2022年7月8日に本公演が開幕して以来、公演回数は1400回、総観客数140万人を突破している舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。第30回読売演劇大賞の選考委員特別賞、第48回菊田一夫演劇大賞を受賞するなど高い評価を獲得し、惜しまれながらも12月27日に千穐楽を迎えることが発表されている。
【写真】メガネ姿がかわいすぎる! 小野賢章、撮りおろしショット
◆「舞台版をやることはないんだろうな」 年齢を重ねラストイヤーに奇跡の邂逅
――ハリー・ポッター役でのご出演が決まったときの心境を教えてください。
小野:開幕1年目に劇場で拝見しましたが、「僕が舞台版をやることはないんだろうな」というのが正直な感想でした。映画から19年後の世界が舞台で、ハリーたちも立派な大人になっているので、自分が演じるビジョンがまったく浮かばなかったんです。当時は、僕自身が31、32歳だったので、年齢的にも追いついていないということもあり、現実味はありませんでした。ただ、今回ラストイヤーというタイミングでお話をいただき、僕自身も少し年を重ねたということもあって、とても良いタイミングで出演させていただけて、ありがたい気持ちです。
――ぴったりのタイミングだったんですね。
小野:そうですね。ラストイヤーであるということも大きかったですが、もし今、僕が30歳だったら演じるのは難しかったかもしれないと思います。奇跡的に、僕のメンタルや年齢、そしてお話をいただいたタイミングが自分の中で重なって、出演させていただくこととなりました。
――舞台をご覧になって、舞台版の魅力をどのように感じていますか?
小野:映画とはフォーカスしているところが違うなと思います。舞台を拝見したときは、やはり魔法のすごさや演出のすごさに心を奪われました。どうやって人が消えているのだろうとか、ディメンターがめちゃくちゃ怖いとか(笑)。素直に、そうした魔法の世界を楽しませていただきました。そのときはまだ自分が出演するとは思ってもいなかったので、アルバスやスコーピウスが物語の主軸となって動いているという印象もありました。今、実際にハリーの目線で台本を読んでいますが、父親の苦悩や、親としての思いにもすごくフォーカスされていると感じています。
――ハリーの子ども時代を描いた映画から本作までの間、ハリーたちには19年間の空白の期間がありますが、その19年間についてどんな想像をしていますか?
小野:実は、最初の本読み稽古のときに同じ質問をされたんですよ。「ハリーは何をしていたと思いますか?」って。まったく考えていなかったので、答えが出なくて…(笑)。でも今は、その台本には書かれていない空白の期間についても、丁寧に埋めていく作業をしています。なので、こうだろうなというものはあるのですが、今どう考えているのかを言ってしまうのはちょっと…(笑)。それは自分の中に秘めておきたいと思います。
――ハリーというキャラクター性や印象が映画で描かれた子どもの頃と比べて変わったところはありますか?
小野:印象が変わっている部分はあります。映画シリーズでは、ハリーは勇敢に立ち向かっていく正義の塊のようなイメージがありましたが、舞台ではそうしたところもありつつ、悩んでいる姿も多く描かれています。自分の子どもとのコミュニケーションがうまくいかないフラストレーションなど、映画とはまた違う側面も感じています。
◆「三児の父に見えるか」大人になったハリー・ポッター役は未知なことばかり
――声だけで演じることと、全身を使って演じることの違いについてはいかがですか?
小野:本当に違いますね。そもそも吹替をしたのが一回り以上前のことなので、今回その感覚を思い出して演じようとはまったく考えていません。例えば呪文や「ドラゴン」「ハーマイオニー」の呼び方といった、固有名詞やキャラクターの名前の言い方は、映画をトレースできる部分はありますが、それ以外はハリーが生きている環境も違いますし、年齢も違うので、昔を追うのではなく、今の自分が演じられるハリーを立ち上げていきたいと思っています。
――『黒子のバスケ』の黒子テツヤ役も、アニメの吹替と舞台の両方に出演されていましたよね。そのときは、どのように考えて演じていたのですか?
