巨匠リドリー・スコットのクライム・アクション映画『ブラック・レイン』デジタル・リマスター版が、日本での上映権が切れることを受け、1月24日より全国4館・1週間限定で上映される。マイケル・ダグラスやアンディ・ガルシア、高倉健、松田優作ら日米の豪華キャスト出演で知られる同作だが、日本人俳優のハリウッド進出の歴史は古く、1910年代から活躍した早川雪洲や、黒澤明監督作品で世界的に知られる三船敏郎に、その先駆けを見ることができる。

先人たちの活躍を経て、近年では若い世代の俳優たちの世界進出も著しい。折しもハリウッドはアワードシーズンの真っ最中。『ブラック・レイン』国内最後の上映を記念して、ハリウッドに認められた日本人俳優たちを紹介する。

【写真】『ブラック・レイン』で輝いた高倉健、松田優作ら ハリウッドに認められた日本人俳優たち

■日本を代表する“本物の男” 高倉健

 『燃える戦場』(1970)でハリウッドに進出し、『ザ・ヤクザ』(1974)や『ミスター・ベースボール』(1992)などに出演した高倉健。『ブラック・レイン』(1989)のリドリー・スコット監督はじめ多くの映画人を魅了した。没後に公開されたドキュメンタリー『健さん』(2016)には、マイケル・ダグラスやマーティン・スコセッシ、ポール・シュレイダー、ヤン・デ・ボン、ジョン・ウーらが顔をそろえ、スコセッシは「本物のアーティスト、本物の男だった」と語り、『沈黙 -サイレンス-』(2016)出演をオファーしていたことを告白している。ウーもまた高倉の演技を「しなやかで優雅、自信に満ちている」と評し、演技指導に活かしていると語っている。ハリウッドでも一目置かれ、名実ともに大スターの座を築いた。

■『ブラック・レイン』鬼気迫る名演に絶賛 松田優作

 本作がハリウッドデビュー作にして、劇場公開作品としては遺作となった松田優作。撮影当時、膀胱がんを告げられていた松田が演じたヤクザ・佐藤の演技は鬼気迫るものがあり、米ニューヨーク・タイムズ紙は「この映画で最も素晴らしい演技を見せている」と評した。リドリー・スコット監督も再タッグを望み、公開後は次回作のオファーが相次いだとも伝えられる。また、アンディ・ガルシアは追悼ドキュメンタリー『SOUL RED 松田優作』で「天賦の才能の持ち主」と称賛している。
本作公開直後、40歳でこの世を去った松田優作の演技は映画人の心に深く刻まれ、今なお影響を与え続けている。

■タランティーノ&キアヌ・リーヴスが心酔 千葉真一

 アメリカで公開された日本映画『激突! 殺人拳』(1974)でアクションファンの心を掴み、その後ハリウッドに進出。海外ではサニー千葉の愛称で親しまれた。キアヌ・リーヴスは同作から「アクションと芝居というものを学んだ」と語っており、『ジョン・ウィック』(2014)で来日時にテレビ番組で対面した際は「ハジメマシテ、マエストロ!」と大喜びであいさつする姿が話題になった。クエンティン・タランティーノも心酔しており、脚本を手掛けた『トゥルー・ロマンス』(1993)では、『激突! 殺人拳』を鑑賞するシーンがあるほか、主人公の部屋には千葉の映画のポスターも。監督作『キル・ビル』(2003、2004)では千葉が伝説の刀匠を演じ、武術指導も担当した。また、ジャパンアクションクラブ(JAC)を設立し、真田広之ら国際派俳優を輩出した功績も忘れてはならない。

■製作者としても地位を確立 真田広之

 千葉の影響で早くから世界を見据え、英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー公演に参加するなど活躍。『ラスト サムライ』(2003)を機にハリウッドに拠点を移し、『ウルヴァリン: SAMURAI』(2013)や『モータルコンバット』(2021)、『ブレット・トレイン』(2022)、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023)に出演した。2024年、主演&製作総指揮を務めたドラマ『SHOGUN 将軍』で、エミー賞とゴールデン・グローブ賞において日本人初の主演男優賞を受賞したほか、主要な賞を軒並み獲得。また作品としてもエミー賞史上最多18部門を獲得するなど、製作者としての地位も確立した。この後も『SHOGUN 将軍』のシーズン2や『モータルコンバット』の続編が控える。


