【写真】吉之助の3人目の妻・糸役を演じる黒木華
「革命編」で吉之助と久々の再会を果たした糸。以前の糸は、好奇心旺盛で行動力抜群、非常に芯の強いおてんばな女の子という印象だったが、吉之助との再会までは、自身も離婚を経験するなどいろいろな出来事があった。黒木は「監督からは複雑な気持ちを出してほしいと言われました。会わない時間、お互い成長している部分があるので、私も少し大人の女性を意識して演じました」とアプローチ方法を述べる。
“大人”というキーワードで言えば、8月5日放送の第29話では、吉之助と糸が大きく成長した姿が垣間見える。吉之助は糸に“新しい日本国”という壮大な夢を語り、糸は吉之助が日本という国にとって絶対に必要な男であることを悟る。そこから二人は新しい関係性を築いていくことになるのだ。
「お互いの成長を感じさせるためには、こうした会話を経て夫婦になっていくことがすごく重要だと思いました。糸は子どもが産めないという理由で離縁になりましたが、諦めからくる再婚ではなく、吉之助の嫁として新しい国が見たいという気持ちによって結びつくことが大切だったんです」。
また、劇中には、坂本龍馬の妻・お龍(水川あさみ)、大久保一蔵の妻・満寿(美村里江)という立場や性格の違う女性と、互いの意見を交わすシーンもある。黒木は「すごく楽しかったです。
吉之助にとって、愛加那という女性は、自身に生きる力を蘇らせてくれた特別な存在だ。当然、糸にとっても気になる女性であるが、時代的な背景を考えれば、気になりつつも、夫になる男性に気持ちをぶつけることは並大抵のことではない。
「糸はお龍さんの生き方を知り、愛加那さんのことを聞くことこそが、夫婦としてしっかりと向き合うことだと思ったんでしょうね。それまでは自分には子どもができないと思っていたし、後ろめたさもあったと思うんです。吉之助さんの人柄もありますが、しっかり向き合って、夫婦になれた糸は強い女性だと思いました」。
大河ドラマ『真田丸』でも、堺雅人演じる真田信繁の妻・梅として母親になり、本作でも、愛加那の子どもを引き取り母親として育てる場面がある。「梅さんのときは、子育てをしつつ、自分も戦いに出るような女性だったので、今回とは距離感が違いますが」と前置きしつつも「少しずつ母親役をやることが多くなってきているので、自分のなかでも『子どもと向き合うということはどういうことなのだろう』とか『母親はどういう気持ちになっているんだろう』ということを考えることは増えています」と“母親”というキーワードは意識のなかにあるという。
『西郷どん』第1話では、上野公園隆盛像除幕式に出席した糸の姿が映し出された。黒木は「きちんとつながるのかな」と、糸という女性の半生をしっかり演じきれるか不安に思ったという。まずは、久々に吉之助と再会した糸がどんな表情を見せるのか…楽しみに注目したい。(取材・文:磯部正和)
大河ドラマ『西郷どん』はNHK BSプレミアムにて毎週日曜18時、総合テレビにて20時放送。