【写真】『おっさんずラブ』第6話場面写真<フォトギャラリー>
もともと2016年末に1時間の単発ドラマとして放送されて話題となった本作。その脚本を手がけたのも徳尾だった。
「若手プロデューサーによる単発ドラマを3夜連続で放送する企画で、貴島彩理プロデューサーから『徳尾さんだったらどれやります?』と聞かれていくつかの候補から選んだのがこの作品。挑戦しがいのあるものをやりたかったので」。
実際、放送後にはソフト化の希望や感想メールなど、単発ドラマとしては異例の反響があった。そして満を持して連続ドラマ化。だが単発ドラマのときとは違い、全7話の連続したストーリーを構築していく作業は一筋縄ではいかなかった。まず取り掛かったのは「新たな登場人物を作り上げること」。準備を始めたのは昨年9月、これは翌年4月クールのドラマとしては早い方だという。
「オリジナル作品だから、自分たちでキャラクターを作っていけるのが醍醐味。武川さん(眞島秀和)や麻呂(金子大地)など、今回増えた登場人物は何度も作り直しました。
練り上げた脚本の魅力を増幅させるのは、俳優陣たちの演技。徳尾自身「俳優さんたちの真摯な演技に助けられている部分はたくさんあります」と太鼓判を押す。
「メイン3人のバランスもいいんですよね。かわいくて面白い(吉田)鋼太郎さんと、真面目で繊細な林遣都さん。田中圭さんは本当にリアクションがうまく、このドラマの主役として完璧なんですよ。『何でも来い』という感じで全部返してくれて」。
上司と後輩、いきなり2人の男性からモテモテになってしまう主人公・春田は特に、田中の演技で完成した部分が大きいとか。 「たとえば『人に好かれる』と設定するのは簡単だけど、それを具現化して説得力を持たせるのは大変。だから春田は台本より愛され度が増していると思います。
NHKの『女子的生活』や『弟の夫』、フジテレビ系の『隣の家族は青く見える』など、今年はさまざまな性的志向を描いた作品が多い。しかし本作は他の作品と違い「おっさんがおっさんに恋をする」という事態を登場人物たちが比較的すんなり受け止めていく。そうした意図は?
「僕らが描きたいのはあくまで恋愛コメディー。LGBT問題は避けては通れないけれど、世界全体をもう一つ上の段階に設定して、『人は純粋に目の前の人に恋し、愛せるか』という話にしようと思いました。LGBTの悩みや葛藤にコメディーが入り込むと、意図せず見ている方を傷つけてしまう可能性もあります。そこを笑いものには絶対にしたくない。その気持ちは視聴者の方にもきちんと伝わったのかな…と、思っています」。
いわゆる“BL(ボーイズラブ)”作品的な萌え要素もたくさん見受けられる今作だが、意外にも徳尾自身は全くBL文化に明るくないとのこと。
「プロデューサー陣は女性なんですけど、監督陣や僕は男性という座組。どちらも“BL的な萌え”には詳しくないんです。ちゃんと恋愛を描きたいと思ってやっている。
ドラマはいよいよ最終回。春田と後輩・牧(林)の涙の別れで終わりと思いきや、春田が黒澤部長(吉田)と同棲している描写で終わり、ネット上は阿鼻(あび)叫喚。気になる最終回について聞いてみると…。 「続編に含みを持たせて終わるドラマもありますが、しっかり、ちゃんと終わろうと思って書き上げました。『この言葉を言わせたら続編が作れなくなるかも』と迷ったセリフもあるけれど『続きなんて作ろうと思えば、いくらでもできるから、大丈夫! 中途半端なことをしないで、やりきりましょう』とプロデューサーに言われて。ただ、ここできちんと終わったとしても、春田たちの生きる世界は続いていく。僕自身はいつか続編が作られることを願っているので、みなさんもそう思ってくれたらうれしいです」。(取材/文・川口有紀)
『おっさんずラブ』最終回は、テレビ朝日系にて6月2日23時15分より放送。