■ザ・ビートルズの伝記映画でオノ・ヨーコに! アンナ・サワイ

 『SHOGUN 将軍』のヒロイン・鞠子役でブレイクし、エミー賞やゴールデン・グローブ賞を総なめにしたほか、TIME誌による「次世代の100人」「今年の女性」にも選ばれたアンナ・サワイ。幼少期を海外で過ごした経験を持ち、日本で芸能活動を行った後、俳優業の夢を追って拠点を海外に移した。映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』やドラマ『Giri /Haji』、『パチンコ - Pachinko』、『モナーク: レガシー・オブ・モンスターズ』に出演するほか、この後はサム・メンデス監督によるザ・ビートルズの伝記映画でオノ・ヨーコを演じる予定だ。

■GG賞のスピーチに全米がほっこり 浅野忠信

 『マイティ・ソー』(2011)でハリウッドに進出した浅野忠信。『バトルシップ』(2012)や『47 RONIN』(2013)、『沈黙 ‐サイレンス‐』(2016)、『ミッドウェイ』(2019)などに出演し、『SHOGUN 将軍』の柏木藪茂役でゴールデン・グローブ賞を獲得。受賞スピーチではシンプルな英語で「おそらく皆さん私をご存じないと思いますが、日本の俳優・浅野忠信です」と自己紹介し、「サンキューソーマッチ、サンキューソーマッチ!」と喜びを爆発させたことが話題になった。今年は真田と再共演する『モータルコンバットⅡ』の公開が控える。

■巨匠たちから厚い信頼 渡辺謙

 ハリウッドデビュー作『ラスト サムライ』でいきなりアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、クリストファー・ノーランやクリント・イーストウッドら巨匠の信頼を得て、『バットマン ビギンズ』(2005)や『硫黄島からの手紙』(2006)など超大作に出演してきた渡辺謙。2015年には『王様と私』でブロードウェイに進出し、日本人初のトニー賞主演男優賞候補となるなど、幅広く評価されている。最近は出演作『国宝』が注目を集めており、本年度アカデミー賞に向け、『ラスト サムライ』で共演したトム・クルーズの協力を得て上映イベントを主催してもらったことも話題となった。

■英国アカデミー賞&エミー賞ノミネート 平岳大

 BBCとNetflix共同制作ドラマ『Giri/Haji』(2019)で英国アカデミー賞ドラマ部門の主演男優賞候補、『SHOGUN 将軍』でエミー賞助演男優賞候補になった平岳大。ほかに、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(2025)や『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021)などに出演し、この後もブレンダン・フレイザー主演の『レンタル・ファミリー』が控えるほか、『SHOGUN 将軍』シーズン2にも参加。
今最も勢いのある日本人俳優の1人として注目を集める。

■デップーとの掛け合いでファンをノックアウト 忽那汐里

 オーストラリア生まれのバイリンガルで、日本で10代から俳優として活動し、現在は海外を拠点にする忽那汐里。Netflix映画『アウトサイダー』(2018)でハリウッドデビューし、『マーダー・ミステリー』(2019)やドラマ『インベージョン』(2021)などに出演。ユキオを演じた『デッドプール2』(2018) と『デッドプール&ウルヴァリン』(2024)では、ライアン・レイノルズとの「ハイ、ウェイド!」「ハイ、ユキオ!」という掛け合いがファンの間でアイコニックとなった。この後も、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の最新作『Her Private Hell(原題)』出演が決まっている。

■デル・トロから「天才!」のお言葉 芦田愛菜

 8歳にして巨匠ギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』(2013)に出演し、堂々ハリウッドデビュー。デル・トロから来日記者会見で、「天才です」「本当は50歳くらいじゃないかと思うほど賢い」と絶賛された。

■オスカー候補俳優 菊地凛子

 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作『バベル』(2006)でアカデミー賞助演女優賞をはじめ数々の賞にノミネートされ、新人賞も多数受賞。2013年には『パシフィック・リム』に出演し、『47 RONIN』や巨匠マイケル・マン製作総指揮ドラマ『TOKYO VICE』(2022~24)、『ウエストワールド』シーズン2(2018)、『インベージョン』(2021)などにも出演している。

■ほかにも続々

 『TOKYO VICE』で『ブラック・レイン』の松田優作と同じ役名・ヤクザの佐藤を演じ注目を集めた笠松将は、ジェイコブ・エロルディ主演ドラマ『奥のほそ道 ‐ある日本軍捕虜の記憶‐』や、韓国作品にも進出。『ドライブ・マイ・カー』で世界的知名度を得た西島秀俊や、千葉の息子である新田真剣佑、山下智久らも世界をフィールドに活動している。『SHOGUN 将軍』シーズン2には新たに目黒蓮の出演が決まっており、海外からの視線を集めることは必至。
日本人俳優の海外での活躍にますます期待がかかる。

(文:寺井多恵)

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