NHK BSプレミアムドラマ『ある日、アヒルバス』で、40歳の新人バスガイド・藤原紀香を指導するスパルタ上司役が好評のトリンドル玲奈。映画『リアル鬼ごっこ』では、大怪我を負いながらも気合いで爆走女子高生を演じ切り、メガホンを取った園子温監督に「もう1度組みたい女優」と言わしめた(『中居正広のミになる図書館』より)。
もはやモデル業の傍らではない、本気モードの “女優・トリンドル玲奈” にスポットを当てる。

【関連】トリンドル玲奈<フォトギャラリー>

 オーストリア人の父と日本人の母を持つ1992年生まれの23歳。高校生の時から雑誌「JJ」「ViVi」の専属モデルとして活動し、同時にハーフタレントとしてバラエティ番組にも進出。この頃は、毒舌キャラで人気を博したが、ドラマに出演し始めた2012年辺りから、徐々にお笑いの世界から姿を消し、モデル・女優業に専念するようになる。

 そして、トリンドルが女優として本格的に動き始めたのが、ドラマ『ロストデイズ』『ごめんね!青春』、映画『呪怨 -終わりの始まり-』と話題作への出演が相次いだ2014年だ。『呪怨 -終わりの始まり-』でインタビューをする機会を得たが、その頃は「今後は女優として、さらに活動の場を広げていきたい」と決意表明しながらも、まだまだ未知数の自分自身と、見えないプレッシャーとの間で必死に戦っていたようにも見えた。 ところが明けて2015年、トリンドルは女優として急成長を遂げた。とりわけ、黒髪ロングで挑んだ『ある日、アヒルバス』の繊細な演技は、これまでの彼女のイメージを大きく変えた。トリンドル演じる澤田希子は、会社が倒産し40歳でバスガイドの門を叩いた主人公・浅倉葉月(藤原)ら新人を指導する先輩バスガイド。人づきあいがほとんどない希子は壁を作り、仲間も拒絶するが、世話焼きの葉月は、おかまいなくどんどん入り込んでくる。その押し問答が毎回面白く、素直で裏のない葉月に、屈折した希子は少しずつ感化されていくのだ。

 トリンドルは、心の壁を崩されていく微妙な心の変化を実にうまく表現している。
とりわけ、父親と再会する第4話では、恋人を事故で亡くし、父の身勝手さから家を出た過去が明かされるが、怒りをあらわにしながらも、人間としての弱さ、娘としての切なさをただ前面に出すのではなく、自然に湧き出る感情に委ねているようにも見える。番組サイトの掲示板やSNSでも、「希子さんとお父さん仲直りおめでとう!」「一皮剥けたらどんなバスガイドになるのか楽しみ」など、希子に対する応援が多いのは、トリンドルがしっかりドラマの世界に入り込んでいる証しなのだ。

 ここ1年でトリンドルに、いったい何が起きたのか。『リアル鬼ごっこ』では、森林を疾走するシーンの撮影で跡が残ってもおかしくない傷を負いながらも役に食らい付き、「死ぬ以外は何でもやる」と、園監督に直訴したというトリンドル。覚悟を決めた彼女から目が離せない。(文:坂田正樹)
編集部おすすめ