小野:最初は違和感しかなかったです。やっぱりほかのキャラクターを演じる人が違うので、「アニメはこうだったけど…」と感じてしまうことがどうしてもあって。初演のときは、アニメ版と舞台版のギャップに悩むことがありました。
――そうすると、今回は19年後を描いているからこそ、改めてハリーを作り上げることができるということなのでしょうか。
小野:そうですね。「映画とちょっと違うな」ということはまったく考えていないです。『黒子のバスケ』はタイムリーに演じていたこともありますし、(黒子テツヤよりも)年齢が僕の方が上だったので表現として実現できる部分が多かったのもあると思います。
――キャラクターを深く理解できているからこそ、すんなりと入っていけるのではないかと思うのですが。
小野:僕は役を演じる上で、初めて対面したときのビジュアルから「こういう声が出るのかな」と感じたことを大事にしているんですよ。なので、舞台で演じるときも、第一印象の通りにそのキャラクターとしていられるかどうかを考えます。舞台は稽古期間もたくさんあるので、役へのアプローチや理解はその中で深めていけばいいと思っていて、理解できているかどうかについては、これまであまり心配したことはありません。
ただ、今回のハリー・ポッターは自分の中では未知なことばかりです。父親になったこともないですし、自分の実年齢よりも(役の年齢の方が)上です。だからまず、自分が三児の父に見えるのかという点が引っかかるポイントでした(笑)。観劇したときに、自分が演じることはないと思ったのも、まさにそうした理由で、自分では若過ぎると感じていたんです。
とはいえ、先ほども話しましたが、やっぱり僕の中では、ラストイヤーということが大きくて。これを逃してしまうと、舞台版のハリーを演じる機会は、もしかしたら一生ないかもしれないと思ったんです。まだ不安はありますが、しっかりと向き合っていきたいと思います。
◆「ハリー・ポッターは親戚のような存在 僕の中ではずっと在り続ける作品」
――ハリーを演じるにあたって、どんなところを軸にしたいと考えていますか?
小野:疲れていたりイライラしているシーンが続くので、フラストレーションが軸になるのかなと感じています。その姿をしっかり印象づけた方が、アルバスと対峙したときに怒りを乗せやすかったり、大人になりきれていない部分を見せられるのではないかと思います。実際に立ち稽古が始まったらまた変わると思いますが、今は「ハリーは、ずっとイライラしている」という印象が強いので、それをベースとして持ちながら演じたいと思っています。
――ご自分が吹替をされた映画を見直したりもしましたか?
小野:いえ、今のところはしていないです。そこまでやる余裕がないというのが正直なところですね。今(取材当時)、本読みの段階ですが、台本の情報量が多すぎて。頭でっかちになりそうだという危機感を覚えながらやっているので、これ以上、余計な情報を入れたくないんです。
――では、小野さんにとって、ハリー・ポッターはどんな存在ですか?
小野:親戚のような存在です。10代のほとんどの時期に「ハリー・ポッター」があったので、「夏休みになったら遊びに行く親戚」のようなポジションだったのかなと思います。映画シリーズが終わった後も、スタジオツアーがあったり、USJがあったり、周年イベントがあったり、いろいろなタイミングで、いまだにハリー・ポッター関連のお仕事をさせていただいています。僕の中では、ずっと在り続ける作品なんだろうと感じています。
――ところで、2025年はご自身のYouTubeチャンネルを開設されましたね。
小野:まったく動いていないですが(笑)。
――とはいえ、新たな挑戦だったのかなと思います。2026年は、どんな挑戦をしたいですか?
小野:今年一番の挑戦は、間違いなくこの舞台です。最近、声のお仕事でも役の幅が変わってきたと思うことが多くて。これまでは主人公やその親友など、作品の中で成長していくポジションの役を演じさせていただくことが多かったのですが、今は、そうした主人公たちよりも、先輩や主人公のライバル、圧倒的な敵キャラをいただくことも増えてきました。その中で、このハリー・ポッターのように自分の実年齢よりも上の役を演じる機会はなかなかないので、それは僕にとって大きな挑戦ですし、今後の貴重な糧になっていくのではないかと思っています。
(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、TBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中。

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