女優の徳永えりが、『恋のツキ』で連続ドラマ初主演を務め、これまでの清楚なイメージに相反する大胆な濡れ場を見せている。主演という立ち位置について「こんなにも違うんだなと、すごく勉強になることばかりです」と語る彼女に、地上波作品とは思えないほど挑戦的な芝居に挑んだ背景や、女優としてのスタンスについて話を聞いた。


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 漫画家・新田章が“女の浮気心”を生々しく描き出した同名漫画を実写化した本作。31歳フリーターの平ワコ(徳永)が、結婚目前のマンネリ彼氏・ふうくん(渡辺大知)との関係、そして16歳年下の高校生・伊古ユメアキ(神尾楓珠)との淡い恋の間で揺れる姿を描く。単発のドラマや映画では主演の経験がある徳永だが、連ドラでの主演は14年のキャリアにして初めてだ。

 「昔からそうなのですが、脇で支える役が多くて。私もそういった役が好きで、ずっとこういう役であればいいのにと思っていました」と胸の内を明かす徳永。しかし本作では、出演しないシーンがないと言えるほど出番が多い。「どれだけ主演の役者さんが大変な思いでやっていたのだろうかと…。過去の主演の方たちに敬意を抱き、すごいことだと感じました。それと同時に、スタッフの皆さんが、いかに良い作品を作ろうとしているか、平ワコをきちんと撮ろうとしているかということを、肌で感じています」。

 撮影の合間には、照明部や録音部をはじめ、それぞれの部署に質問しているそう。「キャリアで言ったら14年目になるんですけど、初めて知ることが多いんです」と照れ笑いを見せる徳永。「一つ一つの作業の意味を知ると、各部署への尊敬の気持ちがより一層芽生えますし、皆さんがお互いを思いやって作っているんだなと、改めて感じます」としみじみ語る。


 これまでのキャリアでは、学生役の後には一気に年齢が上がり、母親役を務めることが多かった。「ずっと“間がない”と言われていました。女性として最も変わる時期の役を、全然やっていないんです(笑)」と回想する。ワコを演じることで、その“間”を経験することとなった彼女は「女でいたいけど、だんだんその感情がなくなっていくという感覚は、私自身とても理解できます」と共感している様子だ。

 そのワコの感覚を描く上では、「濡れ場は必要不可欠」と考えを述べる。「撮影の限界という箱の中で、最大限に濡れ場を見せることができる方法は何か? 皆で知恵を絞る瞬間って、すごくクリエイティブなんです。各部署が力を合わせないと、絶対に良い画が撮れないのが濡れ場なのだと、本作で学ぶことができました」と誇らしげに振り返った。
 劇中、ワコはふうくんや伊古との関係を通じて自分の欲求を開放していくことにより、人間的な変化を遂げるが、徳永自身はここ数年で女優としての変化を経験したとのこと。「10代や20代の半ばは、役にどっぷり浸かることが正義だと考えていました」。そう述懐する彼女は「自分の実感しているものと出来上がったもののギャップにすごく悩んだ時期があったんです」と吐露する。

 その葛藤を払拭できたのは、ここ数年のことだという。きっかけとなったのは“芝居を楽しむ”という感覚だ。
「つらい方がいい、悩み、苦しむ中で出るものがいいと思っていましたが、まずは自分自身が楽しんで演じた方がいい。そして、自分にないものは芝居に出ないということに、ようやく気づいて、認められるようになったんです」。

 10代から映画やドラマで研鑽(けんさん)を積み、今年で30歳を迎えた徳永は、今の自分は「自由」だと笑顔を見せる。その自由を勝ち得たのは、彼女が立ち止まることなく芝居の世界に身を投じ続け、真摯(しんし)に芝居と向き合ってきたからこそなのだろう。(取材・文・写真:岸豊)

 木ドラ25『恋のツキ』はテレビ東京にて、毎週木曜25時から放送中。
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