近年映画、舞台での活躍が続いていた俳優・妻夫木聡が連続ドラマに帰ってくる。約6年ぶりの民放連続ドラマ主演となる日曜劇場『危険なビーナス』(TBS系/毎週日曜21時)は、作家・東野圭吾の原作を基にしたラブサスペンス。

12月には40歳の誕生日を控え、節目の作品に挑む妻夫木に現在の心境を聞いた。

【写真】40歳目前とは思えない! 変わらない爽やかさの妻夫木聡

◆東野圭吾作品での主演に感慨

 本作で妻夫木が演じるのは、正義感の強い獣医・手島伯朗。ある日、伯朗の前に謎の美女・楓が現れ、伯朗の異父弟で楓の夫である明人が失踪したことを告げる。伯朗は、疎遠となっていた名家「矢神家」の遺産を巡る争いに巻き込まれていく。

 ベストセラー作家・東野圭吾の原作、『グランメゾン東京』(TBS系)の黒岩勉による脚本とヒットメーカーが顔をそろえる本作への出演にあたり、妻夫木には特別な思いもあるという。

 「僕自身、もともと小説が得意なほうではなかったのですが、『白夜行』を読んでから小説というものを好きになったこともあり、東野さんの作品で主演を務めることは感慨深いものがあります。
また、原作も謎が謎を呼ぶ展開が面白いのですが、黒岩さんの脚本は、1つの謎が解決したと思ったらまた新たに謎が発生する。原作を読み大体の結末は知っているはずなのに、本当にその通りにいくのか?と自分で疑ってしまうくらいに引き込まれる、素晴らしい本なんです」。

◆初共演の吉高由里子をはじめ実力派ぞろいの現場は和気あいあい

 伯朗を翻弄(ほんろう)する謎の美女・楓を演じる吉高由里子とは今回が初共演だ。

 「吉高さんはイメージ通りの方でした。ムードメーカーになって現場を盛り上げてくださるので、現場は和気あいあいとしながら撮影しています。今回演じられる楓は“謎の美女”でありながら、原作よりもキュートな部分がプラスされている。
それは吉高さん本来の人懐っこさや人柄が表れたもので、作品により厚みが出たなと感じました」。

 吉高以外にも、本作には染谷将太ディーン・フジオカ中村アンのほか、小日向文世斉藤由貴、麻生祐未ら実力派キャストが顔をそろえる。

 「皆さんが演じることで、自分が想像したよりも1人1人のキャラクターの熱量が高くなっています。大人数の場面も多いので、会話劇としての素晴らしさや、バチバチした空気感も感じてもらえるのではないかなと思っています。

 個人的には、共演の戸田恵子さんには、僕のデビューの頃からずっとかわいがっていただいていて。とてもお世話になっているので、今回久々の共演がかない、身が引き締まる思いもあります」。
@@separator◆「早かった」30代は“いっぱい遊べた”年代

 妻夫木にとって本作は6年ぶりの民放連続ドラマ出演。TBSのドラマ自体も2004年放送の『オレンジデイズ』以来16年ぶりとなる。

 「16年なんてびっくりしました! そりゃ会う人会う人に『子どもの頃、「オレンジデイズ」見てました!』って言われますよね(笑)。僕自身、連続ドラマの初主演作(『ブラックジャックによろしく』/2003年)や『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)もありましたし、TBSの方々にはお世話になっているというイメージがあります。自分が転機を迎える時期にはだいたいTBSさんと一緒にいたという印象があるので、今回もまた今までとは違う自分を見せられたらいいなと思っています」。

 12月13日に40歳の誕生日を迎えるが、30代最後の作品として意識することはあるのだろうか。


 「あ、そうですね! 申し訳ないくらい、まったく意識していませんでした(笑)。振り返ってみると30代は、あっという間に終わっちゃいましたね。本当に早かった。20代の頃は大人に見られたくて肩肘張って頑張っていた感じがありましたが、実際に30代になってみると意外と子どもなんだなと。子どものままでいいやとも思えた年代だったので、いろいろといい意味でいっぱい遊べた年代でしたし、楽しかったですね」。
@@separator◆リーダーになるのは苦手 3位くらいがちょうどいい

 「主演をするにあたっても、20代の頃は“座長だ!”っていう意識があったのですが、30代になって、芝居をすることが役者なんだなって改めて気付きました。
芝居をすることに集中しよう、座長とかそういうことを考えるのはやめようと変わりました。

 もともとリーダーになるのは苦手で、やりたくないタイプなんです。1位とか2位とか競い合うよりも3位くらいがちょうどいい。1位の人はまた1位を取るために、いろいろな人にそういうまなざしを向けられつつ、プレッシャーの中、2位の人より頑張らないといけない。2位の人は1位の人に勝たない限りずっと2位の人だと思われるから周囲の目も気になるし、何よりも負けず嫌いになってしまう。だから3位がちょうどいいな。


 そりゃ頑張りますよ、1位になるために。でも僕には3位くらいがちょうどバランスがいい。誰々の次とか、ライバルとか、そういうの苦手なんです。ただ自分自身を追い求めていきたい。そういうのがいいですね」。

◆40代は海外の作品にもっと積極的に挑戦したい

 そんな妻夫木だが、来たるべき40代に向けての理想や目標はあるのだろうか。尋ねると、はにかんだような笑顔を見せながらも、力強くこう教えてくれた。

 「昔思い描いていた理想の40代には全然近づけていないですね。びっくりするくらい大人になれなさすぎて。もう少し貫禄のある人間であってほしかったなって思います。

 でも、最近少しずつオファーをいただき、海外の作品に携わらせていただくようになり、もう少し日本以外の作品にも率先して積極的に関わっていけたらなぁと思っています。世界の人々と仕事をしていい刺激をもらい、日本の良さをもっと世界に伝えていきたい。日本ってもっといい人たちがいるんだよということを、声を大にしてみんなに言っていきたいです」。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 日曜劇場『危険なビーナス』は、TBS系にて10月11日より毎週日曜21時放送(初回25分拡大)。