TOKYO MX、BS日テレ、AT-Xで放送中のテレビアニメ『声優ラジオのウラオモテ』。本作は、「第26回電撃小説大賞」で大賞を受賞、「読書メーター OF THE YEAR 2020」ライトノベル部門で第1位を獲得した二月公による小説が原作。

クラスメイトであり、ラジオのパーソナリティをともに務めるやすみと夕陽の表と裏の顔を描く物語だ。今回、本作のメインキャストである伊藤美来(歌種やすみ/佐藤由美子役)、豊田萌絵(夕暮夕陽/渡辺千佳役)、東山奈央(柚日咲めくる役)による鼎談インタビューを実施。声優として大活躍する3人が思わず共感した「業界あるある」とは?

【写真】伊藤美来、豊田萌絵、東山奈央のインタビュー撮り下ろしが満載!

■二月公が描くリアルすぎる声優業界の裏側

――声優業界を舞台にした本作ですが、初めて原作を読まれた際の印象は?

伊藤:声優をやっている私たちが読んで、「あるある」とか「新人声優がぶつかるポイントだよね」というのが本当にドンピシャで、“二月先生=女性声優説”をご本人に会うまで信じていました(笑)。そう思うほど刺さるものがありつつも、由美子と千佳の小競り合いのような読みやすくて面白いテンポ感もあり、2人が仲良くなっていく様子を微笑ましく読んでいました。

豊田:「なぜ二月先生はこんなにも裏側を知っているんだろう」と、本当に驚くほど細かい声優業界あるあるが盛り込まれているのはもちろんなのですが、10代特有の女の子の多感な時期にライバルがいたり、憧れの先輩がいたりすると、こういう感情になるよね、と思わせる感情面がとてもリアルで。とくに千佳の裏営業疑惑のエピソードを最初に読んだ時はグッときて泣いてしまったのを覚えています。


東山:私も2人と同じように二月先生が描く登場人物の心情のリアルさに驚かされる部分が多々ありつつ、それに加えてドラマチックさがすごくバランスよく組み合わされている作品だと感じました。物語の中でやすみと夕陽のウラオモテが明らかになっていく流れでは、声優という仕事の大変さに共感すると同時に、だからこそ輝いているんだなと気づかされて。日々社会の中で大変な思いをされているみなさんにも親近感を持って見ていただける作品だと思います。

――それぞれが演じるキャラクターについての紹介と、演じる際に意識されていることを教えてください。

伊藤:由美子は、やすみとしてのオモテの時はとても清楚で元気な新人女性声優で、ウラの時は生粋のギャルで人情に熱く、優しくて努力家な一面を持つ女の子です。新人として直面する仕事の壁を「これは大切なことだから」と、しっかり自分の中に落とし込んで乗り越える強さがあり、かっこいいなと思えるキャラクターです。


演じる時もそのギャルっぽさを意識していましたが、物語が進むにつれてシリアスな展開になり、作中のシーンと私自身の経験が重なる部分が出てきて。そんな時にどうしても自分の感情でお芝居をしてしまいそうになったのですが、「やすみだったらこう受け止める」「悲しんだとしてもやすみだったら立ち上がる」ということを考えながら演じています。

豊田:千佳はウラオモテが激しいキャラクターで、夕陽としてのオモテの顔ではとてもおっとりした可愛い声で、ウラでは地声の低いトーンで喋る子なので、その差をしっかりと出すように意識して演じています。

また、原作を読んでいても感じたことなのですが、大人ぶった発言をするけれど精神年齢は低く、由美子と比べても幼稚に見える部分があるので、成長が描かれる前まではとくにそのニュアンスが出せるような声のトーンを模索して演じていました。

東山:めくるは、やすみと夕陽の先輩にあたるアイドル声優で、代表作は少ないものの、トークやMCの才能を活かしたお仕事で人気を博している女の子です。彼女自身は本業であるお芝居にもっと深く根ざさなければと思っているのですが、いま目の前にあるお仕事に一生懸命に取り組んでいて、もがきながらも頑張っている子なんです。


