バットマンスーパーマン、フラッシュ、アローといったDCコミックスのスーパーヒーローと対峙する悪役たちがチームを組んで危険なミッションに挑む、アクション超大作『スーサイド・スクワッド』が9月10日から公開となった。これまで、作品の一部として悪役が注目されることはあったが、ここまで悪役がフィーチャーされた作品はなかっただろう。
しかも、この“悪役フィーチャー”の流れは、映画以外にも及んでいる。なぜ今、悪役に注目が集まっているのだろうか。

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 「ヴィラン(悪役)がいなければ、ヒーローも輝けない」と、映画関係者は話す。「ヒーローをより魅力的に描くために、ヴィランはさらに魅力的になっていき、DCコミックスだけでも人気ヴィランが数多く輩出されてきています」。

 確かに、海外ドラマ『THE FLASH/フラッシュ』シリーズに悪役として登場したキャプテン・コールドとヒート・ウェーブは、海外ドラマ『レジェンド・オブ・トゥモロー』にヒーローチームの一員として参戦し、メンバーから一目置かれる存在に描かれている。また、バットマンの宿敵ジョーカーがパッケージの表紙を飾るアニメーションDVD『バットマン:キリングジョーク』(発売中)では、バットマンがいてこそのジョーカー、ジョーカーがいてこそのバットマンと、ジョーカーの存在が深く掘り下げられている。


 「ヒーローだからといって完全無欠なわけではなく、ダークサイドを持っていたり、間違った判断をすることもある。ヴィランも同様で、血も涙もない極悪人ばかりではなく、情を見せる場面もある。特にDCのヴィランは、悪人となった背景に悲しい物語を有しているなど、肩入れしたくなるキャラクターが多い」(前述映画関係者)。 また、別の業界関係者は、こう話す。「人々の役に立つことをし、失敗してもくじけず、どこまでも正義を貫くなど、そんなヒーローに共感する点は多いでしょう。ただ、誰もがダークやグレーな部分を持っており、だからこそ、悪役に惹かれる部分はあると思います。
それに、演じる側にしてみても、ふり幅が大きく、無茶ができる悪役は楽しいのではないでしょうか。『クリーピー 偽りの隣人』の香川照之しかり、『ミザリー』のキャシー・ベイツしかり、『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスしかり、悪役に芸達者な俳優が配されているため、強烈な印象を残すのはもちろんですが、演じることの面白さが伝わってきます」

 インパクト、演技力、キャラ設定の三拍子が揃って、悪役はより魅力的に。ゆえに、作品内で輝きを放ち、単なる悪役では終わらない印象を残す。考えてみれば、『ダークナイト』でオスカーを受賞したのは、クリスチャン・ベール演じるバットマンではなく、ヒース・レジャーふんするジョーカーであり、前述のアンソニー・ホプキンスもそうだ。

 一方、テレビシリーズにおいては、「様々なヴィランとの対決が魅力であり、シリーズが長続きする理由でもあるので、ヴィランに話題を呼ぶキャスティングをする傾向は続くと思われます」と、映画関係者は口にする。「いま、『ARROW/アロー フィフス・シーズン』にドルフ・ラングレンがヴィランとして登場し、『GOTHAM/ゴッサム』ではペンギンの父親役に、映画『バットマン・リターンズ』で同じ役を演じたポール・ルーベンスがキャスティングされています」。


 どのような物語にも悪役は欠かせず、ヒーローより複雑な何かを抱えた悪役を愛する人も多い。となると、需要と供給のバランスから、悪役フィーチャーの流れはしばらく続くと言えるだろう。とはいえ、この流れを確固たるものにするには『スーサイド・スクワッド』の大ヒットは欠かせない。今後を占う意味でも、『スーサイド・スクワッド』は要チェックだ。