ジョージ・R・R・マーティンの長編小説「氷と炎の歌」の第1部「七王国の玉座」を映像化した壮大なダーク・ファンタジードラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」。覇権をめぐる確執や陰謀といった人間ドラマや、壮絶なアクションシーンなどが重厚な映像で綴られる本作で、七王家中、最も裕福で美形が多いラニスター家に生まれ、現在は王妃となったサーセイの弟ながら、身体的な特徴からインプ(小鬼)と呼ばれるティリオン・ラニスターの声をあてる森川智之に独占インタビューした。


<フォトギャラリー>「ゲーム・オブ・スローンズ」のオファーを受けた際の感想なども語ってくれた、声優・森川智之

 「西洋の時代モノのような世界観はもともと好きなんです。戦闘シーンが出てきたりね。だからオファーが来たときはとても嬉しかったです。自分でトレーラーなどを調べて観て、これがテレビシリーズなのか!? と、クオリティの高さや物語の壮大さに驚きました」と振り返る。

 だが、オファーには別の驚きも。「僕がやるならこの役かなぁとか、色々と予想してたんです。
ラニスター家のジェイミーとかね。ほかにもカッコいい役柄がたくさん出てくるので、どれをやっても楽しみだなぁと思っていました」。実際にオファーされたのは、通称“インプ”のティリオン。「いや、ビックリしましたね。予想には全く入っていなかったので(笑)。そう来たか!って。
でも同時に、声優の世界に入って、海外ドラマの吹き替えも多くやらせてもらって、もう26年ほどになりますが、『あ、これはもしかしたら、僕の代表作になるかもしれない』と思ったんです。それだけのやりがいのある役だし、新しい面を出す必要がありますから」。

 ティリオンを演じたピーター・ディンクレイジは、本作でエミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演男優賞を獲得。彼自身の演技の素晴らしさはもちろん、キャラクター自体がとても魅力的なのだ。「貴族の中でも裕福な家で生まれて、でも家族とは距離がある人物。いわゆる戦国の時代の中で、彼は自分の身を守るにはどうすればいいのかを、一番考えている。
セリフにもありますが、“知識や知恵、知性を鎧に”する。騎士として剣を振るう強さは彼にはありませんが、頭の良さはキャラクターの中で随一なんです」。 そしてさらに続けた。「ティリオンにはプライドや尊厳がある。娼婦を抱いたり、時に下品な言葉を吐いたりもしますが、精神的な面において、実は登場人物中、一番品がある人だと思っています」。最初は念頭になかったというティリオン役。
だが、いまやすっかりハマっているようだ。

 日本語に“吹き替える”ことの意義については「それなりの日本人の感覚を入れないとと思っています。そうでなければ、ただ情報を日本語として乗っけるだけになってしまう。ピーターの細かい演技のニュアンスやセリフの構築を、きちんと理解してなぞる部分と、日本人的な感覚を吹き込むことの両方を大切にしています」と明かしてくれた。

 またティリオン以外で気になるキャラクターを尋ねるとこんな答えが。「ターガリエン家の王女デナーリスですね。
彼女は最初、とても可哀そうなキャラクターとして登場する。でもどんどん変わっていきそうな感じが垣間見られるんですよ。一族全体を変える力を秘めているんじゃないかと思えるくらい。あとはティリオン目線としては、スターク家のエダードの落とし子ジョン・スノウかな。彼も自分の出生に抱えているものがあるので」。

 1問1問、とても熱心に語る森川。
「僕自身、先が気になっちゃって仕方ないんですよ。これからどうなっちゃうんだろうって(笑)。完全に『ゲーム~』のファンになってます」と告白。実は台本は一気に渡されるのではなく、収録ごとに手元に来るのだとか。

 実力派で人気者の森川は、これまでにもさまざまなキャラクターに息吹を与えてきた。現在公開中の映画「ホビット 思いがけない冒険」でも主人公のビルボ・バギンズ役を担当している。そんな彼が常に心に置いていることがある。「もっとうまくなりたいという気持ちです。プロの世界は時間だったり、全てが限られている中で合格レベルを提供しなければならない。それは当然のこと。ただ、その最低限をクリアして満足するのではなく、今日よりも明日、紙1枚分でもいいから上手になりたいという気持ちを変わらずに持ち続けています。『ゲーム~』では僕も一緒になって盛り上がりたいですね。より多くの方に楽しんでもらいたいと考えていますので、反響も楽しみに待っています」。(取材・文・写真:望月ふみ)

 「ゲーム・オブ・スローンズ」は、スター・チャンネル(BS10ch)にて<二か国語版>毎週(日)22時~/<字幕版>毎週(月)21時~日本初独占放送放中。