉田鋼太郎に、本作への熱い思いや、多様性への意識が高まる中で自身に起きた“変化”などを聞いた。

【写真】“家政夫”エプロン姿も激シブ! 吉田鋼太郎撮りおろしショット

■続編にやる気十分! 「おっさんずラブ」の“ありそうでないドラマ”な骨格は健在

――2018年に放送された『おっさんずラブ』天空不動産編の続編となる本作。企画を聞いた時の感想、意気込みは?

吉田:やっぱり1作目のメンバーにまた会えることが、素直にうれしいなと。また会えるんだ、また彼らと現場を共にして、一緒に芝居ができるんだ、とものすごくうれしかったです。わくわくしました。

もちろん、前作の感触みたいなものは現場初日にちゃんと慎重に思い出しつつ、つかみつつ、また新しいことに挑戦しないといけないなと。常に新しいものを生み出してきた現場であり、いつも前向きにみんながトライしていた現場。今回はさらに、もっと面白いものを作ろう、作らなければいけないという意気込みで、燃え上がっております。

――本作の武蔵から見て、春田と牧のカップルについて改めてどう思いますか?

吉田:もうね、(春田と牧は)どこにでもある家庭の様子で。
おそらくみなさんすごく共感してもらえると思うんです。うちの家庭でもね、奥さんと一緒にでき上がった作品を見ながら苦笑いしてたんですよ。

例えば、ペットボトルを最後まで飲み切らずに1口分残しておいて放置してあるとかね。それから、春田が「僕だって(家事を)手伝ってるじゃん」って言うのに対して牧が「手伝うってなんですか? 2人は対等な立場じゃないんですか?」って返す。その辺はもう、どこの家庭にも巻き起こっている課題じゃないですかね? だから2人を見て、きっと皆さん共感してくれるんじゃないかな……。そこまでは世の中のあるあるだと思うんですが、このドラマが面白いのは、それにプラスして「絶対にこんなことは起きない、起きえないだろう」ってことも起きてくる。それが僕と林遣都くんとのバトルだったり……フライパンで頭叩いたりとかね。そういうことも同時に起きてくる。実際にあることとないことが一緒になった、でも「ひょっとしたらあるのかも」という微妙なラインで紡がれていく、“ありそうでないドラマ”っていう『おっさんずラブ』の骨格みたいなものは、全然変わってないんじゃないかな。

――よりパワーアップして?

吉田:してると思いますね。

――「恋のライバル」から、春田の「母」であり牧の「姑」のような目線になった武蔵。新婚である春田と牧のラブラブな様子を見た気持ちはいかがでしたか?

吉田:すごく複雑ですよね。
父親、母親みたいな気持ちだけならば、きっともう武蔵としても満足できるんだろうけど。春田を“見守る”という立ち位置で自分が納得できるならね。でもどこかに「春田をまだ好きだ」という気持ちはどうしてもある。だから、非常にやるせない思いを抱えたまま新婚の春田と牧に関わってしまった。「関わんなきゃよかった」とさえ思うわけですよね。でももう関わっちゃったもんだから、「春田をちゃんと大事にしてくれ!」と、ベクトルが全部牧に向っちゃう。切ないですね…。

――そんな複雑な思いを抱えた今作の武蔵を演じるうえで、初挑戦になったことはありますか?

吉田:やっぱり、春田に対する思いを“直接ぶつけられない”ということですね。だからそれを自分の中でどう解釈してどう耐えていくか……でもどこかで発散させないと精神的にまいっちゃうので、人知れずどうやって出していくか考えています。前回は発散型だったんですが、今回どちらかというと内向? とはいえ、全然内向になってないんだけども(笑)。でも気持ちのベクトルとしては内向なんですよ。それが前回と全然違うところですね。


■多様性への意識「ドラマスタート当時と今の見方は180度違う」

――2016年に単発ドラマとしてスタートした「おっさんずラブ」シリーズ。当時と比べて、世の中のジェンダーや多様性に対する意識は大きく変わってきています。本作に出演していく中で、吉田さんご自身の意識に変化はありますか?

吉田:最初の単発ドラマの脚本もらったときは「斬新なドラマだな」と驚いた記憶があります。8年経った今は、世の中がとてつもなく変化をして、自分の考え方自体も180度変わったなと感じます。

――「BL(ボーイズラブ)ドラマ」というジャンルも確立した中で、パイオニア的作品である「おっさんずラブ」のメインキャストとして出演している上での意識はいかがですか?

吉田:僕らは(本作が)“ボーイズラブだ”という意識は特にないんです。それよりも、ちゃんと誰かのことを好きになって、それによって苦しんだり、幸せな気持ちになったり、切なくなったり……ということがベースとしてきっちり描かれているドラマ。必ず軸はそこで、そこを頼りにして芝居をしているので、それが男女の恋愛か男同士の恋愛かというのはあまり関係ないですね。

――前作よりも、春田と牧のカップルがより自然な存在として描かれているように感じました。

吉田:世の中で(男性カップル自体が)自然な存在になっているから、ドラマもそう感じるんじゃないですか?

■仕事への原動力は“娘” 家では「でれでれ。甘やかし放題(笑)」

――春田のために武蔵は今作も大奮闘しますが、吉田さんにとってお仕事に向かう原動力は?

吉田:やっぱり2歳半になる娘ですね。この子のために頑張んなきゃっていうことは思います。

――お家ではどんなパパですか?

吉田:でれでれもいいとこですねえ。
甘やかし放題(笑)。いっぱい遊んでます。

――では、武蔵にとってのライバル・牧のように、吉田さんが刺激を受ける存在はいらっしゃいますか?

吉田:この作品に入って改めて思うけど、田中圭はすごいですね。やっぱり春田こと田中圭あっての「おっさんずラブ」だっていう感じが改めてします。

――田中圭さんの俳優としての魅力とはどんな点でしょうか?

吉田:「春田」っていう役とよくぞ巡り合ったなと。そしてああいうキャラクターを構成、創造したなと。どうやって作ったのこの役?っていう。多分彼は、何か意識して作ったんじゃないと思うんだけど。その場その場の思い付きで……でも唯一無二。俳優にとって、「この役ならこの人」みたいなキャラクターには生涯でなかなか巡り合えない。それを見事に田中圭は作り上げている。春田は田中圭にしかできないと思いますよ。


――そんな田中圭さん演じる春田の、今作ならではの魅力はどんなところでしょうか。

吉田:やっぱり春田がどっかちょっと鈍感で。「武蔵はもう自分への気持ちは諦めて整理できていて、自分のことは好きじゃない」と信じ込んでいる春田。それがもう見てて腹が立ちますね。(武蔵の気持ちに)まったく気づいてない春田っていうのが……そしてずっと牧のことばっかり考えている春田っていうのが。「ああ、やっぱり春田ってこういう人なんだな~」って思います。

――最後に、吉田さんの2024年の抱負を伺えますか?

吉田:抱負は……もうね、年も取ってきているので、健康第一。それだけですね。

(取材・文:小島萌寧 写真:高野広美)

 金曜ナイトドラマ『おっさんずラブ‐リターンズ‐』は、テレビ朝日系にて毎週金曜23時15分放送(全9話 ※一部地域で放送時間が異なる)。

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