そんな背景もあり、プロ意識からくる厳しさをやすみと夕陽にぶつけるシーンもあるのですが、私自身はめくるの意見は正論で、共感できるものだと思ったので、決して嫌な子には見せたくなくて。お芝居では「私はこう思う」という彼女の意思の部分を大切にしていたのですが、音響監督の土屋さんから「もっとグサグサやってほしい」というディレクションもあったので……ちょっと私の人のいいところが出てしまったかなあ。なんちゃって(笑)。なるべくトゲのある感じを出せるように頑張って演じました。

豊田:(東山さんの人のよさが)出ちゃいますよね~(笑)。

伊藤:めくるのトゲの部分は一部界隈の方にはご褒美かもしれませんね(笑)。


■新人の頃に苦労するリテイク地獄

――アフレコ現場での印象深いエピソードはありますか?

豊田:作中で大御所の方と一緒にアフレコをさせてもらうシーンがあるのですが、実際の私たちの現場にもその大御所を演じる大先輩がいらっしゃって。アニメの中では厳しい先輩を演じていらっしゃるのに、リアルではとても優しく「私たちの時代はこうだったんだよ」と教えてくださって、学びの多い現場でした。

――その方の登場回が楽しみですね。伊藤さんはいかがですか?

伊藤:私は毎回自分の目の前のことで精一杯で、座長なのに何もできなかったんですけど、みなさんがいい空気感を作ってくださって、和気あいあいとほんわかした現場に救われていました。

東山:私、美来ちゃんがリアルに音響監督の土屋さんにプレッシャーをかけられているのを見て笑っちゃいました。

伊藤:土屋さんは優しくプレッシャーをかけてくれるんですよ。
「次あのシーンくるから、頑張ってね」みたいな(笑)。そんな私の姿を後ろでみなさんが優しく見守ってくださって、リアル版『声優ラジオのウラオモテ』みたいな現場でした。

東山:本当に和やかな現場だったよね。私は途中参加だったんですけど、萌絵ちゃんがムードメイクをしてくれて、先輩後輩を問わずに話題を豊富に投げかけてくれたり。さっき美来ちゃんは「何もできなかった」と言ってたんですけど、私は座長のタイプは2通りあるなと思っていて、萌絵ちゃんのようにリーダーシップを発揮して場作りをしてくれる座長と、美来ちゃんのように現場で多くは語らずとも台本と向き合っていて、「この人の背中を応援しよう」と周りが支え、内側からみんなのやる気を引き出してくれる座長。この現場には、そんないい座長が2人いるなと感じました。


伊藤:先輩のありがたきお言葉……。

豊田:夕陽とやすみのように私たちも本当にタイプが真逆なので、そう言っていただけるとすごく嬉しいです。

――また、作中には新人声優あるあるが詰め込まれていますが、みなさんが新人の頃とくに苦労されたことは?

豊田:作中にも出てきますけど、リテイク地獄みたいな経験はありますよね。

東山:千本ノックみたいな。ディレクションの意味は理解できるんだけど、それをどう表現したらいいか……と明日が見えないような気持ちになって。

伊藤:正解がわからなくなるんですよね。

東山:そうそう。自分だけマイク前に立ち続けて、それで先輩を後ろで待たせてしまう申し訳なさで、結構心臓にくるというか……(笑)。でも、そこで動揺するとできるものもできなくなってしまうから、神経のコードを1本引っこ抜いて乗り越えて。

伊藤:「スン!」って(笑)。

豊田:本当にそうなんですよね。

東山:とくに新人の頃は気持ちを強く持てるようになるまでに時間がかかってしまうんだけどね。

豊田:「なんでこんなにできないんだろう……」って落ち込むところも、作中ですごくリアルに描かれていて共感したシーンでした。

■ラジオパーソナリティとしてのこだわり

――みなさんラジオ経験がある中で、パーソナリティとして自分なりのこだわりはありますか?

豊田:美来と一緒にラジオをやっていた時は「台本通りにやりたくない」というこだわりがありました。作品紹介とかはしっかりとやるんですけど、2人で何をやってもいいという場合は、型にはめてやるよりも、思いついた話を広げるようにして。

――たしかに、昨年まで配信されていた『Pyxisの夜空の下 de Meeting』は台本から逸脱するパターンが多かったですよね(笑)。

豊田:そうですね(笑)。それでオープニングトークが長くなってコーナーがカットされても、その場の生感を伝えたほうが面白いんじゃないかと思ってやっていました。あと、ラジオはファンのみなさんと一番近い距離感で会話ができる場所だと思っているので、リスナーさんのメールの内容を覚えておいて、また送ってきてくださった時にその内容を広げるというのもこだわってやっていますね。

――伊藤さんはいかがですか?

伊藤:私は聴き取りやすい声で、少しでもリスナーさんの癒しになったらいいなと思いながらやっています。あとは、知らないことを知らないと言うことですかね。わからないトピックを事前に調べてしまうと、準備した言葉でさらっと流れてしまって、逆に会話が盛り上がらないことがあるので、その時の自分のありのままを出したほうが面白さにつながるんだなとラジオの中で学びました。

――東山さんは『東山奈央のラジオ@リビング』を2017年から続けられていますね。

東山:『@リビング』は長く続けさせていただいている番組ですが、その回から聴き始めた方にも平等に楽しんでいただけるよう、身内ネタで固めず、入り口を広く持っておくということをずっと大事にしています。私のおばあちゃんも番組を聴いてくれているんですけど、おばあちゃんにも伝わるような内容なら、いろんな方に楽しんでもらえるラジオになるんじゃないかと思っていて、「みんな知ってるよね」という前提で話すのではなく、「こういうものが流行っているらしいよ」という前置きを挟むことで、老若男女に伝わる番組になればいいなと思いながらやっています。

――長寿番組だからこそ、一見さんにも伝わるように敷居を低くしておくというか。また、アニラジのような相方がいるパターンではいかがですか?

東山:相方がいる場合は、先ほど美来ちゃんも言っていたように、勉強しすぎないことが大切かなと思います。知らないことが話題にあがったとき、新鮮に驚いて楽しんでいくことで、みんなが同じトピックで盛り上がれるのかなと。

あと、「面白い」とひと口に言っても、2人の掛け合いの中で生まれる「ワハハ!」と笑えるような面白さと、作品の裏話を聴いて「ほほう、なるほど」と興味深くなるような面白さ、アニラジはその両方を乗せるバランスが大事なのかなと思います。

――最後に、ご自身のキャラクターのこれから注目してほしいポイントも含め、視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。

伊藤:歌種やすみ/佐藤由美子は、さまざまな困難にぶつかりながらも自分の夢に向かって突き進んでいくので、これからの展開がどうなるか、最終話まで見届けていただけたら嬉しいです。また、声優という職業のキラキラとした表側だけではなく、彼女の成長と努力を通じて、その裏側にある魅力もみなさんに知っていただけたらと思いますので、そんな面にも注目しながらぜひ最後までお楽しみください!

豊田:夕暮夕陽/渡辺千佳は、声優としてのプロ意識もちゃんとあるうえで、アイドル声優という立場にどう向き合っていいのか悩んでいる状態ですが、今後の物語の中で彼女の考え方にどのような変化が生まれていくのか、ぜひ注目していただけたらと思います。最初の印象はちょっと悪かったと思うんですけど(笑)、私にとって本当に愛しくてしょうがないキャラクターですので、長い目で成長を見守っていただけたら嬉しいです。

東山:柚日咲めくるは、これからさらに面白くなるキャラクターです。いろいろな波乱がすでに巻き起こっていますが、今後ますます“嵐を呼ぶ女”として物語に関わっていくことになるので、ぜひ最後までご覧いただきたいなと思います。また、私がパーソナリティを務める『声優ラジオのウラカブリ』という番組もスタートしますので、こちらも合わせてお楽しみください!

(取材・文・撮影:吉野庫之介)

 テレビアニメ『声優ラジオのウラオモテ』は、TOKYO MXにて毎週水曜22時、BS日テレにて毎週土曜23時、AT‐Xにて毎週水曜21時放送。